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簡易で便利な堆肥舎の作り方

社 陵胖

 酪農家にとって一番気になるのは毎日生産される糞の処分である。牛体を汚さないで然も牛舎を清潔にし,廏肥を有効に利用する為には堆肥舎の工夫が最も大切である。従来も堆肥舎の設計については種々研究もされ,サイロと共に相等奨励もされて来たが,さて作るとなるとなかなか思うような,自分の気に入った便利な設計は少いものである。従来の様な平凡な堆肥舎でも無いよりはましであるがもっと使い勝手の良いものを作ってみてはどうだろうか。
 堆肥舎の設計には種々あるが次の様な条件を備えることが必要であると思う。

一.肥効成分の損失を少なくすること

(1)不浸透質の床であること
(2)日光の直射を受けぬこと
(3)雨水の入らないこと

二.使い勝手の良いこと

(1)積込みに便利なこと
(2)切返しに便利なこと
(3)積出しに便利なこと

三.面積を要しないこと

四.建設費の安いこと

「仕切り板」厚さ1寸,巾適当,高さ5尺位必要最小限3組を要す。
「床」不滲透質のものとす。
(1)(2)は切返し順序(X)(Y)取り出し口

 以上の様な点を考慮して別図(一)の様な堆肥舎を造ってみた。2−3箇所で試験して貰っているが便利であるのでお奨めしたい。
 この堆肥舎の特徴は

一.切り返しを順次に行って行く為,先きの切り返しを行わなければ後の分が出来ないので,新しい廏肥を処理する為には嫌でも古いものの切り返しを行わなければならないので,自然に完熟堆肥が出来る。

二.板仕切りであるので堆積がきれいに行われるし,作業が楽に出来る。

三.設置場所に応じて必要な処へ取り出し口が設けられ,その取り出し口に応じた切り返しが行われる。例えば第1図で(X)に取り出し口を設けた場合には(a)(b)(c)(d)の順序に切り返しを行うとよく,(Y)に取り出し口をつければ(a)(d)(c)(b)の順序に行えばよいことになる。

四.必要以外な処は壁にして,他は開放しておくので経費が僅少ですむ。(第二図)

五.1区画を1坪とし,4坪で乳牛2頭分の廏肥は完全に処理できる。

六.最後の枠に来た時には完熟した堆肥になっている。従って必要なる時には何時でも完熟堆肥を使用することが出来る。

七.廏肥を清潔に処理出来るので牛舎に附設しても差支えない。

 以上の様に種々便利な点が多いので,新しく堆肥舎を建設される方は,こんな建て方もあるんだと言うことを頭に置いて,より良い設計をして頂きたいと思います。
 有畜農家が廏肥を完全に処理して,これを活用すれば肥料費の大部分を節約出来るのであるから,更に進んで現在ある堆肥舎をも使い勝手のいいように改造されて,何時でも完熟した堆肥を使用されるようお奨めします。