ホーム>岡山畜産便り>復刻版 岡山畜産便り昭和26年7月号 > 家畜共済の掛金率改正 |
共済制度が生れて既に5年目になるので昭和26年度より掛金率を改正して実施されることになっている。(法第105条及び同規則第30条)これによると本年3月31日で旧率は改正されることになるが政府の都合で5月31日まで延期され,したがって新掛金率は6月1日より実施されることになったのである。
そこで5月25日東京において主任者会議を開催し新掛金率の内示を中心として今後の運営について協議された処が新掛金率は予想以上に高率で有り尚同県内においても掛金率に相当の開があるので今後の共済運営は難行するとの理由により改正方を政府に要望した。政府においても再度審議され改正案をもって再び6月15日主任者会議を開催して最終的に掛金率の内示を発表しここに新掛金率の決定を見た訳である。
その掛金率は別表の通りである。
それでこの掛金率を研究して見よう。その前に御承知であろうが共済の掛金は即支払共済金で(極少額の事務負担金を含む)有り事務費の殆どは国庫の負担であるから頭数危険率及び金額危険率が即共済掛金率となる。いずれにしても相当な高率となり農家負担の増額となった事は間違いないので考え方によっては従来非常に多く家畜損失による農家の損害を共済した事になるが今後の為にも高率になった原因を調査して万一共済金の支払に人為的な措置又はこれ等の事故を人為的に防ぐことが出来るならば未然に防止して安い掛金で共済事業の運営に万全を期すべきであると思う。
次にその原因を考えて見よう。(これには筆者の私見も相当含まれているので御考慮願いたい)
一.旧掛金率は共済事業に合致していたか。
或る学者の「共済で言うその他の牛」の死亡率は0.7−0.8であると記している。ところが共済で取扱うものは,こうした死亡の他に廃用を含めてある(規則第16条の廃用の第3−第8)これ等の率を見ると旧率の0.8−0.9と言う率も或いは低事であったとも考えられるのである。
二.中家畜(山羊・めん羊・種豚)は著しく高率となった。これの原因は色々あると思うが本県においては終戦後乳・肉・羊毛の必要性から飼育管理に経験の浅い者の飼育,立地条件の悪い処に導入等による飼育管理の失宜によるものがこうした率になったと思われる。これ即ち中家畜は死亡率が高いと言う結論になろう。これ等飼育者の損耗率が高いことになる。
尚又中家畜は家畜個体の特徴の記載に困難であるので道徳危険も又多くなることが予想される。
三.家畜共済においては,単位の共済組合に金銭関係がないこともややもすれば道徳的危険の起り易いと言うことも考えられないこともない。
こんな事も道徳的危険率とも思われる最近は牛価の変動が著しいので或る牛を高い時に購入して比較的高い共済金額で加入しているものが牛が安くなった時に病気になった。しかも治療に日数を要する場合に今牛を廃用処分して共済金の支払を受ければ,長い治療をして治療費を支払うより良いと言う場合にこれを治療もそこそこにして廃用すると言う事が有るとすればこれは確かに正統でない危険率の増加となる。此度の率の改正に当っては死亡以外の廃用による共済金を支払ったものが32.5%に昇っていると言われるからこれ又少し多過ぎるのではないかとも思われる。
上記の様な色々な点を考えて見ると家畜共済の目的たる農家の損害補償については前途にまだまだ研究を要する点も有るが,農家及びこれに関係する者も真に共済の精神に徴して行かなければならないと考えるもので有る。
今回の率の決定についても実際の率より2割を差引いてあり,尚又掛金の一部国庫負担も下記の通り増額されたのでいよいよ本事業を利用され不慮の損害を少なくし農業経済の安定に努められることを切望するものである。
生後第5月の月の末日を経過した牛
100円から420円まで
明け2才以上の馬
240円から800円まで
家畜共済の掛金標準率 備考(1)印のある率は昭和23.3.31まで暫定率であります。
本表は昭和26.6.1日より実施
支部 | 死亡廃用共済 | 疾病傷害共済 | 生産共済 | |||||||||||||||||||
乳牛 | 種雄牛乳用種 | 種雄牛役肉用種 | その他の牛 | 種雄馬 | 輓馬 | その他の馬 | 種雄山羊 | その他の山羊 | 種雄めん羊 | その他のめん羊 | 種雄豚 | 種雌豚 | 牛 | 馬 | 山羊 | めん羊 | 種豚 | 乳牛 | その他の牛 | 輓馬 | その他の馬 | |
岡山県全般 | (1) | (1) | (1) | (1) | (1) | (1) | (1) | (1) | (1) | |||||||||||||
5.3 | 6.5 | 5 | 4.2 | 9.9 | 5.1 | 29.3 | 18.8 | 20 | 10.4 | 17.3 | 17.3 | 11 | 26 | 29 | 34 | 32 | 18 | 14 | 24 | 24 | ||
旧掛金率 | 3.2 | 2.3 | 1 | 1.2 | 3.7 | 2 | 5.8 | 5.8 | 6.8 | 6.8 | 6.3 | 6.3 | 10 | 28 | 29 | 34 | 32 | 7.5 | 14 | 24 | 24 | |
1 御 津 | 1.2 | |||||||||||||||||||||
2 赤 磐 | 1 | |||||||||||||||||||||
3 和 気 | 1.8 | |||||||||||||||||||||
4 邑 久 | 1.8 | |||||||||||||||||||||
5 上 道 | 1 | |||||||||||||||||||||
6 児 島 | 1.3 | |||||||||||||||||||||
7 都 窪 | 1 | |||||||||||||||||||||
8 浅 口 | 1.8 | |||||||||||||||||||||
9 小 田 | 1.6 | |||||||||||||||||||||
10 後 月 | 1.8 | |||||||||||||||||||||
11 吉 備 | 0.8 | |||||||||||||||||||||
12 上 房 | 1.5 | |||||||||||||||||||||
13 川 上 | 1.2 | |||||||||||||||||||||
14 阿 哲 | 1.3 | |||||||||||||||||||||
15 真 庭 | 1.2 | |||||||||||||||||||||
16 苫 田 | (1)1.9 | |||||||||||||||||||||
17 勝 田 | 1.6 | |||||||||||||||||||||
18 英 田 | (1)1.9 | |||||||||||||||||||||
19 久 米 | 1.3 |