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競馬雑感

 只今の払戻金を御知らせ致します。
…………連勝式「6−4」の組,47,830円!!アナウンス嬢の声が終るか終らない内に,スタンドがワーッとどよめきたった。5月10日県営競馬第4日目第1レースのことである。去る3月の第1回県営競馬より控除率引下げ(従来の34%を24%に)により競馬を行っているが,配当金が目に見えて増大し,競馬ファンに多大の満足を与え,昨今競馬熱は物凄い勢で高揚して来た。従来岡山競馬の売上高は1千万円そこそこで,中国地区(山陰は別として)のテールエンドを喫していたもので,あらゆる面に下積の苦杯をなめ,関係者の意気もとみに消沈していたのである。岡山市位の都市規模を持ち隣接に,倉敷,玉野等の有力市を控えておりながら,従来の売上高はあまりにも少額と言うよりは悲惨の極みで,昨年の暮姫路競馬の関係者と面談の際,岡山競馬の売上は3千万円程度なりやときかれ,1千万円だと答えると,始めは全く信用せず,終りにはあまりにも売れないので驚いていた次第である。それが3月の県営第1回競馬には,1千7百万円,4月の市営競馬には,一躍2千2百万円,5月の県営競馬には,2千7百万円と上昇の一途をたどり次いで行われた春競馬の最終市営競馬においては,3千3百万円と跳ね上り岡山としてまずまず当然の売上高に飛躍し,中国四国地区の王座に着席したのである。成績向上の原因としては種々あろうが,従来の10円券を廃止し100円券とし併せて,控除率の引下げ断行が,大きな原因と言えよう。
 又競馬協力団体としての馬事振興会の他県には見られない強力なる支援は絶対に見逃せられぬものであり,その他近時レースの公正明朗化による岡山競馬の人気の上昇も要素である。
 本年の東京優駿ダービーは「トキノミノル」号に栄冠が輝いた。種牝馬「セフト」号の駒が,ダービーに於て優勝したのは最初であり,毎年ダービーは大番狂わせで本命馬が優勝することなく,常に大穴があいていたのが,本年は1,2着共本命馬が入り配当は連勝式に於て240円であった。入場人員は無論7万余我国競馬界始まって以来の人出で,内馬場を開放してファンを収容した。ダービー1レースの馬券売上高がなんと6千4百万円……………これもレコードであろう。「トキノミノル」号の勝時計が2,400m2分31秒1/2でこれはダービーのレコードで,ハロンタイム(200m)が12.6秒となり岡山の甲馬級の優駿馬がハロン13.7秒であるから比較して如何に駿足であるかが伺われる。
 一時競輪に屋台骨をゆすられた競馬も最近はその勢をもり返して,各地とも隆盛の気運に有り,着々と好成績を収めつつある。昨年競馬法の改正により従来戦災都市は年2回の開催が年4回となり,全国の競馬開催回数は非常に増えて来ているのであるが,一方競走馬は以前に比して少しも増加せず,したがって,相当無理に使用することとなり,結果として故障馬が続出し,関東関西の大競馬場はともかくその他の小競馬場に於ては,競走馬が少く競馬開催の都度馬の寄せ集めに苦労している現況で,これが打開としては軽種の生産を強力に推進して,競走馬資源の獲得を目指す必要が大いにある。
 岡山競馬は今後4千万円の売上を目標にすべきで,それが為には競馬場施設を改善することが急務であろう。さきの県営競馬の際ファンの声をひろって見たが何れもこのことを強調し設備の改善,競走馬の美化を要望している。競馬場は県民の真に楽しい娯楽機関として家族が揃って1日を愉快に過し得る施設を持つべきであろう。
 秋の岡山競馬は9月上旬県営競馬を,10月に入り市営競馬と県営競馬を夫々1回宛開催の予定である。秋の競馬迄には出来得る限り施設を改善すると共に新企画のもとに一層明朗公正なる競馬を施行しファンの要望に応えることとなろう。

(26.6.15 K・K記)