ホーム岡山畜産便り復刻版 岡山畜産便り昭和26年8月号 > 順宮さま御婚約成立 池田隆政氏の御目出度

順宮さま御婚約成立
池田隆政氏の御目出度

お喜びの順宮様

鶏に餌を与える池田氏

 第四皇女,順宮厚子内親王さま(20)の御縁談についてはかねがね両陛下ならびに貞明皇后さまも御生前から心配されていたが,今春来内々に話をすすめていた元岡山藩主,池田宣政氏長男,池田隆政氏(24)との間に去る7月10日御内約が成立した。御婚儀は松平康昌氏が仲人となって明年貞明皇后の御喪明け後に行われるもようであるが,日時については未定である。
 順宮さまと御婚約になった池田隆政氏は旧岡山藩主,池田侯の孫に当る池田家の相続者で,昭和22年学習院高等科卒業,習23年12月から現在の岡山市上伊福別所,元岡山種畜場跡に池田牧場を経営され,乳牛,豚,山羊,鶏小鳥などの飼育をはじめられ,昨年夏から秋にかけてはアメリカにカナリヤを輸出された。
 池田牧場は家畜の改良増殖に力をそそがれ,今後が期待されていたが,この度の順宮さまとの御婚約成立により,より一層,岡山畜産を力づけられた感がある。去る7月17日御祝いのため同牧場を訪ねると,某新聞社のカメラに心よく御写りになっている処だった。毎日のフラッシュには本人より家畜の方があわてているらしかった。
 世が世であれば池田輝政侯16代目の備前藩主は白の開襟シャツで,各家畜舎で家畜と一緒にカメラに向われた。気軽に応対される池田氏に婚約成立の感想など質問につぎのように答えられた。
 縁談の話の始りは本春からで,仲に立って御世話されたのが松平康昌氏である。順宮様は学習院時代隆政氏より4,5級下だったので面識があったが,話合ったのは本年5月2日順宮さまが中,四国見学旅行のさい来岡されたおり岡山市後楽園荒手茶寮で隆政氏があいさつに行かれたおりが初めてだそうである。その後6月末東京でゆっくりお会いされている。
 今後も引続き岡山県畜産発展のため家畜の改良増殖に努力して,畜産県岡山を全国に知って頂くつもりで居る。住居については,あれこれと,うわさされているが,今後も牧場経営をして行く上からも,牧場内か又はその附近に新築する予定である。」と語られた。

御二人の略歴

 順宮さま 昭和6年3月7日第四皇女として御誕生,本年20才。現在学習院女子部の短期大学に御在学中で明春卒業される。

 池田隆政氏 大正15年10月21日生まれ,24才。昭和23年学習院高等科卒,同年12月以来岡山市上伊福別所,元岡山種畜場跡で「池田牧場」を経営,現在に至る。

 池田家 源経基の後えい入道勝入斎が織,豊二氏に仕えて家を興し,その子輝政が家康の娘を妻として関ヶ原の戦後姫路の城主となった。その孫光政が備前の岡山(31万5千石)に封ぜられ,明治にいたって侯爵となった名家である。当主宣政氏(47)は元貴族院議員で欧米各国を歴遊したこともあり,富貴子夫人は元男爵津軽承靖氏の姉にあたる。(多田記)