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夏に於けるめん羊の管理

小島技師

夏の健康維持はどうしたらよいか。

 離乳後の母仔めん羊には山野の野草,各種の根菜類等の飼料を種類多く豊富に与えて,順調な発育をはかると共に,運動を充分させて立派なめん羊を育成することに努力しなければなりません。
 夏期は湿気が多く,しかも高温でありますので,被毛を持つめん羊には一番苦しい時で,この時期によく腰麻痺が発生しますから,運動場には日蔭を作ったりめん羊舎を涼しくするのは勿論,空気の流通をよくし,乾燥をよくしたり,又羊舎の廏肥が醗酵しない内に度々運び出す様に特に注意し,又適当な運動を励行して栄養の回復をはかり,秋の種付時期に備える様に管理しなければなりません。夏に栄養回復出来ないめん羊はどうなるか。
 この青草時期に栄養が回復しておらなければ,種付時期が来ても,栄養不良のめん羊は種付が出来ません。かりに発情があらわれましても,微弱であったり,又妊娠しても途中で流産したり,死産を起しやすいのであります。又仔めん羊が生れても生時虚弱であったりして,仲々育成が困難であり,死亡率が高いものですから立派な仔めん羊を生産するためには種付時に母めん羊の栄養を良好にしておかなければなりません。
 雄めん羊も雌めん羊と同様栄養を回復させて種付期に種付不能にならない様に管理しなければなりませんが,雌めん羊の頭数に応じて種雄めん羊の繋養に心掛けねばなりません。

腰麻痺の予防はどうしたらよいか。

 予防としては牛に寄生します糸状虫を根絶さしてしまうか,中間宿主であります蚊を全部殺してしまうか,又羊舎の防蚊設備を完全にするのでありますが,之等は仲々実施が困難でありますので,結局めん羊に予防注射をするより他適当な方法がないのであります。予防と申しましても免疫学的な予防ではありませんので,潜伏期間中の糸状虫の幼虫を殺すことでありますから,一種の早期駆虫であります。注射はどんなものを使用するかと申しますと,アンチモン剤でありますが素人では注射も出来ませんので郡畜連等に連絡して注射をしてもらうようにして下さい。