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秋冬作飼料作物

 飼料作物を栽培することは,たしかに必要なことである。
 必要なことであるからこそ世の識者が叫び続けているわけで何の不思議もない。
 他面家畜飼養者も飼料作物を栽培し,畦畔,堤塘の雑草を栄養価値の高い,草量の多いものに改良し余裕のある家畜飼養を営みたいと念願している。
 畜産物の90%が商品化されていると統計が示す商品経済の世の畜産が当然求めるものは安価な飼料であればこれ又不思議ではない。不思議でないこの理が現実には大半の地方,大方の人々により実地に土地の上で行われていない。
 何故なのであろうか。
 この何故なるかを一番よく知っている人は農民であり,家畜飼養者である。
 決して農業経営,経済業者でもなければ机の前に座る自称畜産関係者でもない。
 実際家の各位に折角の自覚と反省を,そうして発展の出発点を探求されることを祈る次第。
 これから綴る駄文も,自称畜産人が机の上で糊と鋏でデッチ上げた一虚言であり自慰の一文でしかない。
 しかしながらここに取り上げた2,3の飼料作物は,これから作付すべきものであることにはちがいなく,声を大にして言いうる事実である,これらの作物を取り入れるべき余力を有する人々の多少の参考になれば此の上ない。

 1.青刈エンドウ,青刈ソラマメ
 2.青刈燕麦
 3.青刈ライ麦
 4.レープ
 5.カブ

青刈エンドウ,青刈ソラマメ

 エンドウ,ソラマメを青刈用として栽培することは生草がやや家畜の好みに適応しないという汚点があるため緑肥用,食用に比較すればきわめて少ないが,これとて禾本科の飼料作物と混合して,或はサイレーヂ,乾草として与えるなどその利用法に留意すれば家畜は好んで食べる。
 栄養価値の点では青刈大豆に多少劣るが(別表参照)この頃の荳科作物として水田裏作,畑作,間混作に興味ある,効果を示すものである。

 〇エンドウ

 飼料用エンドウの品種は極めて少なく主として蔬菜用の言葉のよく繁茂するさやエンドウ,むきエンドウ,赤エンドウが用いられる。エンドウは耐寒性の強い作物でツル性であるから麦類との混作特にエンバクとの混播はすぐれた作付方式であろう。
 他面酸性土壌を嫌い連作を嫌う特性があるので注意が肝要であり,なお新開コン地では余り成績がよくない。

 〇ソラマメ

 ソラマメはエンドウと同様緑肥作物として普及しているが家畜を通して土地に還元することが好ましいものである。
 飼料用品種としてはあまり見うけず一般には病虫害に強い小粒程がよく草丈高く収量の多い晩生種が適当である。
 なおツル性でないから麦類との間作に適する。
 ソラマメと同様に酸性土壌を嫌い且つ旱魃に弱いから湿気の多い腐植壌土が理想的であろう。

栽培法

〇エンドウ

 エンドウの播種期は宮崎における松岡氏の試験によれば9月6日に播種し12月21日に刈取り106日の成育日数で反当約1,110貫を生産しており晩播になるほど収量の減ずることを示している。勿論これは南九州の宮崎における成績であり本県の何処にも該当する事実ではあり得ない。
 概して9月下旬−10月一杯が播種期ではなかろうか。
 単作の場合は反当5−8升の種子を畦巾2尺に条播するか,又は7−8寸間隔で5−6粒を点播する。エンバクとの混播の場合はエンバク2.5−3升エンドウ3.5−4.5升(反当)の種子を播種する。
 収穫の適期は第1の莢が完全に生育して而も充実しない前頃,エンバクとの混播の際はエンバクが早期糊熟期に達した頃である。
 反当収量は生草600−1,000貫である。
 肥料としてはエンドウは早期に窒素,加里成分を吸収し燐酸はおそく吸収,開花期までには必要養分は殆んど全部土壌から吸収する性質を有しているから窒素成分の少ない土地では生育の初期,窒素質肥料の施用必要がある。
 施肥量を示すと勿論土地により異なるわけであるが堆廏肥300−350貫,草木灰20貫,出来うれば過石5貫である。
 エンドウを水田裏作に作付の場合その一例は3−4尺の畦に1.5−2尺の作条を2本切って播種する,湿田では畦巾2.5尺内外,高さ1.5尺程度の畦を作り2本の作条を切る。
 稲刈取後で播種期がおくれる場合は落水後,田面が乾いた頃適宜の距離に穴を穿りこれに播種してその上に堆肥と木灰との混合したものを一握り宛覆う。

〇ソラマメ

 播種期は早すぎると寒気の頃になるまで徒長して寒害を蒙り易く,おくれると収量が減少する。
 本県南部地帯では適期は9月25日頃で播種期の巾は10月一杯である。
 ソラマメの播種期は多く要する欠点があり水田裏作で反当裏作で反当7−8升麦間作5−6升園地間作で5升程度を播種するが青刈として15升播くのが好ましいとされている。
 収穫期はその適期が未だ明らかでないが生草収量は開花終期が最大で乾草とした場合は幼莢生育期に刈取った場合が最も多い,米国においては青刈用として開花期に刈取ると伝えられている。
 収量は水田裏作単作で400−800貫園地間作で300−600貫,麦間作で300−400貫である。
 青刈ソラマメは水分が極めて多く乾燥歩合が悪く従って乾燥収量は比較的少なく主として青刈飼料として利用するが水分を除去して藁或は乾草等を混じてサイレーヂとして利用することも出来る。

青刈燕麦

 燕麦は従来馬の飼料として北海道,東北地方の一部に栽培される様に考え,概して関心の薄いものではあるまいか。
 しかしながら実際は暖地でも冬作として立派に生育し乳牛に好適のもので,サイレーヂとしても妙味あるものである。
 ムギ類のうち,もっとも耐寒性の弱い性質を有している。他の麦類に比べて出穂がおそく従って生草としての利用期間が長く,また茎が太く軟かく,葉身が長く且,巾が広いもので2番刈もでき青刈用として優れている。青刈用品種としてはリーゴー,ホワイトターター,ビクトリーなどが適当である。
 気象,土地の理想は多湿で冷涼な気候肥沃で乾湿適土の壌土と言いうるが他の麦類に比し土地を選ぶことは少なく,各土壌によく生育し湿潤で多少の酸性土壌でも生長し従って湿地,泥炭地,開コン地などにも栽培可能である。

栽培法

 栽培は極めて容易であるがなるべく深耕して整地を丁寧にする。
 市販の種子は充実の不充分なものを混ずることが多いから播種前,唐箕で風選しておく必要がある。
 播種期は10月中,下旬で青刈とする場合は特に播種期を種々に加減する。
 反当7−8升の種子を畦巾1.5−2尺として厚播する,覆土は浅く行い,乾燥地では稍深播とする。
 ザートウイツケン或はエンドウとの混作は成績がよくこの場合は播種量はザートウイツケン3升内外エンバク4升内外である。
 肥料は窒素の効用が著しく有機質の施用は極めて成績がよいから堆廏肥を用いることが経済的である。
 施肥の一例を示すと次の如くである。
 堆廏肥400貫内外過石4貫,(元肥として施用)
播種後1週間位で発芽するからそのとき木灰を撤布すると爾後の生育がよい。
 手入は粗放でよいが出穂前に2−3回中耕,除草,を行う。また軽い土では寒中数回ムギふみを行ない生育佳良,表土浅く倒伏のおそれあるときに限り培土をう。
 なおエンバクは連作に耐えるがなるべく循環法によることがよい。
 刈取りは後作に影響のない時でよいが適期は出穂前後で量,質共にすぐれている。
 3月,と5月に2回刈りが可能でありこの場合第1回の刈取りは出穂前に地上2寸−1.5寸を残して刈取る。
 茎葉に含まれる粗蛋白質の量は若いものほど多く穂ばらみ期頃のものでは,生育で3.5%乾草で20%位含有されている,この時期の粗繊維含量は生草で3%,乾草15%位であるから穂ばらみ期頃までに刈取れば,濃厚飼料に近い飼料価値をもつ貴重な飼料が得られる。
 茎葉の粗繊維は出穂期頃から急に増加し,蛋白質は反対に減少する,しかし収量の点ではその後も増加するから粗飼料として収量に重点をおき,サイロに詰める場合は開花期から乳熟期頃刈るのがよい。
 反当収量は青草800−1,000貫である。

青刈ライ麦

 飼料用としては普通青刈の目的で栽培される場合が多く,他の麦類と同様に,家畜の好みに適し,養分に富んでいるのみならず,野草などがまだ得られない早春に利用しうる利点を有している。
 ムギ類のうち最も悪い栽培条件にもよく生育しことに寒気に対する抵抗力が強い。他面,高温には割合弱いが土壌に対しては酸性地,泥炭地,瘠薄地にもよく生育し,田畑を通じて作付可能で,特に水田裏作には好適である。
 品種は,いわゆる在来種として総括されているものが多いがペトクーザという品種があり北海道,青森県では奨励品種となっている。

栽培法

 整地はさほど丁寧でなくともよいが,深耕すれば収量を増し,又後作物にもよいから余り粗放ならざる方がよい。
 播種期は実収取りの場合,小麦より10−15日遅播とするが青刈の場合はこれより早播とするが有利である。
 普通条播を行い,小麦よりか広播に畦巾2尺で反当5升内外を,播種期がおくれた場合は1升位増加して播く。
 なおカラスムギと同様にベッチ類その他の荳科と混播するが望ましい。
 管理はエンバク同様簡単で2回程度中耕を行う。
 青刈ライ麦は開花期前後が最も収量が多いがエンバク同様に出穂期頃から急激に繊維が増加し,また茎が硬くなって利用価値が下がるから生草用は出穂期頃までに刈終るがよい。
 収量は刈取期,播種法により異なることは勿論であるが大体550−700貫である。春早目に刈取ったものは2番刈も出来る。

青刈菜種(レープ)

 畑地,水田裏作の飼料作物として各地に適し,春の緑芻として魅力のあるものである。
 元来菜種はゴマ,落花生と共に油糧資源の一翼を担って,青刈飼料と言う代物に一ベツさえ与えなかったほどである。
 将来は天婦羅油に専念することなく貴重な乳産飼料として衣装替えすべきであり,この点一考を煩わさねばならない。
 菜種は気候の適応性が広く,北は北海道から南は鹿児島県に至るまで栽培され又積雪地方にも適する。
 しかし根の凍結,茎下部の霜害は菌核病に罹り易い。
 各土壌に適するが理想は排水の良いやや湿潤な耕土の深い壌土,次いで砂質壌土,粘質壌土で重粘な土壌や乾燥しすぎる土地はよくない。酸性に対する抵抗力は強く相当の処でも生育するが,甚しい場合は中和の要がある。
 ナタネは水分を多く要する作物で,要水量は麦類の約2倍と言われ,従って水田裏作には好適である。
 常に潅水している様な状態では勿論悪く高畦として栽培すべきである。
 品種としてはドワーフエセツク種,ジヤイアントカンガール種等,巾広の葉が密生し青刈として価値が高く2番刈も可能である。
 普通実取りのハンブルグ種や,朝鮮種を青刈の目的で栽培してもよい。

栽培法

 直播と移植があるが夏作物が採種の播種前には附く処等では,青刈が目的であるから労力を少なくするため直播法によるがよい。
 播種期が早すぎると虫害を受け易く,遅くなると発芽がおくれ寒害を受けるからその地方における適期を選定すべきである。
 大体播種期の巾は10月一杯であるが実取りの場合の移植播種期より2−3週間後れた頃である。
 不整地は生育が劣るからなるべく丁寧に行い,前作物の収穫後石灰を施して耕起し砕土後地均らしをして作条を作る。
 畦巾2−2.5尺とし基肥(堆廏肥300貫,過石4貫)を入れ覆土しその上に播種する。
 播種量は大体4−5合で条播の場合は播巾5寸の薄播とし,点播のときは株間3−5寸とする。
 水田裏作の場合は早生稲を選び刈取後播種するが,この場合排水に注意し高畦とする。排水良好田では水整地播を行ってもよい。
 畦巾2−3尺,覆土は細土か之に定熟堆肥や焼籾殻を混じて用うるとよい。
 反当り本数はレープの利用時期,土地の肥痩,施肥量,品種及び播種期によって異なるが収穫量を期待して生育最盛期に収穫する場合は1万−1万5千本位が適当である。
 然し早春に幼若なものを緑芻として与える目的ならば更に本数を増加し間引きながら与えてもよい。
 一般的には暖地ほど本数を多くし,晩播は早播よりも本数を多くし,成熟期に地面の見えない位に繁茂させる。
 間引は播種後7日位に本葉が出始めるから第1回を行うが,その程度は葉と葉が触れ合わぬ位で,その後本葉が4−5枚になるまでに第2−3回間引いて11月上,中旬までに所定の株数とする。
 間引は重要な作業であるから時期を失せず間引き日光と通風をよくせねばならぬ。
 追肥は第1回の間引のとき畜尿を,第2回は1月上,中旬第3回目は3月上中旬頃に施し同時に土寄をする,之は倒伏を防ぎ,旦菌核病の発生を防止するに役立つ。
 4月以降随時刈取り給与するが反当収量は500−800貫が普通である。
 なお播種期を適宜変更することにより早春,初夏,秋に刈取り利用しうる。
 サイレーヂとして用うる場合は半日くらい日乾するか,サイロの底と詰め込みの途中に切葉を3寸位に切って詰めるとよい。
 菜種は3寸内外に切ってかたくふみ込む。

移植法

 移植栽培は前作物の収穫時期がおくれるとき,或は直播が農繁期に当るため不可能の場合や水田裏作に適用される。
 育苗の秘訣は大苗を作ることである。
 (1)苗の腰が低く,発根部と発葉部との間が小で節間の短いこと。
 (2)葉柄が短く葉肉が厚く直根太く鬚根の発生低く側方に伸長し葉に皺が多くないもの。
 苗床は他の作物と同様に通風,排水良好で乾湿適度,肥沃な処,過湿地は腐敗病の害が多い。
 苗床面積は1回仮植の場合反当5−8坪仮植をせぬ場合反当20−30坪である。
 苗床は播種1週間前後(8月末頃)石灰坪当り100−200匁撒布,深耕,砕土して高さ4−5寸巾4尺,長さ適宜の短冊形の床を作る。
 肥料は窒素に重点をおき元肥として定熟堆廏坪当1貫を撒布して土とよく混ぜる。
 播種前日又は当日硫安坪当40匁(下肥で代用の場合は播種前に施し乾燥するをまって播種す)過石50匁,硫加20匁を撒布し土とよく混和せしめる。
 追肥としてごくうすい下肥を間引毎に施す。
 播種期は早すぎると苗が徒長し肥切れするのみならず虫害をうけ易い,大体9月中−下旬である。
 苗床播種量は反当4勺で,細砂,細土と混合して4−5倍にするか,石灰と共に撒播又は点播するか或は播巾2寸位に薄く条播する,覆土は種子のみえなくなるまで藁灰,砂などを覆土し軽く鎮圧し,その上を藁で薄く覆い時々潅水する仮植せぬ場合は5寸平方に1ヶ所宛3粒ずつ点播するがよい。
 播種後3−5日で発芽するから直ちに覆いをとり3日−4日経て子葉が充分展開した頃から間引を始め10月上旬頃最後の間引を行って4寸平方に1本立とする仮植せぬときは最初2本立とし必要に応じて1本立とする。
 仮植は夏作物が永く残り,大面積を苗床とすることがむつかしいときや,播種期が早く苗床日数が長いため徒長を防ぎ直根を短かくし,支根を多くして充実した苗を仕立てるために行う。
 仮植床のないときは,園地の間作とすればよい仮植時期は播種後1ヶ月(10月上−中旬)本葉5−6枚の頃が適当である。
 仮植本数は反当所要量の2−3割の余裕を見積り1本宛丁寧に堀取り1本宛を深さ1−2寸位直立植とし葉際まで埋め根本を軽く鎮圧する。

本圃

 畑地の場合は石灰を撒布し深耕して畦を作る。水田裏作の場合は稲刈取り後なるべく早く(湿田の時は立毛中)水田周囲に排水溝を設けて土壌が乾いてから石灰を撒布し深耕する。
 畦巾は1条植で2.5−3尺,3条植は5−6尺,高さ7−10寸,畦と畦との間に1−1.5尺の溝を作る。
 乾田で排水良好な所では畑に準ずるか又は22間に,1本位の排水溝を作るとよい。
 肥料は直播時に準ずる。
 定植期は早晩により苗の活着や越冬に著しい影響がありおくれると生育が悪くなる。
 大体播種後60日位経った頃で本葉10−13枚頃がよく11月下旬頃であろう。
 定植本数は品種,苗の大小,土地の肥痩植付時期寒地,暖地では異なり何れにしても採種用より密植すべきである。
 概して畦巾2.5尺として6,000本位である定植の方法は植穴を設けて根を切らぬように苗を丁寧に掘取って直立植とし深さは葉柄の際まで埋めて鎮圧する。
 特に霜柱の害のある所や乾燥地などでは深植とすべきである。
 12月中下旬に第1回中耕除草,第2回目は3月上旬に行い施肥後土寄せをする。
 4月初旬より随時刈取り給与するが収量は4月上旬300−400貫,4月下旬頃に950貫位である。開花したものは嗜好が劣り下痢を起すおそれがあるから開花期以前に利用すべきである。

カブ

 カブには普通カブとスウエーデンカブ(ルタバガ)とがありルタバガの方が栄養分に富んでいる。
 何れも水分が多く固形物は10%位である。生育期間が比較的短く,収量が多く,特に乳牛の冬期間の多汁質飼料として重要である。主成分は炭水化物で,ビタミンB・Cにとみ,蛋白質は少ない。
 養分は根塊よりもむしろ葉の方に多いから葉も無駄なく飼料化する必要がある。
 スウエーデンカブは養分にすぐれ貯蔵性にも富んでいるが,生育期間が長くて土地利用上支障があるばかりでなく害虫の被害を受けやすいから,一般の地方では普通カブのうち収量の多い大型品種を選んで栽培するがよい。
 畜試カブ,聖護印カブ等有利な品種である。
 寒冷地や高冷地ではスウエーデンが有望である。
 耕地は普通地でよく酸性が多少強かったり地下水の高い所でも相当の収量があり荳科の不向きな土地に試みると興味がある。

栽培法

 播種期は地方により品種により異なるが8月下旬−9月上旬までとされている。
 播種期は恰も夏季の干魃期に当り発芽に極めて適期を逃さぬよう注意すべきである。
 畦巾2尺前後多少高畦として条播するか又は株間0.8−1.5尺で予め畦上に植穴を作りその中に廏肥その他の基肥を施し薄く覆土して各株7−8粒を点播する。
 播種量は反当り5−6合である。
 間引きは収量に大きな影響があるから適当な時期に行う必要がある。
 カブ苗は一般に風に弱く密生を好むから余り間引が早すぎると生育を害する。
 概して本葉が5−6枚出た頃から順次間引き以後3−4回凡そ40−50日位で1本立とする。
 又間引と同時に石灰を施要すると害虫の駆除と同時にその後の生育が斉一となる。
 中耕除草は屡々行うが土寄は早期に充分行う。ルタバガは性質として根が大部分露出するものであるから倒伏のおそれがない限り心配ない。
 肥料は廏堆肥反当300貫を元肥として与え追肥として畜尿を2−3回施用する。
 収穫は当年の秋から初冬にかけて根茎の充分発育した時に収穫する。
 茎葉部と根部は別々に利用し根は大体反当り1,000貫葉は300貫である。
 暖地の畑や乾田で9月頃前作の収穫が終りオオムギの播種までしばらく土地が空くような場合に多少播種期はおくれてもカブを播きその後差支えない範囲内でなるべくおそくオオムギをカブの条間に間作し,カブは12月初旬から幾分早目に収穫すれば大麦に殆んど影響なく同一地積から余分に飼料を生産することが出来る。
 収穫前のカブは摂氏零下7−8度位の寒さならば凍結する心配がなく暖地では3月頃までそのまま畑におき随時収穫が出来るが越冬中茎葉が著しくいたみ利用出来ない欠点がある,それ故極力適期に収穫し完全に貯蔵することが肝要である。

貯蔵

 茎葉はそのまま緑芻として与えるか又は乾燥して冬季のビタミン並に葉緑素飼料とする。根は表面の水分を十分発散させ,なるべく高燥な場所に貯える。
 或は畑の一偶に円錐型に積み重ね麦稈で覆い薄く土をかけておくのも一方法であろう。
 但し此の際余り深い穴などに埋め多量の覆土をすると却って腐敗しやすい。
 又カッターで薄切し天日に干し水分が幾分除かれたときサイロに詰める。

飼料成分表

作物名 可消化成分 澱粉価
粗蛋白質 粗脂肪 可溶無窒素物 粗繊維
青刈ソラ豆 2.30% 0.50% 4.10% 1.60% 7.10%
青刈エンドウ 2.8 0.3 3.8 2.6 7.2
青刈ライ麦 2.2 0.4 6 4.5 10.3
青刈エンドウ 1.4 0.4 6.5 4.9 10.1
レープ 2.6 0.3 10 11.6
普通蕪菁 0.7 0.1 4.7 0.5 4.3
ルタバガ 1 0.3 7.7 6.6
普通カブの葉 1.8 0.1 7.3 8
青刈大豆 3.2 0.5 10.2 11
レッドクロバー 2.5 0.3 6 2.3 8.7