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かね

◎先年大阪の官民公開の席上で某実業家が役人をコキ下した挙句「役人は人間の屑である」と罵った事が問題を引き起こし訴訟に迄発展した事がある。結末は発言者の陳謝でケリとなったかは記憶に残らぬが此の言は一面の批判でもある。元来官僚と呼ばれる人は比較的有能才子が多いにも拘らず制度なり機構なりがガンヂガラメに取り囲んで玉石のけじめはなくとも冗漫な御役所仕事の能率にはさし障りがない事にも一因がある様だ。

◎亦,中には仕事のパッションよりも遊泳術へのパッションの方が有効であり,手を連ねてスムースな連絡が運ぶよりセクト主義を強行して独善の道をゆく事が有利である位な考えの反面に国民の前には法令の一言半句にこだわって猛々しくなることは恰かも虎の威を借るワン公の喩えにも似た人達も居ない訳でもない。

◎矢鱈に法令を作文し規則を濫造して而も朝令にして暮改,ウッカリすると相当の御本人でさえドヂドヂする事さえある位であり,数多い中にはどうかと思われるものもあり,仮りに或る業態の例をとっても産業的に推進する為か之を後退抑制させる結果となる為か判断に迷うものさえある。然し民間でも心得たもので法網の眼をくぐる事に智恵を働かし裏をかく事に虎視たんたんとして居り結局法は弱い者や正直な者にのみ通用すると言った具合ではそんな法は無きに如かずと言われることになる。
 元来法は法の無い事を期待するものであり,又一面行われざる法にあらずとさえ言われている。

◎而してこうした体系組織を構成している中に生活を営む階級があるのであってその名を問えば前述に掲げた吾人輩そのものズバリである。
「敢えて5斗米の為に節を屈せず!!」と官を辞して行季をかついで故山に帰ったと言う支那の故人を真似るには余りにも現代は深刻である。本意ならずとも鉛筆のチビルが如く我が人生を刻んでゆくか………。