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ラデイノクロバーの蛋白質は最高位にある
(ハーズ デアリマン誌より)

在京 たけだ生

ラデイノ,クロバーの葉は豊富であるため,蛋白質において,ルーサン,赤クロバーの上位にある

 赤クロバー,ルーサンは古来より,多くの畜産人にとって,友人であり,これらの牧草の長所,短所は十分知られている。
 換言すれば,これら似かよった2つの牧草は名声を博しているということである。
 ところで,今日ラデイノ,クロバー(註1)レスペデザ(註2)等の如き他の荳科のものが紹介され,これを利用しているが,これらの長所は余り知られてない。
 ラデイノ,クロバーが近年非常に有名となって来た。その原因は何であろうか。
 その原因の一つは,ラデイノ,クロバーの蛋白質含量は非常に多く,且つ無機物,ビタミンも多量に含有しているということである。
 事実,他の荳科と比較するとき後述すが如く,多くの点において赤クロバーやルーサン,その他の荳科の上位にある。
 ラバイノ,クロバーの総蛋白質は優秀なルーサンの乾燥の総蛋白質よりも多く又赤クロバー,レスペデザよりはるかに高い。

82ポンド(1ポンド120匁)だけルーサンの上位にある

 凡そ50回程の試験結果により,ラデイノ,クロバーの乾草1t(266貫)当り蛋白質量は赤クロバーのそれより100ポンド,ルーサンで82ポンドだけ多い。
 そうして,ルーサンよりも多くの燐酸を含有し,加里は僅に多く,反対に石灰は僅かに少ない。
 硅酸は家畜飼養の立場から好ましくない成分であり,ラデイノ,クロバー,ルーサン,赤クロバーにおいては極めて小量発見されるのみで,燕麦の1/10程度である。
 硅酸は藁稈,草の茎を硬くする性質を有しているため,燕麦,チモシーの乾草にあっては歓迎されない成分である。
 荳科の乾草における有用な蛋白質は葉の部分に多く含まれている。ラデイノ,クロバーは葉部の多い植物であり,乾草において葉部が大部分を占めているということが優秀な品質を保持するため絶対に必要な条件で,ラデイノ,クロバーはこの条件を最もよく満たしているわけである。ルーサン,赤クロバー,レスべデザは粗悪な硬い茎の部分が非常に多くこのため乾草の品質が低下する。

茎は飼料の品質を低下せしめる

 ラデイノ,クロバーは殆んどすべてが葉であるが,ルーサンは平均48%が葉で52%が茎である。赤クロバーは平均29%が葉で52%が茎、14%が花である。
 レスペザデは平均して54%が葉,46%が茎となっている。
 これらの重要な荳科の牧草は平均半分が茎で,この茎は乾草の品質を低下せしめ又飼料の消化率を低下せしめる。
 葉は多量の蛋白質を含有しているが,これは又生育の時期によっても異なる。ルーサンの葉は固形物1t当り512ポンド蛋白質を含有しているがラデイノ,クロバーは444ポンドにすぎない。
 赤クロバーの葉は他の荳科よりも非常に低く351ポンド含有しているにすぎない。
 葉部における蛋白質の比率と,前述の茎葉の占める比率とを考えた場合に葉の部分が大きな価値をもっていることを強調することができる。
 そうして又殆んど葉の部分で示められているラデイノ,クロバーが最も優れていることがうかがわれる。
 今葉及び茎における蛋白質含有量の平均割合を示すと,
 ルーサン  葉  25.6%  茎  12.5%
 赤クロバー 葉  23.4%  茎   8.4%
レスペデザ 葉  17.7%  茎   8.2%

禾本科牧草にも又助力が与えられる

 ラデイノ,クロバーは示本科牧草との混播に利用することが出来その結果示禾科牧草の飼料価値を高める。
 イリノイ州フアイエツテ地方のブラウンストウン実験農場における試験では,ケンタッキー31フエスキューがラデイノ,クロバーと共に生育し,乾草1t当り300ポンドの総蛋白質を含有し,ケンタッキー31フエスキューがラデイノクロバーなしに生育したとき総蛋白質は151ポンドしか含まれていなかった。
 この結果は単に示本科牧草の蛋白質を明らかにしただけでなく荳科の牧草との混播において,飼料価値が改良されることを示す。
 ラデイノ,クロバーは土壌改良のためにもよいが根部の特異性によりルーサン程よくない。ラデイノ,クロバーの地上部の生長が1エーカー当り2,500ポンドの場合凡そ1,500ポンドの根をもつことが発見された。
 この地上部と地下部は123ポンドの窒素成分を含有する。ルーサンの地上部の生長が2,500ポンドの場合平均地下に3,000ポンド(360貫)の根を持ち,両者合して143ポンド(17貫160匁)の窒素成分を有する。ラデイノ,クロバーの地上部,地下部何れも良好な生育は1エーカー当り4,000ポンドの有機物と123ポンドの窒素成分を作りあげ,土壌改良のために使用することが出来る。
 同じ面積の土地の地上部,地下部のルーサンの生産量は5,500ポンドの有機物を作り,143ポンドの窒素成分を生産し,この量は又土壌改良のために使用することが出来る。

播種量は少くてよい

 ラデイノ,クロバーの種子は高価であるがエーカー(4反)当りの播種量は1−2ポンド(120匁―240匁)で比較的少量のためこの高い種代もその使用を妨げない。
 ラデイノ,クロバーは土地に石灰が撒布され,土壌試験により不足する肥料成分が施用されるならば立派な立毛と満足すべき生長をもたらすことが出来。
 放牧にも良好であり,又高級な乾草を作ることが出来る。
 1エーカー当りの乾草は1.5−2.5tであるがルーサンの生育がよい場合の時程収量は多くない。ラデイノ,クロバーは他の乾草作りよりも,水分の含量が多いため乾燥が困難であるから収穫の際十分注意すべきである。
 南部イリノイ州の農民は昨年夏のある日彼の憐人たちに次の様なことを話していた。
 「私は冬の飼料のための色々な問題はラデイノ,クロバーの乾草で飼料倉庫を満したから解決出来た。」と
 彼はこのラデイノ,クロバーの乾草を始めて作ったとき,この乾草にカビが生え飼料として利用出来なかったことを経験した。
 それは葉の多いラデイノ,クロバーを十分乾燥せずに貯蔵したため全冬期間の飼料を失ったのである。

 註(1)ラデイノ,クロバー

 ラデイノ,クロバーは北イタリーのロンバルデイ県のロデイ町で始めて発見されたもので普通の白クロバーに比較して極めて大なる生育をする。ホロウエル氏によれば今次戦争中アメリカ北東部の州では,牛乳,肉又は卵生産に対して,このクロバーは農家に極めて安価な飼料を供給した。このクロバーは放牧能力を増し,乾草にもサイレイジにも用いられ,ラデイノ,クロバーの適したこれらの州では家畜の必要な蛋白質の大部分がこれによって供給されたとさえ言われている。

 註(2)レスペデザ

 近年レスペデザの名称でヤハズソウ,マルバヤハズソウ,メドハギ等が農業に導入されるようになり,米国ではブッシュ,クロバー(灌木牧草)と一名称している。農業上飼料作物としてはヤハズソウが重要である。(宰府 俤)