ホーム岡山畜産便り > 復刻版 岡山畜産便り昭和26年10月号 > サイロとサイレージ(二)

サイロとサイレージ(二)

 サイレージ或はエンシレージと言う言葉は我々の世界では格段珍らしいものでなく,直感的に如何なるものであるかを知ることができるが,反面その多少でも科学的な知識に至っては,余り知られていないのではあるまいか。
 このサイレージを利用する以上良質のものを得る事が望ましく,良質のものを得るためには,そして今迄利用されて居なかった原料で新らしく試みて見たいと思うときには―そうしたことが今後相当に生じて好い筈であり又かくあることが望ましい―サイレージなるものの基礎的知識が必要であり,これあって始めて完全な製品を調製し得る筈である。
 サイレージの材料,造り方等は勿論のことであるが,この様な知識にも触れつつ筆を進めてみたいと思う。

1 飼料としてのエンシレージの意義

 牛,馬,緬羊,山羊のような草食獣では,一般に飼料摂取量の大部分が粗飼料であり,粗飼料として利用できるものには,草類,各種の青刈作物,農作物の副産物などがあるが,これらの大部分は春から秋にわたって生産されるもので冬季間の粗飼料としてはこれらのものを貯蔵する必要がおこってくる。
 しかるに荳科植物,甘藷蔓などの如く,水分含量80%以上に達するものは乾燥が容易でなく,又天候によって乾燥に困難が伴ない手数を用するが,これをサイレージとするならば比較的安価な費用で生草を多汁質のまま貯蔵出来,冬季乾燥時期に入っても夏季におけると同様に青々とした生草を家畜に給与することが出来るので冬季用の多汁質飼料としてその存在意義がある。
 草類は,それを乾草にする場合,上手にやっても,その生草が乾くまでには,その植物体自身の呼吸によって1割程度の養分が分解するし,養分の多い葉を脱落させるなどの機械的な損失も5分以上ある。
 サイレージの場合もサイロの中で種々の変化により,でき上るまでに約1割を損じ,最上部の空気に触れて腐敗する部分が1割前後あるから,乾草,サイレージとも養分の損失は1−2割の犠牲を払わなければならない。
 これを消化の点からみれば乾草,サイレージとも5分程度の消化率を減じ常に新しい生草のほうが消化が良いのである。
 ビタミンの点では乾草はビタミンAが半分以下に減じB1は減じないがサイレージはAは減じないがB1は醗酵により大部分が分解するのである。
 これらのことから我々は冬季間給与する場合,単味でなしになるべく他のものと混合して与えた方がよく,更に当然のことではあろうが春から秋にかけての生草類の生産される時期には青草を給与することが好ましい。
 しかし,もしも経営規模の関係,その他の条件のため採草給与期間に不足を来たすか,或は飼料畑を,極めて集約的に活用しなければならない場合は,後述するが如くサマーサイレージ等を利用することが必要となってくる。

2 サイレージの理論

 植物が堆積されると一定期間は呼吸作用を続けるが同時に蛋白質,炭水化物は分解を始め澱粉,糖分の如き炭水化物は分解中に炭水化物と水とを排出し高温度を生ずる。
 温度の上昇につれ各種の細菌,酵素が活動を開始するが,サイロに飼料を?充すると約2−3日で温度が上昇し,若しもサイロに空気が存在すれば(十分に踏込まれていない場合)酸化作用が促進され摂氏40−50度にも昇ることがあるが良く踏み込んだ場合は摂氏30度前後である。
 温度の上昇により養分の損失が多くなることは勿論であるが,ともかく温度が上昇し酸化作用が盛んに行なわれるとサイロ内に酸素は次第に消化され,炭酸ガスで充満する様になる。細菌の活動は最初は好気性の状態で行なわれていたものが,嫌気性の状態で行なわれる様になるわけである。
 呼吸作用並びに酸化作用により温度の上昇がもたらされ次で細菌による分解作用(醗酵作用)が行なわれるが,サイロ内で飼料が順調にサイレージに変化する場合は,主として乳酸醗酵が行なわれるもので,これは又嫌気性の醗酵である。
 乳酸醗酵によって植物体内の糖分が分解され乳酸が生成されるのであるがこれは空気中より植物体に附着してサイロ内に浸入した乳酸菌により行なわれ,そうして乳酸が生成されるとサイレージは酸性となりこのため腐敗菌の繁殖がさまたげられサイレージが貯蔵性を帯びてくる様になるのである。しかしサイロ内には乳酸菌の他に酪酸菌,醋酸菌等が発生し,折角のサイレージを腐らしてしまうが,特に酪酸菌はその発生を注意しておかねばならない。
 乳酸菌の発育する温度の範囲は摂氏0度から55度であるが,土壌中に見出される耐熱性のものでは60度−70度で発育するものもある。純粋の乳酸菌を発育温度から大別すると次の如く分類することが出来る。

 8−20度 低温乳酸菌
 20−35度 中温乳酸菌
 35−55度 高温乳酸菌

更に酪酸菌,醋酸菌の発育温度をみると

 醋酸菌18−35度(最低約10最高約40)
 酪酸菌35−40度(最低約20最高約50)
 乳酸菌30−65度(最低約5最高約70)

の通りで,この表から良質のサイレージを得るには,少くともサイロ中の温度を50度以上に保てば,乳酸菌の繁殖のみが盛んとなり醋酸,酪酸の生成は非常に制限される。反対に温度を20度以下にすれば醋酸の生成はあるにしても酪酸は極度に抑制される。
 それ故に,サイロ内の温度により製造されたサイレージを高温サイレージ及び低温サイレージに分けうる。高温サイレージと低温サイレージの差は材料のつめ方できまり,高温サイレージの場合は,一度に詰め込まず数回に分けて詰込み,比較的水分を少なくした材料で,高温醗酵させるわけであるが,手数を費し,養分損失の割合も多く,材料の水分率も面倒なので一般には行なわれていない。
 我が国ではもっぱら,低温サイレージの方法がとられ,これは一度に全部を詰めてしまい,そうすると空気中の酸素が少ないので高い醗酵をおこす好気性細菌が少なく,詰めた材料も呼吸作用が出来ないのでそのまま枯死して温度があまり上らない。
 そのため嫌気性の乳酸菌だけが5−20度の間で活躍出来る良い環境になるのである。
 細菌の糖分の分解によって乳酸が生成されることは以上の通りであるが,蛋白質については大体10−50%,脂肪についても,殆んど同量が分解されている。
 細菌の他に,酵素の作用も認められこの活動が活発すぎると,養分を分解してしまうが軽度の活動は養分を家畜の消化しやすい状態に導くもので,これは又温度に支配されるわけである。ビタミンについては強い醗酵作用の結果,温度が上昇すると破壌されるのである。
 サイレージ生成中の,養分の損失量については,養分の酸化並びに醗酵により当然もたらされるものであるが,その量は醗酵の状態,温度により著しく違うものである。大体の養分損失量は5−20%の範囲とみなされて,最も順調に行なわれた場合は10%内外である。(乾草製造時の損失量は20−30%)
 一般に原材料からサイレージとして供用しえられる割合は70−85%,平均75%内外とみてよい。
 サイロに材料を詰込んでから大体6−8週間で使用に供しうる。米国,濠洲では20年前に製造したエンシレージが何等悪変しなかったと言う記録がある。

3 材料の選び方

 サイレージにする材料は,家畜の飼料になるもので,たくさん手に入るものであれば何でもいいわけであるが,その点では今のところ青刈玉蜀黍がすすめられている。
 しかし何もこれに限ったわけでなく,その他のものでも,営農関係とにらみ合せて,有利なものを使うべきである。
 サイロにつめる主な材料は,いままでは飼料の栄養と量の点からばかりで決められていたが,農家自身の立場からすれば,もつと自分の営農と結びつけて考える必要があるのではなかろうか。というのは,
 畜産が主業である農家は別として,そうでない大部分の農家では,飼料作用の土地利用は,農家経営全体の土地利用にもとづいて,決められることになるからである。
 青刈玉蜀黍は上手に,栽培すれば反収1,000貫は収穫出来るが,直径5尺に9尺の標準サイロを,これだけで満たすとすると,どうしても一反歩は栽培しないと安心出来ない。しかるに畜産を主体に経営しない農家では,そうはっきりと,割りきって,土地を使うわけにいかない場合が多いので,もっと余裕のある,実際に印した計画をたてなければ,やっていけないことになる。

(1)青刈玉蜀黍と荳科飼料作物(ウズラマメ・ツルマメ等)

 青刈玉蜀黍はサイレージ製造に最も適した飼料で,之は長い間の経験から実証されている。
 これは,玉蜀黍が糖分含量その他からみて,サイレージの醗酵に最も適しているらしいからである。
 しかし青刈玉蜀黍ばかりでは,どうしても蛋白質の不足がおこり,このため荳科のものを,まぜて詰めることが考えられる。
 青刈大豆と,ウズラマメ(ツル有り)の混播,或は青刈大豆とツルマメの混播は合理的な作付体系でもあり,今後普及すべきである。
 青刈大豆を単作で畑に作ることは,土地の利用上,能率的でなく,又これを青刈玉蜀黍と混作しても高く伸びた玉蜀黍の陽かげになって,ものにならない。ところがツルのあるウズラ豆,或はツルマメ(大葉ツルマメ)は高く巻き上って繁茂するので,反当収量の増加のみならず飼料価値を高める。
 何れも青刈玉蜀黍と同時に,その株間に適当に播種すればよい。マメの方がはるかに発芽が早く,長く伸びたまま,玉蜀黍の成長をまって,それにまきついてゆく。刈取りも同時におこない,熟した実だけを収穫して,青いものは,玉蜀黍と一緒に切り込んで詰めるのである。
 青刈玉蜀黍の栽培に,注意したいことは,播種の時期である。それは子実も利用するかどうか,ということと,なるべく茎を硬化させないうちに詰込む,という2つの条件が出てくるためである。
 サイレージ用のみの理想から言えば最適期といわれる子実の乳熟期に刈取ることである。
 つまり,茎と子実の併用を考えないならば,その好適の時期になれば,いつ刈っても良いわけであるが,青刈玉蜀黍を一反も作っていないときは,他のもので,一緒に詰める作物や材料のことも考えなければならない。
 これらの作物や材料は,青刈玉蜀黍が乳熟期になるときに,収穫ができるようにすることで,自然,播種の時期も決まってくる。
 子実と茎の併用を考えると,どうしても早く播種しなければならないことになるが,そうすると,茎が硬くなって,サイレージにしても,1割以上の食い残しが出来,サイレージの価値からだけみると損なわけで,そこで考えられるのは,普通玉蜀黍は,子実が2房になるのでそのうちの1房だけを子実用にとるようにして刈れば,1房約1合として,坪1升と見ても一反歩で3石の収穫ということになり,冬の養鶏飼料にすれば,10羽を4ケ月飼養することができ,又家畜の濃厚飼料にしてもよいわけである。
 この1房とりの方法は,サイレージ材料としての適期ははずれるとしても,営農的には,はるかに優れていると言いうる。
 食いのこした茎の硬い部分は集めて粉碎器にかけ,もう一度飼料としてやることも出来る。

(2)キクイモの茎葉とサツマイモのツル

 両方とも近年になってサイレージ主材料としての価値が高く評価されだしたものである。
 従来よりイモの収穫だけしか考えなかったのを,さらにサイレージ材料に生かして,栄養価の高い,その茎葉やツルを活用しようというのである。しかもこれらは何れも,青刈玉蜀黍よりは,栄養価の高いサイレージが出来,その収量も,家畜の好みから言っても,青刈玉蜀黍に匹敵するものである。
 サツマイモのツルは反収500−800貫,キクイモの茎葉は600−900貫とれるがこの場合,茎葉の利用に重点をおくと,当然イモの収量に悪影響がでてくるから,イモの収穫と茎葉の利用とを,よくにらみ合せて,刈取時期を決定すべきである。
 (キクイモは山間や寒,高冷地々帯の乳牛の飼養を始め各種の畜産経営のために,玉蜀黍にも優る高い価値が発見されているが次回において取り上げてみたいと思っている)キクイモも一反歩では1,000貫近いイモがとれるから,茎葉を利用するために,イモの収量が半減するとしても,乳牛1頭が冬の間に1日3−4貫ずつ食べるには十分である。
 キクイモの茎葉をサイレージに利用する場合,茎葉のみを考えると9月中旬−下旬(摂氏15度前後)がその量質共に適した時期でそのころには,花も咲き終って,茎が硬くなり始める頃で,刈りとるとき,鎌を入れた力で,茎が自然と,もろく折れ始める前後,下葉が1,2枚色づき始めた頃である。
 サツマイモのツルはそのサイ断に一苦労があるし,そのまま詰めこんだのでは,詰めこみがうまくいかず,空気の踏みだしが不十分になってよくない。
 茎葉やツルのサイレージ利用は,ぜひとも農家サイロの主材料に活用したいものであるが,その刈取の時期が,イモの収量におよぼす関係をよく研究しておいて,自分の営農とよくにらみ合せて,考える必要がある。
 その他サイレージの主材料にすることのできる栽培作物には,ハトムギ・ヒマワリ・スーダングラス等がある。

(3)野草の活用

 最近,野草の利用が唱えられているが,これは,よろこばしい傾向である。しかし,どの野草でもというわけにはいかない。
 サイレージ用の野草は,どうしても,よく管理された採草地の特殊な野草が必要である。
 サイレージ材料としてばかりでなく,一般に農業に利用される野草と言う観念を,和が国では,とかく雑草という観念と混同している。このことは我が国の野草利用が,外国の牧草のように,今日までなかなか合理化できなかった原因である。
 現在の野草の収量から言っても,これだけでサイロを満たすことはまず困難である。
 たとえ量の方が,どうにか,集まるにしても,それだけの草を1日の間に,山野に探し求めて,詰め込む用意をすることは大変な手数を要する。
 それ故に,野草の場合は特殊の採草地を,もたない限り,現在の処では,ほんの詰合せ程度くらいより仕方がない。
 そうして,使用する野草にしても,栄養価もよく,家畜の嗜好にもあい,一度に沢山刈取ることができ,乾きすぎたり粗く硬すぎたり,水分が多すぎたりしないもので,しかも切断するのに便利である,といった様な条件がでてくるが,これに合格するものとしては禾本科ではハギ,ヨシ,カヤ,キク科では,アザミ,ヨモギ,水草ではスゲ,カヤ,ツリグサその他イタドリ,ウド等がある。
 こうした野草のサイレージ用としての欠点は十分成長させると茎が粗剛になることで,アザミ以外の野草ではこの点に注意が必要である。
 又野草は栽培作物とことなり,播種期を工夫することにより,刈取期を左右することが出来ない。そこで詰込みの時期を決定するのに,いろいろな制限が生まれてくる。
 しかしながらサイレージ材料の不足し勝ちな農民にとっては優良野草の利用は,大きな強味となっており,野草の人工管理と合理的な採草地経営に,大きな将来をもっていることを物語っていると言えよう。

(4)ワラ,クキ類の利用

 実をとった禾本科やマメ科の茎,葉をサイロに利用するには,主材料として計画することは出来ないが,サイレージ材料の総合計画の一つとして活用すべきである。

 (イ)アワ,ヒエの稈

 何れも穂だけを立ったままで,早目に刈取り,それが終り次第,すぐに刈取ってサイロに詰める。茎が硬くなっているが,細いものであるから,他の軟かい材料と詰め合せておけば,食べる方も苦にしない。この稈は反当300−400貫程度である。

 (ロ)ヒエの稈

 晩生種のヒエの一種に「切りツヒエ」というのがあるが,これは子実が熟しても,まだ茎が青い特徴をもっている。
 ヒエは穂が熟すると,実がこぼれやすいがこのヒエの穂は実がこぼれず,しかも多収である。

 (ハ)ソバの稈

 栄養価も利用価もすぐれており,多少の家畜の腹をひやすといわれているが,この茎葉は水分が多いので,子実を収穫した直後でも間に合う。
 ワラ,クキ類をサイレージ材料に使用する場合,注意すべき点は,刈取ったならばすぐに詰込むようにし,なるべく水分を失わないようにする事が大切である。
 詰込みの際も,なるべく水分の多い材料と一緒に詰合すことである。
 こうした補助材料をうまく利用することは十分な飼料畑をもたない農民のサイロ計画に,非常に高い利用価値を有している。

(5)葉菜の利用

 キャベツの葉,大根の葉等は立派な材料であるが水分に対する注意が大切で,とりたてのものを,そのまま詰込むと水分が多すぎて間ちがいなく腐敗するばかりでなく,サイロ全部が失敗することにもなる。
 水分の多い葉菜は使用前に必ず半乾きに乾かしてから詰めることを忘れてはならない。足で踏込むとき,その葉からジクジクと水の出るようなものは禁物である。
 こうしたものは,念のため,禾本科のような比較的水分の少ない材料と詰合す必要がある。

(6)サンマ−サイレージ(夏向きサイレージ)

 暖地では真夏の草かれどきの対策であり,寒,高冷地では夏期のはげしい労働から,家畜の飼養管理の労力を節減する方法である。この詰込みは晩春から,初夏に行なう必要があり,どうしてもムギ類の青刈を利用しなければならない。
 一般に暖地では大麦,寒高冷地ではライムギやカラスムギが用いられるが,この場合に,マメ科の牧草との混播の妙味が発揮される。
 ムギ類は穂を出し始めると,その稈は固くなって,青刈りしても家畜はその下茎は喜ばなくなるから,この頃一斉に刈取りサイロに詰め込む。下茎が硬くなって,家畜が喜ばなくなっても,サイロに詰めれば,香や醗酵の関係で,サイレージとして利用ができる。
 この他に補助材料として,紫雲英,レッドクロバー,蚕沙等がある。

4 詰込みの要領

 サイロに詰込む際,注意すべき事項を記すと次の通りである。

(1)材料の水分含量は70−75%が適当である。

   材料         水分
 青刈玉蜀黍(乳熟期) 80%
 青刈玉蜀黍(黄熟期) 75%
 青刈ライ麦 75%
 青刈カラス麦 75%
 青刈サトウモロコシ 75%
 青刈ヒマワリ 80%
 青刈大豆 75%
 青刈ソラマメ 85%
 青刈エンドウ 85%
 レンゲ(開花期) 85%
 赤クロバー(開花期) 75%
 コンモンベツチ 75%
 サツマイモのツル 85%
 ジャガイモの茎葉 80%
 キクイモの茎葉 75%
 禾本科野草 75%
 大根の茎葉 90%
 カブの茎葉 85%
 ビートの茎葉 85%
 葉菜の茎葉 85%

(2)なるべく材料を細切して隙間のないようによく踏みこんで詰める。
(3)詰込み後内容を空気にふれないようにする。
(4)雨水が絶体に入らないようにする。
(5)上部から相当の重量を与える。
(6)万一温度が高くなりすぎると上部を除くか又は穴をあけて冷却させる。

 即ち材料の水分が多いと,滲み出した液が沢山サイロの上面まで浮き出てくる。これをそのままにしておくと,液が腐敗したり,カビが生じたりしてサイレージに悪い影響を与える。このためこの液をくみ出さねばならないがこの滲み出た液には可溶性蛋白質や炭水化物が含まれているから養分の損失が大きい。逆に乾燥しすぎると,仲々液が滲み出さないため,乳酸菌の繁殖がおくれ,その間に不良細菌やカビが繁殖もする。この様な場合,材料に水を打って湿めらすように,いわれているが,これは余程用心しないと,とんだ堆肥ができる。堆肥を作るに都合のよい条件はサイレージには不適当で,このときの水具合は,水分が材料にすいとられる程度で,材料からしたたるほどザーザーかけてはならない。
 労力の関係や,材料不足のため,水切れの悪いものを入れなければならないときは,それを一箇所にかためて詰めずに,必ず他の材料とまぜ合せて詰めることを忘れてはならない。
 普通水分の多い材料を詰める場合にはあらかじめ1日以内乾燥して水分を調節して詰めるか或は切葉をサイロの底に7寸位敷き,更に水分の量に応じて材料の中間所々に3寸内外の層に切藁を詰め込んで余分の液を吸収させる方法がとられている。
 大体サイロの材料は,1種類だけで詰めるときは別であるが,普通はいろいろとまぜ合せて入れる方がよい。1種類ずつ層を作って詰めることは,水分やカサ張り具合がちがっているので,空気の踏出しや,水分の調節にも不便である。
 そのうえ,家畜の好みから言っても,いろいろのものが混った方がよいわけである。
 マメ科の材料は蛋白質を増加さす上から,誰れしも考えることであるが,マメ科のものは乳酸菌の栄養源として必要な炭水化物が,蛋白質に比べて,他のものより少く,サイレージにする場合腐敗醗酵する危険性が強いからこれのみ単独でサイロを満たすことは絶対禁物である。
 又詰込みのとき固く踏みつけて空気を追い出し,1回でサイロに全部を詰めこむ様にせぬと雑菌の醗酵作用で高温となり,酪酸菌が発生したり,好気性の腐敗菌が発生し,腐敗やカビの原因となる。
 2,3日に分けて詰め込むときは1回1回の終りに,余程しっかりした重石をのせる必要がある。
 いよいよ詰込みの期日が決まり,各材料の予定量が決まったならば,刈取りにかかるがこの場合,葉菜類は少くとも5日位は,水切れさせた方が安全である。
 つまり水分の多いものから順に,早く刈取り,禾本科のものの刈取りは半日前か,詰込直前に行う。こうして材料が全部用意されたならば,一挙に切断にかかるわけである。
 植物は刈取った後も普通水分が40%内外になるまで呼吸作用を続け,たえず養分が分解されるから,サイロに詰込んだ後は,できるだけ早くその作用を絶つようにしなければならないわけである。又乳酸菌は空気のある処では繁殖できないものであるから,材料を小さく切断して踏込みを容易にし又切断によって材料に含まれている液汁を早く滲み出させる必要がある。
 軟かくて水分含量の多いもの,例えばイモヅルやレンゲのようなものは3−5寸,青刈玉蜀黍やキクイモの茎葉などのように質の硬いものは1寸程度に切る。
 切断は手早やく行いおそくとも2日中には全部を切る必要がある,そうして切ったものは片っぱしからサイロに詰めてゆくがこの作業がテキパキいかないと,詰めこみが2日も3日もかかって,理想的な詰めこみが出来なくなり,材料が乾きすぎて,カビを呼ぶ原因にもなる。
 切り終った材料は,大人が1人か2人,サイロの内に入って,上から入れる材料を,丹念に踏みかためてゆく。
 材料は一度に沢山入れて踏まずに,2−3寸ずつの厚さに入れ,これを平らによくなして,踏みかためる。十分かたく踏めたら,また2−3寸入れて踏むようにする。
 塩は醗酵をおさえ,腐敗を防ぐのに役立つのでこのとき2握りか3握り振りまいておくのがいいが,これはなくても,差支えない。
 踏みつけるかたさは,固いほどよいが,踏んでいる足が,ずくずく沈むようでは,まだ不充分である。なお壁の周囲を特に入念に踏みつけることです。
 壁の摩擦と重量の関係で,余程注意して踏んでおいても,沈下するときに残りがちになりそのために空気を出すのが,不完全になってどうしてもカビが出ることになる。
 ここをいい加減にしておくと,壁ぎわだけ2−3寸のカビになって,とんだ損害をうけることになる。
 こうして口もとまでの詰込みが終ったら,蓋になるように,上にムシロをかけ,そのうえに板の蓋をして、100貫以上の重石をのせておく。第1回は口元まで詰めなくてよいようなものであるが,その方が沢山詰まることになる。
 第1回の詰めこみが終ると,材料は翌日から沈下を始め,その速度は,だんだんゆっくりとして来るが,9尺の深さに一ぱい詰めたものでは,最初の1週間で約1尺沈下し,つぎの1週間で5寸位沈下する。その度合は詰め込みの上手,下手と材料によって決まるわけであるが,これ以上沈むものは踏み込みが足らないと考えてよい。
 2週間以後は沈下の速度が一層ゆっくりとして沈下がとまるまでにさらに1尺位に沈む。詰込んで10日から2週間の頃が第2回目の詰込みに良い時期で,前回と同様に用意しておいた材料を詰込む。
 このときは,はじめの材料は,もうサイレージにでき上っている。
 蓋を取ると上の3−4寸から6−7寸が空気の影響をうけてカビでいる。
 このときは,カビの影響も,まだ浅いので,そのまま家畜にやっても結構たべる。
 第2回の詰込みのときはこのカビた部分を完全に取り去る必要がある。
 このカビの処を取り除いて更にカビ止め用の塩を3升位振りまいてその上に口元まで材料を詰込む。
 そうしてムシロ2枚で蓋をして,その上に土を口一ぱいに3寸ほど入れて硬く踏みかため,その土の上に,またムシロをかぶせ,フタ板をのせて,その上に重石を積みかさねる,重石は乾いた材料や粗雑な材料ほど重くしなければならないが大体100−150貫位のせればよい。
 一般にサイレージは余程注意して詰めたものでも,上の5−6寸から1尺位は,カビにやられるものであるが,この方法でやれば,2寸位のカビですむ。この第2回目の詰込みは,どうしても材料がなければ仕方がないが,何とか無理をしてでも行いたいものである。
 フタ板は1寸厚さのものを3枚にしておくと,あとで毎日サイレージをとり出すときに便利で,フタ1枚だけ残して,その上に入れものをおいてとり出し,今度は出した処にフタをおき,残したフタをはずして,その部分をとるように順序よくとり出すことができる。
 サイレージは取り出し始めると,引続き取出すようにし,重石は除いたままでよいが,表面はなるべく空気に触れないようにムシロ等を覆っておき,しばらく取出しを中止する場合は,再び重石をかけるようにする。

5 サイレージの飼料的価値とその利用

 原料をサイロに詰込んでから数週間(長くても2ケ月以内に)を経過するとサイロ中の温度は外界の温度と大差なき程度に下降し,細菌数も減少し,略一定の種類の細菌群が存在することになり,酸含有量も略一定となる。この様な状態に達すれば,長期の保存に耐える。
 青草と異なる点は有機酸の含有で,低温サイレージは乳酸の他に多少の醋酸を含有している。この醋酸の含有については害作用は全然認められない。
 次にサイレージとした為に原料に比較して飼料価値の上に何等かの良好な影響があるかと言うに粗悪なるもので粗繊維の含有量多くそのままでは飼料的価値の甚だ低いものでもサイレージとすると粗繊維の消化率がよくなり,又有毒物の一部の解毒作用の可能性,霜或は雪害をうけた緑芻で家畜の嗜食せざるものを嗜好に適するものとすること,腐敗にかたむきたる根菜類の安全なる飼料化等があげられる。
 然しサイレージとした為に何か特別な栄養価値のある物質を生成するが如きことは認められていない。
 サイレージを利用しうるものは反芻獣馬に限らず豚,鶏においても原料の種類により充分利用することができる。

 (イ)家畜に対するサイレージの効果

 サイレージは家畜の消火器を調整し,之を常態に保ち,その結果皮膚の光沢を増し,毛髪の生成を良くし又肉質を柔軟ならしめる効果がある。之は生きた乳酸菌を含有し,ビタミン含量に富んでいるからである。
 サイレージを給与すれば1年中多汁質の飼料を給与することとなり,連続して畜産物を生産する様な家畜には特に効果が大きい。

 (ロ)給与上の注意

 サイレージを飽食せしめ家畜が之を食い残す様にしてはならぬ,又食い残しサイレージを長く放置すると腐敗し易いものである。
 サイレージは単用をさけ他の牧草,乾草と共に与えることが必要である。
 乳牛に対しては搾乳後サイレージを与える必要があり,搾乳前に与えると牛乳が汚染され易く,且つ臭気を持ち易いのである。
 又酸度の著しく高いサイレージを給与するときは炭酸石灰の如きもので中和することがあるが一般にはかかる特殊なサイレージの給与を避ける方が安全である。
 尚下痢をおこしている家畜に対してはこの給与を一時中止する。
 サイレージ単用による弊害は乳牛以外の家畜において強度にあらわれる。
 それは養分の不足によるか,酸過多によるか不明である。

 (ハ)給与量

  乳牛 3.0−4.0貫
  種牛 2.0−4.0
  犢牛 1.0−2.0
  肉牛 3.0−4.0
  役馬 1.5−2.5
  休息中の馬 1.5−2.0
  豚 200−400匁
  繁殖羊 200−300
  肥育羊 200−350
  兎 40−80
  鶏 10−15
 種牛には余り多量には用いられない,これは種付の力が弱る。
 馬は酸性飼料や多汁質飼料を好まないが少量なら差支えない,しかし酸の強いもの,カビの生えたものを与えぬこと。
 豚に対しては過量は慎むべきである。
 一般に各家畜共妊畜に対しては最も注意すべきで,ときに下痢を起す原因となり。ひいては流産を誘発する危険がある。

◎良好なるサイレージの各種酸の含量

 有機酸 2%以下を良とす
 乳酸 0.7−1.5%
 醋酸 0.3−0.5%
 酪酸 0%

◎サイレージの一般組成(消化率)

水分 粗蛋白 純蛋白 粗脂肪 粗繊維 可溶無窒素物 灰分
玉蜀黍 80.20% 2.1%(55.1) 1.3%(38.5) 0.6%(72.3) 6.5%(67.1) 9.3%(62.0) 1.30%
紫雲英 80.1 3.6 (61.0) 1.9 (31.2) 2.0 (72.2) 6.4 (65.6) 7.2 (63.7) 1.7
青刈大豆 70.2 5.7 (72.9) 3.5 (60.0) 1.7 (42.0) 6.6 (49.8) 13.3 (72.3) 2.7
甘藷蔓 80.7 2.8 (39.5) 2.0 (16.5) 1.2 (64.6) 5.0 (62.9) 7.1 (50.0) 3.2
大根葉 85.7 2.9 (75.9) 1.3 (45.7) 1.5 (87.1) 2.0 (85.2) 5.9 (82.6) 2
キク芋の茎葉 87.4 3.6 (49.2) 2.3 (21.7) 1.6 (67.2) 4.0 (23.9) 8.5 (72.4) 3.9