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巻頭言

秋日所感

惣津 律士

 冷涼な秋の訪れと共に恒例の畜産共進会シーズンとなった。昨年は中国連合共進会へ出品の関係もあって,関係者は文字通り不眠不休の努力を傾倒したものである。昨年の今日この頃を想うと感慨一入である。本年の郡共の出品成績を見ると,昨年よりも一段と資質が向上しているようであったが,果して県共に堂々たる逸物が揃って見られたのは和牛岡山の名声を中外に示して不動たらしめたものと思い,関係者の努力には心から敬服する次第である。この共進会で己の欠点を再認識して他の長所を教訓とし,将来のよりよい改良への指針を得ることこそ大切である。
 畜産課の補正予算も今回の県会で決定した。改良増殖の基幹をなす種牡畜対策費も財源難の折柄とは言え,昨年通り承認された事は結構な事であるが,折角設置した種牡牛が飼養管理の失宜に依って,毎年相当数廃用にせざるを得ない事は甚だ遺憾である。貴重な県費を費している種牡牛をもっともっと大切にして,有効に活用して戴き度いものである。一方種牡牛生産者側からは県に対して,高価に売却をのみ要望する事も再考を要する。今年中に新設される10ヵ所の家畜保健衛生所には夫々優秀なる種牡牛が繁養されるが,これ等に対しては地元畜産民の心からの御協力を切望して止まない。
 種畜場も夫々その特色を保持しながら拡充に努めて来た。場長,場員の努力は県民としては高く買って戴きたいものである。岡山種畜場は今般検定鶏舎,育雛舎を新設して,乳牛と共に県下養鶏家の要望に添いつつある。津山は諸施設を整備して近代的色彩を持った畜産農場としての能力を発揮しつつあり,就中作州地帯の有畜営農の進展に必要な研究業績は特筆に価する。千屋種畜場は蕃殖基礎牛の整備を了し,竹之谷蔓牛の助長と相伴って,名実共に中国の和牛の殿堂としての威容をととのえるに到った。畜産農民の方々はこの畜産の中枢機関に依って,充分なる受益を得られる事を確信して止まない。種畜場を整備充実してこそ,県下畜産の進展が期し得られるのである。この不変の原則を我々畜産関係者はこぞって,再認識して,種畜場のよりよき進展への助力をおしみなく与えねばならない。
 皮相上の観察のみに終始する事は厳につつしむべきことである事をこの際特に申上げて置く。