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ビタミンB12抗生物質等新飼料について

 米国の内陸地帯の如く,穀類,油粕等の植物性飼料には,豊富に恵まれているが,魚粕,肉屑等の動物性蛋白飼料には兎角欠乏し易い地域では,動物蛋白中に含まれていて動物の発育,成長,健康等に必要な因子について探求を続けその本態はビタミンB12であることをつきとめたが,ビタミンB12は,魚粕,肉屑中に含まれている他にある種の土壌菌がこれを産出することが分った。この土壌菌中には又抗生物質を分泌するものがあり,その抗生物質は著明な成長促進作用をもち,ビタミンB12の共存しているときは一層有効であるという極めて漸新な実験,研究が行われておる。又その一部はU・Sニュースや,畜産,養鶏雑誌等にも紹介されているので最近の資料に基いて,これら新しい飼料価値を有するものについてその組成,用途,効果等の概略を説明することにする。

一.ビタミンB12

 ビタミンB12は家畜,家禽の正常な発育成長のために又健全なる健康状態,生活の維持増進のための或いは孵化や換羽の機態を十分に発揮するために必要欠くべからざる栄養である。
 従来ビタミンBには主として魚粕,肉屑,肝臓等動物蛋白から供給されていたが,最近土壌中の微生物の醗酵生産物からもこれを得ることが出来るようになった。大家畜の如く,動物蛋白を採食せずに,正規の発育成長をとげているものはこの土壌微生物の分泌するビタミンB12を採草等より自然に採り入れていたものと思われる。
 動物蛋白中のビタミンB12含有量は,その飼料の種類,製造方法乾燥温度等の差異によりいろいろことなるが,一般的なものを示すに1ポンド当り魚粉0.05−0.17r,肉屑0.02−0.11r,フイシュ・ソルユブル0.04−0.48r,飼料用ビタミンB12,製品3.15−3.50rである。
 さてビタミンB12の必要量は親から受けついだB12の繰越量や飼料中の抗生物質の量(B12と抗生物質との関係は後述する)や,飼料中の動物蛋白含有量により種々ことなるが,飼料中に抗生物質及び動物質蛋白が含まれていない場合で飼料1トン当り鶏では5−12,豚では6−12rとなっている。
 このビタミンB12を動物蛋白で補給するために必要とする量について米国の家畜栄養権威者は次のものが適当であると述べている。
 初生雛に対して………飼料に80%の魚粉か5%の肝臓末か2%のフッシュソルユブルか16%の肉粉かを加える。
 動物質蛋白を含まない植物性飼料だけを鶏,豚に給した際,必要とするビタミンB12を補給するためには,飼料用ビタミンB12に製品を飼料t当り3−4ポンド給与すればよく抗生物質が用いられているときは,この量の4分の1位を減じてよく,さらに動物質蛋白が存在するときはなお,そのB12含有量に応じて減じてよいことになる。

二.抗生物質

 黴や細菌等の微生物は,彼等が成長している間に,他の微生物の成長を抑制防止するある代謝生産物を分泌する。この分泌物が抗生物質と呼ばれ病原菌の発育を防止して疾病の予防治療に応用されていることは周知の通りであり,この抗生物質含有薬剤のうち著明なものにペュシリン・テラマイシン・ストレプトマイシン・オーレオマイシン等がある。
 さて抗生物質は,豚,家禽に対して急速な成長を促進する作用があるが,その機能については未だ定説がない。多くの説のうちで,最も妥当性があると思われるものによると,抗生物質は動物の消化管内に棲息する有害微生物類即ち採取された飼料を浪費する微生物や,毒素を分泌して動物体の成長を遅延させる微生物を除去する作用があるといわれている。それ故に各種の抗生物質が動物に広く応用されることは極めて有意義なことであるが,抗生物質の成長促進作用には特異性がある。
 例えばストレプトマイシン・ペニシリンは鶏については有効であるが,豚については鶏ほどのよい結果を示さない。これに反してテラマイシン・オーレオマイシンは鶏,豚を通じて同じような効果があると認められている。
 抗生物質の栄養効果を大別すると,

1.家禽,豚の成長率を増加する。
2.飼料効果を増加する。
3.家禽,豚のビタミンB12,消費量を節減する。
4.飼料蛋白節約の効果がある。
5.家禽,豚の生活力を増進する。

 などになるが,ただ植物質だけの飼料に抗生物質を与えたときも成長促進作用があることは注目に値する。
 但し,この際でもビタミンB12の適当量を含むことが適切な効果をあげるために必要である。
 以下各項について実験効果をあげて少し説明を加えると,

1.成長率の増加

 イ.鶏

 実験によると,表の如く,テラマイシン・ペニシリン・オーレオマイシン,は相似た成長割合を示しているが,ストレプトマイシンは稍劣っている。然し他の実験によるとストレプトマイシン,添加量を増加すれば良い結果が得られるという。この実験によると死亡率が低下していることが注目される。

給与飼料

注1

体重(g) 成長率 死亡率
31日目 57日目 31日目 57日目
基礎資料 粗蛋白  23.8%
       動物蛋白 11 %
365 890 100 100 7
基礎資料+テラマイシン9g(飼料t当り) 400 1,020 110 115 2
基礎資料+ストレプトマイシン9g(飼料t当り) 390 940 107 105 5
基礎資料+ペニシリン9g(飼料t当り) 435 1,040 119 117 3
基礎資料+オーレオマイシン9g(飼料t当り) 408 1,035 110 116 3

注2

ビタミンB12製品,
飼料t当りポンド量
抗生物質 同左t当りg量 増加率(平均) 成長率
4週 10週 16週 4週 10週 16週
基礎飼料
(動物蛋白含有なし)
0 0 21 63 120 91 100 99
7 0 24 68 127 104 108 105
7 テラマイシン 8 27 70 136 27 111 112
7 ストレプトマイシン 8 27 69 132 117 110 109
7 ペニシリン 8 22 64 120 96 102 99
7 オーレオマイシン 8 28 69 136 121 110 112
註3(動物蛋白含有量6%) 0 0 23 63 121 100 100 100

給与飼料

注4

B12
(gamo1s)
テラマイシン
(gms1ton)
平均体重(鶏) 成長率
基礎飼料(粗蛋白23.8%
動物蛋白含有なし)
0 0 224 100
0 9 246 110
1 0 262 113
1 9 273 117
3 0 283 126
3 9 318 142
5 0 298 134
5 9 329 147
8 0 306 136
8 9 331 148
15 0 312 140
15 9 327 147

給与飼料

添加量(飼料t当りg数) 体重(鶏) 成長率
54日目 54日目
註5
蛋白含量16%(動物蛋白含有量6.8%)
  〃    〃
(テラマイシン)
(ストレプトマイシン)
16g 545 65
610 72
註6
  〃  19%(動物蛋白含有量8.0%)
 〃    〃
(テラマイシン)
(ストレプトマイシン)
16g 705 83
790 96
註7
  〃  21%(動物蛋白含有量8.8%)
 〃    〃
(テラマイシン)
(ストレプトマイシン)
16g 735 87
925 107
註8
  〃  24%(動物蛋白含有量10.0%)
 〃    〃
(テラマイシン)
(ストレプトマイシン)
16g 845 100
885 104

 ロ.豚

 実験によると(表参照)テラマイシン・ストレプトマイシン・オーレオマイシンを飼料t当り8g加えると成長を促進する。
 この他添加量をいろいろと変えた多くの実験によると,ストレプトマイシンは一定した成長を示さないので,テラマイシンの成長促進作用ほど効果的でない。この実験では,ペニシリンの成長率が悪い。これはペニシリンの抗生物質活力が,不安定のためであり活力の安定したペニシリンを与えると成長率を増すがテラマイシンに比すると効果が劣る。
 以上種々の抗生物質の成長促進効果を比較すると鶏,豚においてテラマイシンが最適であると思われる。
附 抗生物質の飼料添加適当量
 抗生物質の添加量を決定するに際しては,成長促進作用の点と価格の点の両面から見て最も適当なものが望ましい。成種添加量を増せば成長率もこれに伴って上昇することになるが多くの実験の結果によると,例えばテラマイシン添加量が飼料1t当り10g越えると成長率の上昇は緩漫になり,これに反して価格は増加量に応じて上るから頗る不経済である。
 それ故に10g程度が栄養上,飼料経済上から見て適当である

2.飼料効率の増加

 次の3・4の項にも関連があり又今まで来た所でも時々ふれたから説明を省略する。

3.ビタミンB12消費量の節減

 抗生物質はビタミンB12と共存しているとき効果を更に高めることは,前にも述べたが,次の実験結果は植物性飼料に漸増的にB12を添加した場合飼料1s当15ガンマの線まではB12の効果が漸次上昇し,成長率が上ることを示している。一方この各場合にテラマイシン9g(飼料1t当り)を加えるとB12の8ガンマの線が成長率の最高を示す。これはテラマイシンが動物に必須のビタミンB12必要量を8ガンマの線まで節約出来ることを可能にしておりこのため飼料費の節約が図られることになる。
 一般に抗生物質はビタミンB12を約25%節約するといわれる。

4.蛋白節約作用

 実験によると中等程度の蛋白(19%)を含量する飼料に抗生物質を添加すると,蛋白含有量21%の飼料よりも成長率が大であるという興味ある結果が表われている,又同じ蛋白含有量のものでも抗生物質を添加したものと,しないものとでは,成長率が異なる。この結果をよく観察すると,中等程度の蛋白含有量飼料に抗生物質を添加すると,それよりも蛋白含有量の多い抗生物質非添加飼料以上の栄養効果をもたらすことは,換言すれば,蛋白節約になり,従って飼料費を軽減する可能性があることを示すと共に,飼料中の蛋白不足を補足する有力な手段となり得る。

5.生活力の増進

 以上述べた通り抗生物質は蛋白物質の利用度を向上し,価値を高める点より当然飼料消化吸収能率を増進して生活力を旺盛にすることになる。

三.飼料用ビタミンB12抗生物質含有製品について

 米国では最近まで,動物の成長,発育を促進する因子即ち,ビタミンB12を主成分とし,この他未知の因子を含んだものに対し,A・P・F(animal Pnetein Factor)なる用語を用いておりA・P・F含有製品としていろいろのものが市場に出ていたが,その製品の成分,効果,用途等についてかなり紛糾した議論があり,そのあるものは,ビタミンB12のみを含んでおり,又他のものは,ビタミンB12のほか少量の抗生物質残渣をも含んではいるが,ラベルにその含有量を明記してなく,実験の結果と実際の効果にはかなりの差がある等の混乱が起ったため,1951年1月1日以降はA・P・Fなる名称を廃止してビタミンB12飼料と抗生物質飼料とに分けて次の定義を説定した。即ち,ビタミン飼料とは,飼料1ポンド当り最少1.5ミリグラムのビタミンB12を含む飼料のこと,又抗生物質飼料とは1ポンド当り最少1.0gの単純の又は結合した成長促進の特質をもった抗生物質を含み家畜の栄養上にだけ用いられること。並びに飼料1t当り50g以上加えてはならないことを定義し含有量を夫々ラベルに明記することを規定している。
 さて米国で使われている飼料用ビタミンB12製品は,テラマイシン・ストレプトマイシン等の抽出醗酵産物から製造され,規格以上のビタミンB12を含有すると共に少量(ある製品でポンド当り0.3−0.5g)ではあるが残渣抗生物質を持っているので(この場合抗生物質含量が規格以下であるので抗生物質飼料とはいえない)抗生物質の特性をも兼ねている。
 飼料用抗生物質は,医薬用抗生物質製造の際の醗酵用肉汁から生産される粗製品である製品では1ポンド当り結晶テラマイシンの5gに相当する粗製テラマイシンを含んでいる。
 両製品とも微生物学的分析や検定試験等を行ってそのビタミンB12及び抗生物質の活力の安定性を確保している。
 これら製品の給与試験の結果を発表されているが余りに煩雑に亘る嫌いがあるので他日機会を見て発表することにしたい。
 以上で大体の説明を終ることにするが,米国ではこれら新飼料が実際面に広く利用され,効果をあげている事実に鑑み,我国に於ても現在の飼料事情から見てこれら新飼料を利用することにより蛋白資源の補足或いは利用度の向上等に積極的な飼料資源の活用を図ることは時宜に適している許りでなく他面成長期間の短縮,蛋白飼料の節減等による飼料費の節約,飼養効率の増進等飼養経済上有利であるという点は今後研究すべき重要問題であろう。

註 註を附した飼料の配合割合を表す(単位%)

註1 註2 註3 註4 註5 註6 註7 註8
黄色玉蜀黍 42 23.8 27.5 36.4 60.3 52.8 47.96 40.16
小麦
燕麦 8 15 15 8 8 8 8 8
5 20 20 5 5 5 5 5
アルコールファミール 3 5 5 3 3 3 3 3
大豆粕 20 25 17.3 35 4 10.7 15 22
グルーテンミール 6 6 6 6 6 6
亜麻仁粕 5
魚粕 7 4 3.4 4 4.4 5
肉屑 4 2 3.4 4 4.4 5
肝臓粉末 2
ドライホエ 1 2 2 2 2 2
醸造粕 1
ビタミン無機質等 4 62 6.2 4.6 4.84 4.44 4.24 3.84