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第4回目の日本1番ヒット

農業改良課 中川技師

 畜力利用について1番乗りを3回も続けた岡山県が亦々ヒットをやってのけたと言って国体関係のことを考えるのは早過ぎる。
 岡山県は畜力利用ではいつでも1番乗りをしている。
  その1回は明治初期に(18年頃と記憶している)競犁会,第2回目は傘型畜力動機を明治35年に邑久郡で考案されている,第3回は畜力利用水田除草機を県立農事試験場の塩見技師によって大正10年に創案されて,現在はその実施面積が全国で7万8千余町歩の実施を見るという基礎をつくっている。この岡山県が畜力利用での第4回目のヒットは畜力利用の一貫作業競演という事である。去る10月12日津山市の工業高等学校校庭と下河原部落での麦作播種畜力利用一貫作業競演会と畜力利用農機具実演展示会の開催で,主催者は美作農機具研究会,県指導農協連,岡山県,後援は津山市,津山市商工会議所,山陽新聞社,津山朝日新聞社であった。
 麦播種畜力利用一貫作業競演会というのであるから一般の競技会とか,競犁会というものとは大変な性格的にも違っているのであって,稲刈跡を犁で畦立耕起する事を競うというような単純なものではなく,水稲刈跡に,麦の播種,覆土迄を畜力の一貫作業でやるのに,出場者の従来使っている農機具で全作業をやるもので,観覧者に参考に供し研究させようとする企画であって,今迄に何れの地でも企画された事のないものであって,これ丈でも変わっているのに,出場者各自の競演田にその人の経営内容,農業従事者,家畜の種類別頭数を掲示して置くと同時に,主催者側はオート三輪にマイクと拡声器を据えつけて,出技者の番号,経営内容等を参集の人々に放送する外,農業試験場農機具部長築山技師,農業改良課,中川技師の両審査係官から指導又は観覧の参考事項を随時放送するという前例のない競演会で,この結果附近の町村から,参集の農業関係者千数百名の人々に非常な感銘と,農業経営上に導入すべき農機具の選択という点について資する処の大なるものを与えつつ競演が進められた。終ると各競演者は各自の行なった作業,各自が何故半耕法をやったか,全耕法によったか,犁を使わないでカルチベーター耕法によったか,この作業の後の中耕除草作業はどんな方法によるか,或いは経営方針自家労働力の作業能率化等について放送するという前代未聞の競演会であった。これによって観衆は農機具の選択についても,実際に自分達と同じ農家が使っているのを目で見たのであるからその効果は大なるものがあった。
 競演者に対しては主催者と協議の結果等賞をつけないで,全員に賞状と記念品を与えることとして幕を閉じたのであるが,当日の観衆の中に隣県呉市からわざわざ来津して観覧せられた事を見ても如何に効果的であったかが判る。
 尚この競演田の1人当面積は2畝歩であって標準所要時間は2時間と決めてあったが,早い人は1時間10分,遅い人は2時間半で,大体指示時間内で終っていた。
 競演者10名を郡別に分けると,苫田郡3名,津山市3名,勝田郡2名,久米郡2名で年令別にすると,30才から35才迄が4名,36才から40才迄が4名,42才1名,54才1名で,何れも経営主であって,経営面積別にすると,1町歩以上1町5段未満が6名,1町5段以上1町9段未満が4名であって,農業従事者は4名が2,3名が4,2名が2,1名が1で家畜頭数は牛3頭が1名,2頭が4名,1頭が5名で,使用農機具は多種多様で,犁,翼状碎土機,カルチベーター,畜力播種機1条及2条用溝浚機,溝切機であって,犁は総て2段耕犁で,銘柄は高北,磯野,深見,日の本の一流メーカーのものであったが,其の取扱いについては充分に習熟していない出場者の方が多かった,特にメーカーの宣伝に利用された感のあった事は遺憾であった。
 能率の合理化の意味から耕具と同時に装具にも注意しなければならないのであるが,それにも拘らず鞍褥の破損及不合理(牛の体に合致しないもの)が殆んどで,稍良好のもの2,良好のもの1で,鞍骨とその装着については殆んどが不合理で,特に牽引点については高過ぎて,牛の無駄の力の損失をさせている事は今迄に此のような催しや指導がなく,一般の注意も足りなかったので,このような事になったのであろうが,少なくとも各郡からの代表選出者としては惜しい気がする。
 手綱について殆んど手綱が引綱程も太く,操作上不利を招いているし,綱通しの位置が高過ぎる為に作業中は勿論,旋回部に於て時間を要している。良好な状態でも作業時間に対し旋回時間が1,2割要すると言われているので,早急の改善を切望する。
 犁の操法についても殆んどが在来の前屈姿勢であった。正規に犁を持つ者は2名位で他は片手で持って居たり,単用犁以上に立てて使う旧慣行法でやっている在来の扱い方,いわゆる我流の扱い方をしている為に,作業上の疲労と良い作業をやり難い事に気がつかないようである。犁の調節についても余り習熟していない者が多く,心割りも耡込みも同じ調節でやっているようでは2段耕犁を使うには,程遠い技術程度といわざるうを得ない。今後一層の研究と指導の必要を感じた。
 牛の飼養管理の点については特に言う程のことはないが,手入れはまぐさに半量に等しいと言われている程のものであるから,農閑期にだけでも刷毛をかけてやって貰い度い。
 調教について今少し事物調教が必要であり,扶助用語を殆んど用いなかったが,標準扶助用語の使用を期せられ度い。