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飼料作物に関する調査試験概要

津山畜産農場

一.はしがき

 家畜を飼って最大の収益を挙げるには色々な条件があるが支出の内最も多額を占める飼料費の節約を図ることが先ず何より必要である。殊に最近の如く飼料高の時においては尚更でありこれがためには出来得る限り粗飼料の利用を図ることが望ましい。か様にすれば家畜も健康であり又飼料費も安価で済む訳である。当場においてはこの自給飼料の生産について多少でも農家の参考にしたいと思って昭和25年秋作から26年夏作にかけて飼料作物に関する調査試験を行ったのでこれをここに紹介したい。当場は試験場でないから試験を本体にすることは諸種の事情から出来ないので当場の家畜に給与するため栽培するかたわらこの調査試験を行った訳であるからその積りで御読み願いたい。

二.調査試験事項

 この期に行った調査試験事項は次の4つである。

(一)青刈燕麦の収穫期に関する調査試験

(二)飼料作物の輪作栽培に関する調査試験

 イ 飼料作物のみの場合
 ロ 飼料作物と食糧作物との場合

(三)荳科牧草の栽培に関する調査試験

(四)湿地における青刈飼料作物の栽培に関する調査試験

 次にこの各々についてその概要を述べることにする。

三.青刈燕麦の収穫期に関する調査試験

(一)目的

 冬期青刈飼料の不足の時期にこれを自給することとその第1回刈取収穫と第2回刈取収穫との関係を調査するためである。

(二)供用した作物

 燕麦

(三)作付した土地の土質

 粘土

(四)供用面積

 1区につき15坪

(五)播種期

 昭和25年9月30日

(六)播種量

 反当7升

(七)肥料(反当)

 元肥 厩肥 300貫
 追肥 〃  200貫
(第1回刈取後株上に施用した)

(八)収穫成績

区分 第1回刈取 第2回刈取 総計反
当収量
適要
収穫期日 反当収量 一日生産量 草丈 収穫期日 反当収量 一日生産量 草丈
1 S25.12.1 205貫 3貫423匁 1.7尺 S26.5.1 309貫 2貫040匁 3.0尺 514貫 第1回刈取後欠損株1.5%
2 S25.12.10 302貫 4貫311匁 2.1尺 S26.5.1 210貫 1貫500匁 3.0尺 512貫 2.0%
3 S25.12.30 351貫 4貫390匁 2.2尺 S26.5.1 135貫 1貫030匁 2.5尺 486貫 3.5%
4 S25.12.31 408貫 4貫420匁 2.3尺 S26.5.1 86貫 0貫710匁 2.2尺 494貫 5.5%
5 S26.1.11 390貫 3貫900匁 2.1尺 S26.5.1 121貫 1貫090匁 2.2尺 511貫 3.5%
6 S26.1.31 255貫 2貫120匁 2.1尺 S26.5.1 240貫 2貫600匁 2.6尺 495貫 2.0%第1回刈取後葉先3寸枯死
7 S26.2.20 224貫 1貫600匁 2.0尺 S26.5.1 261貫 4貫010匁 2.0尺 485貫 1.0%第1回刈取後葉先7寸枯死
8 S26.3.20 333貫 1貫940匁 1.9尺 S26.5.1 120貫 2貫000匁 1.9尺 453貫
9 S26.4.26 690貫 3貫320匁 2.9尺 1回刈り

(九)考察

 以上の成績によって考察すれば次の通りである。

 イ.第1回刈において収量の最高は12月末の刈取であるからその前後において青刈飼料として利用すれば良好である。
 ロ.第1回刈取と第2回刈取においてその平均収穫量は第1回刈取を何時行っても略同じであるから冬期間の青刈飼料として良好である。
 ハ.これは単に1年の試験であるからこの成績をもって直ちに断定することはできず又気候等に支配されることが多いので今後試験を続行しなければならない。

四.飼料作物の輪作栽培に関する調査試験

(一)飼料作物のみの場合

 イ 栽培経過
 ロ 考察上記の栽培状況から結果を考察すると次の如くである。

 第1作においては,

 A.4月上旬頃迄は禾本科の成育が良好であって荳科は不良であったが4月中旬降雨が多かったため荳科の成育が良好となった。
 B.燕麦と混播したものは荳科が繁茂したため燕麦の茎稈弱くなり多少倒伏した。収穫期において燕麦は衰弱した。
区分 作物の種別 播種期 播種量 播種法 肥料 収穫期 生育期間 反当収穫量 反当1日
生育量
厩肥 過石 硫安
第1作 燕麦 ザードウィッケン S25.10.9 7升(70% 30%) 散播 400貫 4貫 2貫 S26.4.30 203日 2.750kgm 13.550kgm
第2作 青刈大豆 S26.5.3 8升 条播 500貫 S26.7.26 85日 2.809kgm 33.050kgm
第3作 青刈玉蜀黍 S26.8.4 8升 条播 300貫 S26.10.11 68日 2.153kgm 31.660kgm
第1作 ライ麦 ザードウィッケン S25.10.9 7升(70% 30%) 散播 400貫 4貫 2貫 S26.4.30 203日 2.655kgm 13.080kgm
第2作 青刈玉蜀黍 S26.5.3 8升 条播 500貫 S26.8.2 92日 3.955kgm 43.000kgm
第3作 青刈玉蜀黍 S26.8.4 8升 条播 300貫 S26.10.11 68日 2.063kgm 30.340kgm
 C.ライ麦との混播はライ麦の茎稈が強健なるため倒伏せず良好であった収穫期の状況は共に良好であった。後作の関係上早刈し又多少土地不良(畦ぎわ)のため燕麦との混播より収量は減少した。
 D.禾本科と荳科の種子の混合割合を7〜3としたのを8〜2又は8.5〜1.5とする方が良好と思われる。
 第3作においては
 E.播種後降雨が少なかったため発芽歩合悪く引続き旱天にて生育不良で減収した。

(二)食用作物との組合せの場合

(イ)栽培経過(下表参照)

 ロ.考察
 A.第1作第2作においては冬期間の湿気多量のため燕麦及び小麦の成育が不良であったため特に小麦は減収した。
 B.第3作において青刈玉蜀黍,青刈大豆の混作は特に青刈飼料として良好な成育をなした。後作には青刈玉蜀黍を作付した。
 C.第4作において甘藷及び青刈玉蜀黍は旱天続きのため成育が不良であった。
 D.青刈燕麦を4尺に播種しその中間小麦を播種し燕麦を青刈で収穫し直ちに小麦に土寄を行い甘藷の定植準備をする。その時厩肥反当300貫を施用した。小麦の中間にそれぞれ第2作の青刈飼料の播種を行った。
区分 作物種別 播種期 播種量 播種法 肥料 収穫期 生育期間 反当収量 反当1日
生育量
摘要
厩肥 過石 硫安 人糞尿
第1作 青刈燕麦 S25.9.30 6升 条播 300貫(元)
200貫(追)
3貫(追) S26.4.26 208日 1.294kgm 6.220kgm
第2作 小麦 S25.11.8 3升 条播 300貫(元) 6貫(元) 3貫(元) 150貫(追) S26.6.11 213日 180kgm
第3作 青刈大豆 S26.5.7 7升 条播 S26.8.2 88日 1.410kgm 16.000kgm
青刈玉蜀黍 S26.5.7 8升 条播 S26.8.2 88日 3.240kgm 36.800kgm
青刈玉蜀黍
青刈大豆
S26.5.7 8升 条播 300貫(元) S26.8.2 88日 5.670kgm 64.400kgm 混作甘藷なし
第4作 甘藷 S26.7.10 300貫(元) S26.10.26 108日 芋1.007kgm
蔓1.007kgm
9.824kgm
9.824kgm
青刈玉蜀黍 S26.8.3 8升 条播 400貫(元) S26.10.10 68日 2.060kgm 30.300kgm

五.荳科牧草の栽培に関する調査試験

(一)目的

 近来草生改良用として「クロバー」等の荳科牧草が使用されるが同じ荳科牧草でも色々種類があり夫々特点欠点を持っている様であるが何れが適当であるか,又は如何様なところに適するか或いは栽培法は如何したが適当であるか等の点について研究する。

(二)供用品種

 イ.ラジノクロバー
 ロ.アルサイクロバー
 ハ.アルファルファ
 ニ.ブロードリーフバーブフウッドトレフオイル

(三)圃場の状況

 イ.面積(各区共)秋蒔2.5坪
          春蒔5.0坪
 ロ.土性土質酸性,第3紀層埴壌土
 ハ.区画 秋蒔 4尺畦
      春蒔 8尺畦

(四)耕作状況

 イ.秋蒔 4尺畦,2条,条播
区分 単位播種量 播種量 発芽年月日 肥料 摘要
種別 単位当施用量 施用量 施用年月日
S25.9.21 4Lb 1/3Lb S25.9.29 厩肥 400貫 17.500貫 S25.9.15 播種溝に施用
石灰 30貫 1.250貫 S25.915
硫安 3貫 125貫 S25.9.12
過石 6貫 250貫 S25.9.12
硫加 3貫 125貫 S25.9.12
木灰 21貫 175貫 S25.10.23
人糞尿 6石 5斗 S26.4.20
 ロ.春蒔 8尺畦,5条,条播
播種年月日 単位播種量 播種量 発芽年月日 肥料 摘要
種別 単位当施用量 施用量 施用年月日
S26.4.5 4Lb 2/3Lb S26.4.13 厩肥 600〆 100.000〆 S26.4.1 この上に炭酸
カルシウムを
反当40貫の
合割で施用
石灰 50〆 8.500〆
硫安 3〆 250〆 S26.4.5
過石 6〆 500〆
硫加 3〆 250〆
人糞尿 6石 1石 S26.4.23 6倍希釈
6石 1石 S26.5.7 6倍希釈

(五)育成の概要

 イ.秋播
 A.気象―播種後5日目に降雨があり発芽は各種類とも良好であった。冬期間多湿,排水不良で霜柱が多かった。
 B.土壌―酸土試験は実施しなかったが酸性と認められる。有機質に欠乏している。
 C.整地―前作は甘藷で厩肥及び石厩を施して耕起し4尺畦を作り充分に整地し2条の播種溝を作った。
 D.栽培法―2条の播種溝に元肥を施して播種し薄く覆土した。発芽後除草を行って中耕し排水に努めた。
 E.考察―9月21日に播種し9月25日に発芽を開始し10月1日に全部発芽した。発芽は良好であったが11月中旬頃寒気と湿気のため成育不良となった。春期霜柱により欠損株を生じ特に「アルファルファ」は不良で成育しなかった。「ラジノクロバー」は生育が良好であり「アルサイクロバー」は50%程度残存した。これらの結果から考えると秋蒔は圃場の排水に留意することが必要であると思われる。
 ロ.春播
 A.気象―播種の翌日降雨があり発芽は各種共良好であった。次第に暖かくなり初期に降雨が多かったが排水に努めたため成育良好であった。
 B.土壌―秋蒔に同じ
 C.整地―前作は甘藷で厩肥を施して充分に整地し8尺の畦を作り5条の播種溝を作った。
 D.栽培法―5条の播種溝に元肥を施して播種し薄く覆土した。発芽後中耕除草を行い追肥として6倍稀釈の人糞尿を2回施用した。第1回刈取後中耕を行い厩肥を反当300貫の割合で畦の中間に施用した。
 E.考察―秋蒔に比し成育良好である酸性土と認められるため炭酸カルシュームを使用したが使用しなかったところと成育は変らなかった。
 F.春蒔の収穫成績表
 △雑草は「ヒメシバ」「アレチノギク」「ツユクサ」「イヌタデ」「エノコログサ」等であった。
 △「ラジノクロバー」は葡萄性で質はやや不良。
 △「アルサイクロバー」は分枝が良好で地上によく繁茂し雑草の生えることが少ない。
 △「ブロードリーフウッドトレフオイル」は茎葉共に細柔である。特に他の荳科牧草に比し茎が木質化することがない。(当場の畦畔に多少これの野生しているものがある)
 △1番刈後旱天続きで生育が不良であった。「クロバー」は2番刈が出来なかった。
区分 第1回刈取 第2回刈取
草丈 反当収量 雑草混入 収穫月日 刈取時
の成育
草丈 反当収量 雑草混入 収穫月日 刈取時
の成育
ラジノクローバー 40cm 5.400kgm 41% 7.16 開花終期
アルファルファ 97cm 3.300kgm 42% 64cm 1.260kgm 30% 9.4 開花終期
アルサイククローバー 97cm 4.230kgm 16% 開花期
ブロードリーフバーフ
フゥッドトレフオイル
70cm 4.560kgm 32% 43cm 1.170kgm 20% 9.4 開花終期
 △「アルファルファ」は深根のため今年の如き旱天でも成育が良好であった。採種には1番刈を少し早く行い2番刈で行えば良好と認められる。
 △今年は色々の事情で充分な成績を挙げることが出来なかったので引続き試験を行う計画である。

六.湿地における青刈飼料作物の栽培に関する調査試験

(一)目的

 他の作物の出来ない湿地を利用してこれに適する飼料作物を栽培し土地の活用と自給飼料の増産を図る。

(二)供試作物

 稗4種……改良稗,松崎稗,北満稗,早生白稗

(三)用地 湿田

(四)区画 10坪(4尺畦)

(五)栽培法

 イ.耕起…5月17日荒打鍬で掘返した。
 ロ.整地…4尺畦を作り鍬で稲苗代の如く充分整地した。
 ハ.肥料…元肥として厩肥300貫を使用した。追肥は使用せず。
 ニ.播種
  A.方法 撒播
  B.播種量 反当3升
  C.播種期 5月23日
 ホ.収穫期 出穂期

(六)収量

区分 草丈 反当収量 刈取期 生育日数 反当1日
生産量
最長 最短 平均
改良桿 176cm 115cm 145cm 6.300kgm 8月4日 72日 87.500kgm
松崎稗 160cm 100cm 130cm 5.700kgm 8月4日 72日 79.170kgm
北満稗 109cm 61cm 85cm 3.600kgm 7月21日 58日 62.170kgm
早生白稗 136cm 64cm 100cm 3.900kgm 7月21日 58日 67.240kgm

(七)考察

 水稲の出来ない様な湿地では飼料作物として稗を栽培すれば良好な成績を挙げることが作出来る。