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巻頭言

私達は草を愛しましょう

惣津 律士

 戸外は寒風ふきすさび,北部には相当の降雪あり,春遠きを思わしめるが,家畜は黙々と生長し,畜産農民の各位は真剣に斯業の進展に努力されて居る。この貴い姿に対して何んとかして酬い度いものと,来年度予算編成期の昨今,私達畜産課員は必至の敢闘をつづけて居る。
 一年一年と祖国は生長して行く。この中に於て畜産は大きい試練を経ながら年と共に飛躍して来て居る。幸いなことに畜産が社会全般に相当程度認識されて来た事は喜ばしい事である。併し私共畜産人はまだまだ苦しんで,より明るい明日の畜産を建設すべく努力しなければならない。
 昨今飼料は予想外に高騰を示して居るが畜産物の価格は案外低調である。これが対策については本省に於ても充分研究されて居ることと思うが,人間の食糧に比べて飼料が一般に認識されていない事はなさけない事である。
 飼料の解決なくして,家畜の改良も増殖もあったものではない。私は飼料業界の方々が想いを新たにして,畜産農民への心からのサービスをして戴く事を切望して止まないものである。
 一方畜産農民は所要飼料の自給度を高めるために懸命の努力を拂って戴き度いのである。購入飼料への依存度の高い程,経営は不安定となる事は明々白々でありながら,と角自給飼料の増産は等閑に附せられ勝である。
 特に飼料作物はもっともっとふえねばならない。更に畜産の宝庫たる牧野の草資源の効率的利用が考えられる。
 本省畜産局の山本有畜営農課長は本年は草地の改良を重要問題として強く取り上げると決意を述べられて居る。これはけだし,もっともな事であり,世界の畜産界に於てもこれは特に研究され,本年はアメリカで萬国草地会議が開催される事となって居る。
 この事は本県でも積極的に施策されねばならない重要課題であろう。
 草,草,草は家畜の主要食糧である。私共はこれを一般作物とみなして,培養しなければならない。草を可愛がって育て上げる地帯に必ず立派な畜産が成立し得る事は数多い事例が証明して居る。草への愛着,草の改良,この冬の間に私共畜産人は堀りさげて研究し置くべき問題ではなかろうか。