津山畜産農場

　客年12月18日津山市小田中家畜市場において第１回北部畜産共進会が開催された。南部においては倉敷市において12月19，20両日，第２回岡山県肉牛共進会が開催されることになっておりこれと同時に緬羊，山羊，豚の中家畜共進会があることになったのでこれと対称して北部においては緬羊，山羊，馬の３種について開催することになったのである。由来北部地方のみのか様な共進会は初めてであり諸種の都合からその開催が懸念されていたが作州各郡畜連を始め関係者の絶大な御協力によって予定以上の出品があり，来場者も相当の数により予期の成績を収め得たことは喜ばしいであった。
　次にその概況を御知らせすることにしたい。

△当日の出品は馬14頭，緬羊22頭，山羊23頭であった。
△審査は馬において花尾，神野，石原，緬羊において小島，秋葉，山羊において蔵知，檜尾の各技師が夫々担当し筆者が審査長を勤めた。
△次に当日の審査報告を記載して参考に供する。

一．馬の部

○馬の出品は14頭で阿哲郡４頭，苫田郡７頭，勝田郡３頭であったが，本県一流の馬産地である真庭郡から出品がなかったことは残念であった。年令別に見れば２才４頭，３才１頭，４才６頭，５才２頭６才１頭であった。審査は農林省の馬の生産改良方針により実施し，県内産馬に重点をおいた。

○最近の馬産熱の高揚に伴って全体的に見て改善の跡が認められ，中国地方の産業適格馬としての方針に合致する体型であり，性質温順運動性に富み歩様確実であった。ただ中に農用役馬体型に合致せず大に過ぎるもの又は軽きに失するものが認められた。上体がよくて下肢のこれに伴わないもの，飛節不良，管の発育不良のものも見受けられた。

○次に９号の馬は対称がよく品位に富み地低で体積に富み特に肢蹄が堅牢で農用適格馬として優良なものと認めたが，年令に比し体高が低い感があった。然し他と比較してこれを本日の出品中の最優位とした。

○将来は以上申上げた諸点に留意されて飼養と運動と相俟って優良な馬の増産に努められんことを切望する。

二．緬羊の部

○緬羊の出品は22頭で真庭郡１頭，苫田郡10頭，勝田郡５頭，英田郡１頭久米郡５頭であり，産地別に見ると福島県９頭，山形県産５頭，県内産８頭であった。審査は日本緬羊登録協会の審査標準によって行った。

○一般的に見ると概して優秀なものが尠かった。運動不足のため胴伸の不良なもの，繋の弱いもの，蹄の過長のものが見受けられた。又羊毛中に塵あいの多いもの，雌にして毛の細いものがあった。

○４号の緬羊は毛の分布，削蹄，飼養管理共に良好であったが，体積に乏しく胴伸の稍々不足であることが残念な点であるが，他と比較して優良と認めたので本日の出品中最優位とした。

○将来は仔羊には良質の粗飼料を充分に給与して運動を行い胴伸良好，骨量に富む緬羊の生産に努められたい。又仔緬羊には絶対に種付を行わず，やむを得ず行う場合は30�s以上のものに限り行う様にされたい。又本日の出品者中には緬羊の保定方法が拙劣な向が多かったので将来研究されたい。

三．山羊の部

○山羊の出品は23頭で真庭郡１頭，苫田郡５頭，勝田郡９頭，英田郡３頭，久米郡５頭で産地別に見れば県内産17頭，長野県産４頭，群馬県産２頭であった。審査は日本山羊登録協会の審査標準によって行った。

○出品頭数の割合に優秀なものが尠く，体積に乏しいものが多かった。中には乳量のみを主体に飼育されている人も見受けたがこれも前記の審査標準によって審査した。一般的に後?が貧弱であり特に肢蹄が不良で削蹄の技術が不充分であった。乳器の貧弱なものが多く搾乳技術不充分のため乳房を痛めているものが多い。資質も不良なものが多く品位に乏しい。被毛の粗剛なものがあり，長尾有角のものもあった。

○14号の山羊は真庭郡の出品であって今日の出品中においては血統，品位，体型資質共によく，特に乳器の発育がよい。欠点としては稍々小格で背線不良且蹄の手入もよくないが，一般的に欠点の尠いものであるから他と比較し本日これを最優位とした訳である。

○美作地方は山羊の飼育頭数が多いので優良な種山羊を導入して改良に努める必要があり，又登録も実施されているので今少し血統を明確にすべきである交配の時期が早いため発育が悪く体積に乏しいものが多いので，緬羊と同様早期種付は注意されたい。削蹄の技術を一層習得して体型を崩さぬ様にし，又搾乳技術の向上を図り，乳房の保全をなす様にしなければならない。長尾有角のものはなるべく避ける方がよい。
　審査は審査員諸君と共に慎重を期し馬において１等賞１点，２等賞３点，３等賞６点，４等賞４点，緬羊において１等賞１点，2等賞４点，３等賞８点，４等賞９点，山羊において１等賞１点，２等賞３点，３等賞６点，４等賞13点を選抜擬賞した。