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畜産ニュース

アンゴラについて

 アンゴラ兎の飼育頭数は昭和26年の2月1日の調査より推定すると,約25万であって現在では少くとも30万と推定され,兎毛も年間の推定量20万乃至25万ポンドを生産するようになり,漸く産業として軌道に乗った感が深いのである。
 アンゴラ兎の売買も一時憂慮された種売り時代から全く脱脚し,現在は殆ど改良用,血液更新用として種兎が動く以外には多量の移動が少なくなった。これはアンゴラの普及速度の鈍ったことも一因ではあるが,本来の使命たる採毛養兎経営に入ったための現象と見るべきであろう。
 兎毛の経済的動きはアンゴラの盛衰に最も大きな影響を及すものであるが,昨年暮れから本年3月迄は海外引合が各国から一時に殺到して,異常な活況を呈したことは衆知の事実である。しかしその後は契約した輸出量も順次積出を完了し,引合も例年のことながら夏に向ったため少くなり,一応常態に復帰したのである。この間を数的にみれば,本年の1月から6月までの輸出数量は7万ポンドを超えており,これを昨年の同期2万2000ポンドに比較すると3倍強にあたり,戦後最高の輸出量であると言われた昨年1ヶ年間の輸出量を本年上半期で殆ど輸出してしまった形になるのである。
 上のような事情から本年上半期は非常に売行きがよく,生産者も追々強気になりつつあったようである。しかるに7月以降に至って引合も以前ほど活発でなくなり(例年夏期の引合は少い)業者も競って買うことを止めて専ら正常取引に復しつつあったのである。丁度この頃関西では堀抜帽子株式会社が会社内部の事情に依って兎毛集荷を打切り,東京では全日本アンゴラ農業協同組合が経済関係の清算をせねばならなくなり,再建整備のため一時代金の支払いを延期した事が,時期的にも全く偶然に一致したため,飼育者には相当不安を与え,地方の末端集毛業者にも疑念を生ぜしめたようであった。特に中国地方からはこれに関した問合せも多く,事実奨励指導の上からも見逃し得ぬ事態を生じたようである。また之に乗じて集毛業者はより以上庭先価格を引下げている傾向も全国にみられ飼育者はあたかも輸出が将来見込なくなったような錯覚をあたえられていたようである。このように一会社或は一組合が集毛を中止したに過ぎない事がかくも大きな動揺を来すことは,アンゴラ産業そのものの規模の小さいことと,生産者の販売組織の弱さを示しているものであるが,この動揺の原因となった堀抜帽子と全アンの買付中止は全くその経営者自体の個人的都合によったもので,アンゴラ兎毛そのものの輸出不振とか需要の行詰りから来た買付中止ではなかったので,この点特に明らかにしたい。
 7月以降の輸出状況も例年の通り時期的に非常に少くなっているが,9月までには1万ポンド以上を積出して居り,これも前年同期に比較すればわずかながら上廻っているのである。以上昨年から現在までの経緯であるが,アンゴラはもう既に一時的な興味による愛玩動物でもなければ,種売り本位の投機的動物でもないのである。兎毛の価値によって裏付された立派な家畜なのでる。
 従うて過去のように一朝にして数倍の高値を呼んだり,一夕にして無価値に等しくなったりするようなことはなくなり兎毛価格そのものが殆ど一般物価の動きに近くなり,高低の差も次第に少くなって来つつあるのである。
 この点はよく飼育者にも理解してもらって,変則的な一時的現象に一喜一憂することなく,ジックリと生産に進んでもらいたいものと考へている。
 兎毛の販売も飼育者自体が自覚してコストを割るような値段だったら,換金を一時延期して貯蔵すれば良いのである。幸にも兎毛は簡単に貯蔵出来るし,飼育者各々であれば決して大きな量でも金額でもないのである。そして引合の多い時期まで待てば飼育者自身も,また自己資金の少い集毛業者にも共に良い方策ではなからうか。
今回フランスのアンゴラ界をみて帰朝された岡崎種畜牧場の工藤場長の話によれば,我が国の兎毛の価格はフランスの価格に比して相当安いようである。これは質の問題等もあるから簡単に論ずることは出来ないが,いずれにしても輸出のシーズンを目前に控え,再び昨年3月のように生産量を超過した引合に慌てふためき,またこれに対して無理を承知で契約をすると言ったようなことは繰返したくないものである。
 飼育者,集毛業者,輸出業者が共に自覚すると同時に,正しい認識を必要とすることである。