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畜産ニュース

兎毛皮について

 本年も愈々シーズン入りをするわけで活発な動きを期待するところであるが,先ず昨年からの情勢を分析して本年の動向を探ってみなければならない。
 第1に本年の兎毛及生産数量は相当減少するものと考えられる。これは兎毛皮の絶対価格が小さいため,飼育者にとっては魅力を失い,生産意欲が著しく低下していることが最も大きな根本原因ではあろうが,その他に本年の特殊事情としても次の様なことが考えられる。
 昨年の秋から暮にかけて兎毛及兎肉共に比較的価格がよかったために,生産を超えた屠殺が行はれ越冬種兎が激減したこと。春の繁殖期には兎毛皮相場が漸落の気配にあったため,積極的増殖を行はなかったこと。
 その上に兎肉の需要が春夏秋と,ずっと引続き多かったので節外屠殺が例年より非常に多かったなどである。
 次に現在の需給関係の実態であるが,これは目下需要が供給を遥かに上廻っている状態である。即ち輸出関係に於ても引合数量には到底応じ切れぬ状態であり国内需要も相当多く所謂生産過剰には程遠く,需要者からは一途に増産を望まれているのが実態である。
 しかし乍ら兎毛皮界の特殊性として価格の決定権が専ら海外市場にあり,国内価格は直にその騰落によって左右されることと,その需要が価格によって増減する。即ち我が国の価格が或る限界以下であればいくらでも引合があるが,それによって輸出価格の高騰を来せば直に停滞すると言う,甚だ生産者にとっては不利な特殊性があるのである。従って供給を上廻る需要が必ずしも価格の高騰を伴わないと言うことが現実である。
 次に本年の取引価格の予想であるが,上に述べたような情勢の総合結果と既に始った輸出引合(現在に於ては平均21インチが42−43セント前後であって,輸出業者の東京に於ける買付価格は1等品20インチ120円,2インチ増減毎に30円増減であると発表している)から逆算して庭先価格は1等品100円及至130円位を予想出来るのである。
 従ってこの価格のみでは必ずしも増産意欲を高めるような条件とはならないのであるが,毛皮用兎飼育者にとっては現金収入の大事な機会であるから,この機会を有効に利用して,一枚の無駄もなく換金し,しかも翌年の生産に支障ない様な計画をたてることが肝心である。
 即ち部落単位の共同処理などによって合理的な集荷を行い,併せて品質の向上を計り,有利な販売条件にもってゆく事などは是非行はねばならないことでありまたこの機会に兎肉料理法の研究などによって,兎の価値を100%に利用することも考えねばならない。

兎毛皮生産の注意事項

一.600匁以下の兎はできるだけ屠殺しないことと(望ましいのは700匁以上)
二.分娩その他で毛質不良となったものは,そのまま屠殺せずに栄養回復を待ってから屠
殺すること(生後6ヶ月以下のものは出来るだけ屠殺しないこと)
三.作為的の細張りや45度以上の甚だしい肩下りの張り方は好まない。
 縦と横は2対1を標準とする(毛皮は乾燥すると縦1インチ横半インチ程度縮むものであるから注意を要する)

体重に対する皮判の標準

体重 1貫匁 800匁 700匁 600匁
お    す 24インチ 22インチ 20インチ 18インチ
め    す 26インチ 24インチ 22インチ 20インチ