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作州随報

津山畜産農場

 △少し旧聞に属するかも知れないが1月15日津山市東部公会堂におい北部酪農業協同組合の主催をもって酪農4Hクラブの研究発表会が開催された。当日は雨降りの悪天候で寒気が強かったが集まるもの無慮120名の盛会であった。発表者は5名であったが皆将来の日本農業を背負う青年でその意見洵にけんミたるものがあった。審査員は岸本会長,県改良課大森技師,指導連津山支所長仁木技師並びに筆者がこれに当った。5名の内3名迄は酪農時局を反映して自給飼料の増産利用に関する問題であって何れも自家において苦心経営されている実情を意気と情熱をもって発表せられ聴衆を感銘させること多大なるものがあった。
 将来の酪農経営には各方面に亘り研究改善を要すべき幾多の重要案件が山積し殊に生産費逓減により経営の安定を図るため飼料自給の問題は最も重要なるものである。この問題に対して極めて熱心に実践しておられることは将来一般酪農家の指導上貴重な指針となるものである。今般のこの催は最初のものであったが予期以上の好成績を収め得たことを喜ぶと共に毎年か様な発表会を開催せられ青年の研究を助長することは難局にある酪農の発展を期する上において是非必要なことと思う。この会で2等を得られた勝田郡広野村の吉原君は県の発表会において入賞せられ全国の発表会に出陣せられることになった。同君の溢れる意気をもって東京の壇上においてその研究成績を充分に発表せられ全国酪農家の参考に資すると共に優秀な成績を収められんことを祈念してやまない。

 △久米郡三保村は作州路において最も乳牛飼育の盛なところであるが昭和22年から酪農の好適なことを考えて乳牛の飼育をはかり50頭達成を目標に鋭意増殖に努めてきたが今般その目的を達成したのを機会にその祝賀に加えて更に100頭目標達成に踏出すべく2月20日の吉日を卜し村一円の酪農大会を開催した。集るもの村内酪農家及び将来酪農家たらんとするもの約100名,来賓として地元郡出身村上県会議員,県より課長代理として加本技師,地方事務所,北部酪農,東洋乳業,津山畜産農場より多数の出席があった。午前中は三保村に飼育中の乳牛全部を小学校庭に集めて黒瀬組合長より説明があった。午後は講堂において大会を開き現下の酪農時局を突破すべき方法等につき熱心な協議が行われた。今回決定された100頭目標の達成には幾多の国難があることと思われるが村,農協等の指導援助の下に組合員一致結束してこれに当られるならばこの目標達成は困難でないと思う。折角一段の努力を切望する次第である。

 △苫田郡香々美南村は現在2,000羽程度の鶏が飼育されてその経営によって農家の経済に多大の貢献をなしているが今般同村農業委員会の企画に基き養鶏10,000羽計画が樹立された。この目的を達すべく本年約5,000羽の育雛をなすこととし,去る2月4日村内希望者を農協会議室に集め養鶏講演会を催した。当日集まるもの約250名,広い会議室もぎっしりと詰りなお喜ばしいことに婦人の出席者が約半数を占めていた。筆者が午前午後に亘り約3時間育雛及び産卵率の向上に関して講演し続いて県畜産課の蔵知技師,小郷技師の講演があった。当日は友保県議も特に臨席せられこの問題について一同を激励され多大
の成果を収めた。飼料高……卵価安……表門裏門からのはさみ打ちで養鶏経営はピンチである。自給飼料を主体として健康な雛をつくり常に精鶏を飼育する方針をもって当初計画を完遂される様願いたい。

 △惣津課長は本誌2月号の巻頭言において草を愛さねばならぬと述べておられるが全く同感でこれこそ将来の畜産経営の基盤をなすものでありこれを強く推進することによって如何なる危機に立っても畜産の経営は大盤石たり得ることが出来る。草は畜産の基である。これ丈大切なるものを何故従来比較的等閑に付してきたか。又現在でもこれに力を打込むものが少ないのか。朝,日の出前に籠を背負って草刈に出ることは古来吾国養畜家のよい慣習となっているが惜むらくはその草は古から冬には枯れ夏には繁る自然生の草……堅い栄養価の少ない草……にしかすぎない。この草を栄養価の高いよい草にしないのか。仕事が極めて地味である。効果が直ちに表れない。と言ったことで従来必要は知り乍らも手を着けようとしなかったのがほんとうではあるまいか。
 古来……草刈……という言葉があって養畜家は成程草を刈って家畜に与えた。然し……草をつくる事……は前記の通り無頓着であった。良草あって良畜あり。将来は草を刈るという観念を改めて草をつくるということになりたいものだ。吾々は草の大切なことを再認識すると共に吾々の手によってよりよき草を増産しこれを愛することによって畜産の発展を図ろうではないか。

 △政府の家畜保健衛生並びに畜産改良増殖施策の第一線として全国各地に保健衛生所が誕生して活動中であり本県にも本年度をもって20箇所の保健衛生所が完成し何れも優秀なる職員を得て活動中である。保健衛生所は家畜の保健衛生知識の普及向上と疾病の予防,並びに人工授精を主たる業務とするもので吾々種畜場とは最も密接な関係を有するものである。殊に保健衛生所には乳用種雄牛は繋養しないことになっているので作州一円の乳牛の精液は当場から供給しなければならず保健衛生所と当場とは将来一層連絡を緊密にして仕事を進めなければならない。近く年度も変るので,新年度の事業遂行のためには色々協議を要する重要案件もあるので4月末頃作州一円の保健衛生所長会議を当場で開催したい計画である。

 △当場の種豚舎は旧軍事施設を応急修理したもので甚だ御粗末で種畜場の種豚舎として参観者を案内し兼ねる様なものであり従って種豚の改良蕃殖も意の如く行かず困っていたが今般新種豚舎が完成した。予算の都合で別に大きいものではないがこれを機会に養豚関係に一層力を入れる計画であるから一段の御利用を願いたい。

 △昨年の台風で当場の人工授精所が破壊してから臨時に牛乳処理所で事務をとり野天で患畜治療及び人工授精を行う状況で大変不便を感じ又外来の方にも御迷惑をお掛けしていたが今般県の特別の御配慮で改修築が出来上ったので此上共御活用が願いたい。

 △本年も昨年と同様鶏の中雛を配付するため目下育雛中である。配付計画は次の通りであるから希望の向は早く申込まれたい。
 配付期日 配付予定羽数(40日雛)
 3月下旬 630羽
 5月中旬 630羽
 6月下旬 140羽

 △当場の養鶏施設は予算その他の関係で未だ極めて貧弱であるのは遺憾であるが作州地方の養鶏は戦後急速に発展しつつあるので当場がその中心となって活動すべき使命を持ち乍らそれが出来ない実情にある。か様な状況に鑑み昨年12月頃から作州における市町村農業協同組合指定種鶏場,孵卵業者,畜連等関係団体の資金的な格別の御援助によってやがて相当の種鶏舎が建設されようとしていることは当場として洵に感謝に堪えないところである。当場としてはこれらの方々の御厚志に報いるため一層の努力を傾注する決心であるから此上共の御援助御鞭撻を御願い致したい。

 △近く本年度も終り昭和27年度を迎えようとしている。本年度の当場事業の施行については関係方面の絶えざる御援助を得て予定の事業を遂行出来たことを深く感謝する。種畜場の使命は一層重要性を加え来年度の各種事業については一段の活動を要請せられているので各位の御鞭撻をいただいて努力する覚悟であるから此上共よろしく御願い致す次第である。