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めん羊の剪毛について

 めん羊の剪毛の適期は地方によって多少違いますが,大体その地方の桜の満開の頃に行えばよろしい。剪毛は剪毛鉄を用いて行いますが,熟練しますと1頭15分位でかれます。
 剪毛はめん羊の飼養管理の中では重要な仕事の1つであって,この技術の良い悪いは直接収毛量に影響するばかりでなく,めん羊の体に傷を与えたりすることがありますから,充分注意していただきたいと思います。
 剪毛の順序方法などについては相当むつかしく,又時間もありませんので附近の良く知った方に教わるか又は畜産課か種畜場で指導して貰って下さい。従ってここでは剪毛の際注意しなければならない一般的なことについてのみ記します。
 第1には晴天の暖かい日を選び,雨の日や曇ってうす寒い日はなるべく避けるように致しましょう。
 第2には剪毛前によくめん羊の検査をして異状のないことを確めてから行いましょう。若し病気やその他の異状のあるものや妊娠中のものは延期する方がよろしい。
 第3には満腹させておくと,剪毛のとき横にしたり起したりするため,めん羊が苦しんだり,ときには鼓脹症を起したりしますから,その日の朝食は与えい方がよろしい。そして剪毛が終ってから給食すれば事故が少くてすみます。
 第4には剪毛の場所はなるべく板の間を選び,たたき,コンクリートの上で剪毛するときはテント,ゴザ等を敷いて藁や草などが混ざらないように注意しましょう。
 第5にはめん羊の保定方法に注意し,鋏を正しく使って毛の根元から1回に刈取り,決して二段刈りをしないことです。途中でめん羊がさわいだ場合は鋏を持った手はすぐ後に引いて,めん羊を静めすっかり落着いてから再び刈るようにしましょう。又保定の姿勢を変える場合は,鋏を一旦床に置いて,姿勢が整ってから鋏を持つようにしましょう。
 第6には皮膚を傷つけないようにし,若し誤って傷つけた場合は「木タール」を塗布します。特に雄の陰嚢や雌の乳頭は傷け易いものですから注意して下さい。
 第7には刈り取った羊毛は丁度1枚の毛布のように刈り口を外側にして拡げて肢や腹の部分を中に入れ,丁寧に折りたたんでバラバラにならないようにしばって貯蔵して頂きます。