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巻頭言

今日この頃のことども

惣津律士

 青葉の萌ゆる今日この頃,家畜保健衛生所の竣工開所式が各地で行われて居る。
 畜産の重要性が農業に強く再認識せられ,日増しに家畜の改良増殖と損耗防止に対して切実なる考慮が払われるようになった事は畜産界に取って誠に有難いことである。
 家畜保健衛生所の建設に対する国及び県の助成は極めて僅少ではあるが,この施設が真に有畜農民に取ってかけがえのないものであるとの認識から物心両面に亘る協力は立派な建物となって各地に誕生を見て来ている事は厳然たる事実である。私はこの貴い熱意に対してただただ感激の外はなく,特にこの衝に当たられた町村長及び関係諸団体の涙ぐましい御努力は筆紙につくし得ないものがある。
 堂々たる建物を造って戴いた御芳志に添うためには県としては優秀な内容を以って酬いなければならない。今後の運営の如何が,家畜保健衛生所の死命を支配するものである事は開所式に於いて関係各位から揃って賜わる御言葉である。我々関係者は死力を尽して奉仕の誠を尽さなければならない。
 幸いにして現在までに出来上った保健所は所員の努力に依って遺憾なく運営せられ,地元から限りない信頼を得ている事は喜びに堪えない。
 これ等20ヶ所の保健所が最大の能力を発揮する秋こそ,本県の畜産は更に画期的な進展を見るであろう事を信じてうたがわないものである。
 有畜農家創設事業の資金の枠は今回本県には4,300万円と一応決定された。この枠の増大を要望する声は特に乳牛関係者に於いて強いのはけだし当然である。我々は資金融資の増加を今後強く要請しなければならない事は勿論ではあるが,何はともあれ,受入態勢を充分にととのえる事が肝要である。有畜農家の健全なる維持を図らんが為めには,飼料の自給度の向上が鍵である。この点が健全化されて,本県の有畜化が順調なる進展を示しつつある実績を天下に示すならば,恐らく農林省に於いてはこの事実に対して枠の拡大を許さざるを得ないであろう事をかたく信じている。健実なる有畜経営の移行への努力こそ,我々畜産関係者としての責務であろう。