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山陽酪農青年研究会発足を祝して

明乳笠岡工場 日笠猛士

 県下の青年酪農家の皆様,酪農経営向上の為,若さと熱とをもって日夜御奮闘の事と存じます。
 扨て過去の農業経営を振返って見ますと農村を背負うて居た人々でさえ今迄の経営の矛盾を矛盾と考えず不便を不便と思わず目に見えぬ損失を損失とせず千変一律唯ノウノウと時が来れば苗床に種を蒔き,秋が来れば稲を刈取り麦を蒔き又時が来れば種を蒔き麦を刈るという,具合に365日を繰返しては居なかったでしょうか。人間と草とを同一視しては誠に失礼ですが踏傍の草さえも時が来れば忘れずに芽を出し花を咲かせ,冬が来れば冬眠につくものであります。この点から見ましても酪農経営は一般農業より脱却して桿頭一歩を進めた農業だと吾々は自負すべきであります。然し中にはややもすれば自己卑下をして能なしは酪農の代名詞の様に言っている人さえあります。即ち自分から「牛飼いはアンゴーじゃけー」という。吾々はこんな考えを持つ人を気の毒に思うと共に酪農の発展の為に悲しむものであります。今後の酪農経営なり酪農技術こそ科学性のある頭脳が一番要求される仕事である事を自覚されねばなりません。
 今後の酪農業は科学性のある経営であり科学性のある技術でなければ世界の酪農界に伍して行けないと思います。海外の大農法は日進月歩,長足の発展振りと開いて居ります。斯かる折柄日本の如き狭少なる農地にて所謂5段歩経営では「より以上」の頭脳が要求されねばなりません。より以上綿密な頭と科学性のある頭脳で研究し不断の努力をしなければ世界の酪農界と伍して行けない(落伍は自滅より外なし)と思います。思いをここに致す時,意ある青年はこれをノウノウと見送る事が何で出来ましょうか。彼等と伍して行くには不断の研究心と努力より打解の道はありません。酪農青年が目覚め且つ奮起する時は今より急なる時はない!!
と確信するものであります。時恰も講和条約も批準され独立日本の第一歩を踏み出す可き時,吾々関係の山陽酪農業協同組合管内に於て意ある青年諸兄が他に先んじて「山陽酪農青年研究会」を結成され同志の結合を計りそうして今後の酪農経営法なり酪農技術の改善向上をお互い真剣に考えて行かれる事は何より慶ばしい事と思います,3人よれば文殊の知恵とか申します,青年研究会を通して各自の研究事項を発表討論する等,青年にのみ与えられたる意気と!!若さと!!熱と!!を集注して難問題とがっちり4ツに取組んだならばその成果は言わずともがなでありましょう。
 青年研究会が斯様な活動を展開する事により酪農業を明るいものにし農業生活になくてはならないものにして行かれるものと確信して同研究会の前途を祝したいと存じます。