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畜産技術講座

乾乳牛の管理法

明治乳業笠岡工場 荒靴 訥

 乾乳期の飼い方如何で分娩後の成績がある程度左右されると言われます。これについてアメリカの代表的酪農家の意見を聞いてみましょう。
(ホーズデリーマン誌51年12月号抄訳)

第1問 分娩前の乾乳期間はどれ位がよいか

F・A氏(ミネソタ州)出来れば2ヶ月
R・C氏(インデアナ州)出来れば6乃至8週間
J・A氏(ニューハンプシア州)6週間乃至2ヶ月

第2問 乳量の如何に関らずこの期間を守るわけか

皆んな「然り」と答えた。

第3問 乳を上げる方法について説明を乞う

G・H氏(ウイスコンシン州)1日5升以上出てないならば乳房の各乳区に異常なかたまりがでない限り搾乳を完全に休止する。乳房がたるんで乳の吸収作用が起る迄濃厚飼料の給与を急激に減量する。甚しい乳区の異常かたまりが起った場合や,1日5升以上乳が出ている場合は正規の搾乳を休止した後1,2回完全に乳を搾り切る。
F・A氏 すっかり搾り切ってそれで搾乳を休止する。数日間牛を牛舎に入れたままでおく。若しその乳期間に乳房炎をやった牛には乳房の各区に夫々ペニシリンを打って牛舎に立たせておき7日の後乳を搾り切り,更にペニシリンを打って今度はそのままにしておく。
R・C氏, 先ず最初後搾りをせずに1回搾乳をとばす,次に同様2回とばし,続いて4回次に8回とばし,かくしてすっかり上るまでやる。
J・V氏(ウイスコンシン州) 乳を上げようと思う数日前に濃厚飼料を止める。それから約3日間搾乳して休止し出来るだけ早く乳房をはらせる。残った牛乳が吸収され乳房のはれが去った後は,乳房炎其の他の炎症は完全に喰いとめられる。
O・K氏(ミネソタ州)上げようと思う1週間か10日前から1日1回搾りにする。そして完全に休止してしまう。1回搾りにすると同時に濃厚飼料は削減し,若し必要ならば乾草の質を落しもする。ねらいは上げる前に乳の分泌を極度に減らさせることにある。
R・C氏(ミシガン州)若し乳量が7升或いはそれ以下ならば2日間搾らずに放っておき,乳房の様子を見る。そこで2,3日搾り切る。それから更に4,5日ほっておいて又搾る。この間始終乳房を観察する。こうすれば僅か2回か5回で完全に乳を上げることが出来る。今までこうして悪い結果を残したことはない。
J・A氏 特に刺戟するような餌を除いて搾乳を打切る。こうして私は7升位出ている牛を何のぞうさなく上げて来た。

第4問 乾乳牛にはどんな餌をやるか

B・C氏 搾乳牛と同じ混合飼料を与えている。その量は最高乳量期の約半分である。
O・K氏 燕麦,玉蜀黍,麩,亜麻仁粕ミール少量の糖密を加えた配合飼料を1日1貫匁。
R・C氏 年令によってちがう,経産牛には玉蜀黍,燕麦,亜麻仁粕の混合飼料を1日約1貫匁を与えるが,これから初産をする若牛には濃厚飼料は全然与えない。
J・A氏 夏期なら濃厚飼料をやらずに良質の牧草を食わせる。冬期には牛の肉づきに応じて500匁から1貫匁の濃厚飼料をやる。

第5問 配合飼料の可消化蛋白質若しくは粗蛋白は幾何か

R・C氏 粗蛋白13%
O・K氏 可消化蛋白質13%乃至15%
F・A氏 粗蛋白14%

第6問 粗飼料はどんなものをいか程与えるか

R・C氏 食いたいだけの玉蜀黍サイレージと乾草を1日2回
B・C氏 あらゆる良質乾草をきれいに平げるだけ。

第7問 乾乳期間中配合飼料にヴィタミンAを添加するか

F・A氏だけが然りと答えた。彼は冬期は17%に脱水したアルファルファーを配合,飼料1トンにつき100ポンド添加する。

第8問 乾乳期間にどれ位肥やすべきか

J・V氏 乾乳牛は出来る限り最上の状態におくようにする。肥やす程度はおよそ18貫から24貫迄。
O・K氏 妊娠の末期に於ける胎児の急速な発育と母体自身の体重増加とを合わせて12貫から18貫の間。
F・A氏 体重の約10%
R・C氏 約15%から20%
B・C氏 乾乳牛は乾乳期間中に体重を増すべきだが,併しそれは乳房をあまり過度に膨らさせないことに留意した上である。その程度は一定していない。
G・H氏 程度は乳を上げた時の瘠せ加減によるが,普通18貫から24貫というところが我々のねらいである。

第9問 分娩前の予備搾乳を決った方法として行っているか,それともある特定の牛だけに行うか

F・A氏は牛の乳房の状態によっては予備搾乳を行うと述べている。
B・C氏は特定の牛はいつも予備搾乳をやるが一般にはやらないと言った。G・H氏はウエスト・バージニア州立大学での実験では予備搾りによって殆んど何の利点も得られなかったと説明した。彼によると予備搾乳をやっても乳房の膨りはやらないのと同じか或いはむしろひどい位であった。併し乳房炎の既往症のある牛は分娩2週間前に予備搾乳をやることによってよい結果が得られるそうである。

第10問 冬期乾乳の運動は如何様にするか

B・C氏 他の搾乳牛と一緒に1日1回約半時間外へ出す。
O・K氏 特にひどい寒さの日や嵐の日以外は毎日運動させる。
R・C氏 囲った場所で走らせる。
F・A氏 滑らないところならば外の牛と一緒に運動に出してよい。

第11問 分娩前には乾乳牛を如何に取りあつかうか,濃厚飼料はひかえるか

J・A氏 濃厚飼料は全々中止はしないが,かなり減量する。
R・C氏 分娩の約10日前から配合を変えて麩が大部分であるようにする。分娩と同時に配合を除々に復旧し,10日後には普通にもどす。
O・K氏 分娩前はうんと濃厚飼料をへらす。特別に糖密を与える。
B・C氏 乳房をよく見ておって若しそのために乳房が膨るようなら濃厚飼料をやめる。

第12問 その他乾乳牛の管理に関して重要と思われる点を指摘せよ

G・V氏 乳房が異常に早く膨るようだったら蛋白質の含量が少くなるように燕麦と麩を主とした配合を与える。
F・A氏 我々は乾乳牛に最も良質の乾草を与える。私はかつてホーズ氏が述べた『乾乳期の1貫の飼料は分娩後の2貫匁の飼料に比敵する』という言葉の信奉者である。
R・C氏 その牛その牛の状態に応じて夫々異った管理をする。
J・A氏 私とこの乾乳牛は牧草,其の他の粗飼料のみで目方が増える。

(終)