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畜産技術講座

夏の養鶏管理

一.衛生管理

◎夏の養鶏 は衛生管理に尽きるといっても過言ではない。急激な温度と湿度の上昇は総ゆる病原菌繁殖のシーズンである。加えて愛鶏は晩春以来の産み疲れが漸く現われて極度に体力を消耗する。梅雨の高温多湿と鬱滞した不快な空気は人の心を暗くするように鶏に与える衝撃も又大きいものである。
 感冒(ループ) は必ずしも寒さが原因し罹るものではなく反って空気の鬱滞した梅雨期に罹病し易い。先ずもって鶏舎を開放しよう。鶏舎の前面も裏面も昼夜の別なく出来るだけ広く開放してやりたい。
◎鶏痘 による経済的被害は毎年どこかの養鶏家が体験し苦杯を嘗めている。特に秋風の吹きそめる初秋の候に罹ったものはヂフテリーに転機する危険もあり又春雛が産卵期に入っているため卵価高騰を期待する養鶏家の経済をおびやかす。本病を蔓延する蚊はどんどん増殖して行く,時期を失しないよう予防液を入手して接種を励行したい。予防液は昨年迄は農林省家畜衛生試験場が独占して製造払下していたが本年からは東京都立川の日本生物化学研究所でも製造販売され技術的にも長足の進歩を遂げ予防液の使用期限(寿命)も一段と長くなり到着後14日迄の保存は大丈夫とのこと,但し冷蔵庫に保存することを前提としてである。
◎梅雨 ともなれば連日の降雨で運動場や舎内が湿潤となり不潔に陥り易い為,百日雛となってもコクシジュームに感染したり中雛や成鶏が蛔虫に冒される場合が多い。運動場は中央部を高く周辺を低くして排水を良くし舎内は度々敷藁を交換して極力乾燥するようにする。梅雨前又は梅雨明けには必ず駆虫薬を与えるようにして又羽虱や糞虫の寄生を受けている時はDDTの粉末による鶏体塗擦やDDT油剤の稀釈液を撒布して愛鶏が日中の疲れで快よく安眠できるようにしてやりたい。

二.飼養管理

◎梅雨が明けるとぢりぢりと照り続ける炎熱に汗腺を持たぬ動物の悲しさに一様に口を開き翼を開放して悶える愛鶏の姿を見て養鶏家の総べてが焦燥を感じ産卵率の不振を嘆息しなければならない時季である。
 鶏舎の開放 は勿論のこと鶏舎のひさしには「よしづ」を張り陽蔭を造ってやる。出来得れば庇蔭樹(アカシヤ・プラタナス・ヘチマ)を運動場に植え炎暑の候に備えたい。緑蔭は鶏にとって休養のオアシスであることを忘れてはならぬ。
◎糟糠類を主体とした飼料 でも4−5月の侯は自然の蕃殖期でもあるのでよく産卵するものである。ところが麦秋ともなれば就巣鶏が出たり産卵率が7割を割るようになる。如何に多産鶏であっても糟糠類のみでは体力と産卵の維持は出来ない筈である。従って麥類,馬鈴薯,甘藷や上質の魚粉を逐次増量し少くとも穀類5割,魚粉1.5割以上にして産み疲れを防ぐ必要がある。産み疲れは健康の象徴ともいえる冠色や食欲,胸肉のつき方により比較的容易に判定できるものである。
 全く自然はよく出来ているもので揃々産み疲れが出る頃を見計って新麦が出廻り,馬鈴薯が収穫され,甘藷蔓がとれ小米が収れ甘藷が出来るというふうに養鶏飼料にもってこいのものが圃場から逐次収穫されて行く。こういうものを上手に組合せて愛鶏の体力維持と産卵促進のため飼料配合を工夫しなければならない。麦の芽出しやニラ・ニンニクの葉の給与も夏の飼料として忘れられないものである。

三.経営管理

 換羽 は普通の鶏であれば9月頃から始めるものである。7−8月頃に換羽するものは特殊事業のない限り先ず寡産鶏と見て差支えない。
 飼料高卵価安の昨今寡産鶏は一刻も早く整理する必要がある。その点換羽時期による駄鶏淘汰は当らずとも遠からず凡そ70−80%の確立があるからこのチャンスを捉えて駄鶏の大整理を行いたい。
 点燈養鶏を開始するのも8月頃からである,通常2−3年鶏に実施し産卵を強制して年末又は翌春の肉価の高騰した時を見計って処分するのが常識となっている。
 養鶏経済の逼迫した折柄,本年は点燈養鶏も相当普及するものと思う。只若雌の点燈は経済寿命が長いだけに相当慎重を期して行わないと,後々に弊害を残すことがある。
 なお経営管理の1つとして飼料の備蓄の問題であるが飼養羽数の多少に拘らず糟糠類は大半購入しなければならないから飼料価格が毎年底値をつく7−8月頃の適当の時期を見計って買込み若干の手持飼料を備蓄しておくことも経営を安定さす意味からいって必要なことだと思う。