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牧場便り

津山畜産農場

 田上りの憩の一時当場参観の人々の応接に暇がない。家畜の飼い方,牛の見方を勉強する人,飼料作物を研究する人,搾乳技術を教わるもの,さては各種学生の社会科の勉強やら遠足,象の様な乳用種雄牛に目を瞠り優しい緬羊の啼声に愛着を感じグロテスクな豚を見て苦笑する等今日此頃の農場は参観人の増加に嬉しい悲鳴を挙げている。
 当場は本年当初明粧成るモダーン豚舎を建築し陳旧なる旧軍事施設の代用豚舎より移転し豚の改良蕃殖に一層拍車をかけることになった。又従来水質水量共に不便を凌いで来た水道施設も場門前の宮川よりの揚水設備を完了し人畜共に新鮮豊富な水の恩恵に浴している。
 剪毛により脱皮した緬羊の群滴るばかりの緑草を喰み大気を吸って放牧される牛の啼声リズミカルなコーラスに明け暮れする農場ではあるが蔭に秘めた職員以下の苦労も並大抵ではない。

△ 脳下垂体移植試験

種付能力の減退した種雄牛に対し他牛の脳下垂体を筋肉内に移植し回復せしめる手術を過般当場において実施した,美作地区畜産技術者凡そ30名が集り講師中国四国農業試験場吉田正三郎技官の指導により初の試みである。種雄牛に移植手術を施し熱心に研究し極めて有意義に終了した。なおこの結果については好成績を収めており何れ取纏め本誌に発表の予定である。

△ 乳用種雄,種雌牛入場

 国有貸付種雄牛として5月下旬北海道大平牧場より乳用種サーロメオドラ号が入場,大平牧場の秘蔵品の割愛を受けたもので作州地区は申すに及ばず県下酪農発展のために将来が期待されている。
 又前後して石川県より乳用種雌牛リリスバークウィルヘルムルーチェ号を購入育成しているが系統,体型等秀逸にして将来が期待される。

△ 山羊登録採点審査講習

 5,000頭に近い作州地域の山羊は農村食生活の改善に貢献している処大であるが山羊の改良発達のため昨年度末登録協会の誕生を見,4月1日より発足の運びとなり其の基調をなす一環として5月28日当場において山羊の登録採点実習を開き講師中福田家畜保健衛生所楢崎技師の指導の下に熱心に研究が続けられた。
 参考のために「山羊登録審査標準の解釈について」を別掲御参照願いたい。

△ 緬羊剪毛講習会開催

 旧聞に属するが去る4月17日当場において剪毛講習会を開催し緬羊飼育者,畜産技術者普及員等約50名が集り講師県畜産課小島技師の指導により又当場技術者の援助により数ヶ斑に分れ熱心に剪毛の実施について尊い体験をした1頭剪毛所要時間講師15分の処受講者は早い人で1時間遅い人で2時間程度皮膚に傷つけ木タールで真黒にする人緬羊を疲労させるもの剪毛半ばで緬羊に逃避されるもの等汗と油で終始熱心に受講した。
(昭27.7.10記)