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巻頭言

初秋随想

惣津律士

 今年の梅雨明けの暑さは格別だった。この猛暑につけても家畜の健康状態は如何がとの懸念を畜産人はひとしく抱かれた事と思うが,幸いにして事故が少なかった事は何より喜ばしい事であった。
 9月,10月は畜産シーズンである。全国各地で畜産共進会が開催され,附帯行事として畜産振興の数々の催しが花々しく展開される。まさに畜産の祭典である。本県の県共は過般の畜連会議で10月7日から10日迄と決定された。来年秋には全国和牛共進会と中国連合畜産共進会が同時に広島市で開催される関係から,本年の県共は極めて意義の深いものを覚えるのである。
 共進会で栄冠を獲得したいのは誰れしも念願する所である。併し乍ら最高の栄誉をかち得るためには各人の撓ゆまざる研究,努力,熱意が勿論必要であるが,それにも増して,出陳者に対する関係者の心からの協力と誠意こそ最後の勝敗を決するものであろう。
 有畜農家創設事業に依る家畜の導入導出は昨今ようやく活発化して来た。緬羊の導入は大体終了し,乳牛,馬の移入が間近にせまってきている。和牛の県外導出は関係団体の並々ならぬ努力で順調に進みつつあり,移入県から好評を受けている事は感謝に堪えないが,今後の移出は相当頭数に上る関係上,更に一段の努力を払われたいものである。御客様に安心して,喜んで買って戴くように努める事こそ,生産県としての責務である。
 この事業をやってみて,今後改善を要する点がかなり多く指摘されている。農林省当局は本年の実績を早急に検討して,改むべきものはいさぎよく改革して,真に農家の喜ばれる施設たらしむべく努力せられんことを要望して止まない。