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ハイライン鶏蕃殖法

一.鶏繁殖の新方法

 ハイラインの雛は雑種玉蜀黍と同様に蕃殖する。それらは近親交配した系統間の雑種である。鶏の蕃殖のこの新方法によれば,多数の(幾1,000人もの)農家(Farmers)に遺伝学的に均一な優良能力を有する雛を非常に多羽数(幾100万羽も)供給することができるようになる。此の均一性は旧来の鶏の蕃殖方法によっては容易に得られないものである,後代検定された鶏からの著明なる交配の結果得られた所の家禽標準に早く合致するように蕃殖した雛と言うものは,そうざらには(幾100万羽も)蕃殖する事はできない,最も完全に家禽標準的に蕃殖される交配と言うものでも,限られた蕃殖目的に対してのみ充分なる雛を供給するだけである。唯本来家禽標準に合致するように蕃殖された雌及び雄そのもの丈が傑出した成果を反復しうるのみである,旧来の鶏の蕃殖方法ではこの限界を克服する事は出来ない。雑種玉蜀黍より前の時代に他家授粉する玉蜀黍の蕃殖家は同じような問題に直面した玉蜀黍の遺伝に関する彼等の支配は非常に制限された。他家授粉する系統の植物個体は各々良質のものから悪質のものまで非常に変異が存在した。家禽標準的に蕃殖された系統からの雛個体に於ても,此の同様な不利点が存する。〔(第1表)*〕

(第1表)ハイラインは雑種玉蜀黍と同様に繁殖する

 望ましい均一性を得るためには,近親交配に依り優良なる特性を"固定"さす事が必要である。――即ち望ましい特性を有し得ない鶏は全部廃棄する事が必要である。それ故,近親繁殖した系統間で実験的交雑を行う事が必要となる。この事は何れの近親繁殖鶏が,一層優れた雛を生産するために,うまく,交雑するかと言う事を決定する。パイオニヤー雑種種子玉蜀黍の生産者が此等の繁殖原理を1913年玉蜀黍に応用し始めた。………そしてそれを幾年間か鶏にも応用して来ている。此の鶏の蕃殖計画は実行されてから尚日が浅い。この方法により蕃殖される鶏はちょうど,雑種玉蜀黍が改良し続けられると同様年々絶え間なく改良されて行くであろう。

二.近親交配……ハイラインの繁殖に於ける第1段階

(a)19の経済的諸特徴に対する選択淘汰

 近親交配の間 ハイライン繁殖家は,19の経済的特質に関して選択して行く。通常(第2表)◎に示したような欠点に対して各々繁殖鶏舎中で,殆んど大部分の若雛を選択淘汰する,19の望ましき特性の殆んど全部を有すると,解って来た鶏のみを将来の近親繁殖鶏のために保持しておく,或る近親交配系統は,これらの特性の1,2に於て,望ましくないのみならず,それに欠けているが,他の特性に於ては優れていると言うようなものも存在するだろう。此の場合に於てはハイラインの蕃殖家は,更に進んでこの近親蕃殖鶏を用いる。彼等は最後の(決定的な)交雑に於ては,その近親蕃殖鶏が望ましくない因子をかくして望ましい因子を表現するような態勢にする。
 ハイラインの近親交配鶏は次の特性に対して厳選する。

  雛の生存能力の高い事
  放飼場に於ける生存能力の高い事
  産卵鶏舎に於ける生存能力の高い事
  卵重量の大きい事
  卵形の良好な事
  望ましい卵殻色
  良質の卵殻
  血液や肉片の汚物を有しない事
  粘土の高い卵白(濃厚な卵白)
  早熟性
  就巣性のない事
  冬季産卵休止のない事
  産卵期間の持続性
  産卵強度
  受精率の高い事
  急速な成長
  急速な羽毛着性
  肉体的欠点のない事

(b)近親交配は望ましい特性を純粋化する。

 近親交配系統の育成はハイラインの蕃殖に於ける第1の段階である。近親交配は一定の特質に対して,各々系統を純化する傾向を有する。高率の産卵や良好なる卵の形のような多くの諸特質に対して選択を行う。近親交配を行って最初の2,3世代までは近親交配された系統を破壊して,その結果諸個体を多くのTypeへと分離さして行く。これらの諸個体は非常に良質のものから,粗悪なものまで存在する。ハイラインの蕃殖家は最良の鶏以外のすべての鶏を淘汰する,近親交配を数年間実施してゆくと,近親交配系統の鶏は形質が一定となってくる,それらの鶏の遺伝的特性は比較的固定されている。
 近親交配はよく家禽標準に合致する様に蕃殖した鶏を交配する事より始まる。(第2表参照◎)最初の1年間はハイラインの蕃殖家は選択された姉妹と最も有望性のある彼女達の兄弟とを交配する,彼等は各に若雌をトラップネストし,若雌の優良なる特性に対して非常に注意深く比較照合する。彼等は最優秀なもの以外は全部淘汰する第2年目には,その最も優秀な若雌の子孫の兄弟姉妹交配を行う。この方法を数世代間継続する,やがて近親交配された系統は或る一定の特質に対して純粋化してくる。
 ハイラインの要求する所のものは,各各毎年実施される近親交配の家系から90%以上も削除する事がその条件であるほんの2,3羽のものしか確立された近親交配鶏とはなり得ないのである,この方法は多大の費用がかかり,然も複雑である。これは不断の探求と,トラップネストの実行と記録の保持と,実験検査と淘汰とを必要とする。

(第2表)◎厳選によるハイラインの近親交配鶏の育成

三.実験的雑種の作成並びにその検査第2の段階

 実験的雑種を作成してそれをテストして見る事はハイラインの蕃殖飼養に於ける第2の段階である,蕃殖家が近親交配系統を育成して後には彼等は他の近親交配系統と実験的にそれを交雑して見る。もしそれが他の近親蕃殖系統鶏とうまく"当を得れば"(即ちうまく交雑出来れば)近親繁殖された両親の有する優秀な特質は引き出されて,その結果としての雑種に於ては強められる。近親繁殖した両親に於ける望ましくない特性は全ての実用目的の為に当を得た交雑に於いて除去する。
 あらゆる実験的な交雑種に対して厳格なるテストを行う。ハイラインの蕃殖家は雛の死亡率,成熟性,成鶏の死亡率,就巣性,産卵並びに卵重について厳密な記録をとる。
 多年間にわたる実験的交雑と,その検査との後に,ハイラインの蕃殖家は,彼等が至上と考える極く少数の交雑種を得る。彼等は,取引先のために,これらの雑種を幾100羽と言う程の大羽数に繁殖生産するのだ。

(第3表)近親交配鶏の交雑並びに単交配鶏の交雑
 次表は,ハイラインの蕃殖家が近親交配系統鶏を交雑する方法を示している。彼等は近親繁殖鶏Aと近親繁殖鶏Bとを交配してA×B交雑鶏を作出する,同時に,近親繁殖鶏Cと近親繁殖鶏Dとを交配してC×D交雑鶏を作出する。そして次の年に,交雑鶏A×BとC×Dとを交配して,最終の交雑種を作成する。
 この最後の交雑は,その近親交配された先祖の特質を遺伝する。

四.幾100万羽と言う程の大羽数として最終の(決定的な)雑種を繁殖生産する事……ハイラインの繁殖に於ける第3段階

 ハイラインがテストにより,商業的ハイラインより優れている事が判明すればそれは幾100万羽と言う程の大羽数をして繁殖生産されて販売に供する。ハイラインの蕃殖家は先ず第1に,各々近親交配した両親並びに単交配の両親鶏の羽数を増加しなければならぬ。この2つの蕃殖世代に於て同一の近親繁殖系統の少羽数(2,3羽)の鶏は大羽数の(数1,000羽)雛を繁殖生産し得る。―然して,その雛は,相互に非常に均一性があって又原の鶏ともよく類似しているものだ。この事は決定的な(最終の)交雑種を幾100万と言う程,大羽数繁殖生産する事を可能ならしめる。よく訓練したハイラインの選別検査者達は,両親鶏を選択して,白痢に対して血液検査をする。
 決定的な(最終の)交雑が幾100もの農場で選抜された農業家組合員達によって実施される。−それは丁度玉蜀黍の雑種の決定的な交配が選抜された農業家の種実育成者達の農場で施行される如くである。ハイラインの獣医達は種鶏群の健康保持を援助する。監督者達は種卵の生産並びに,品質の改善に於て,組合員達を援助する,ハイライン蕃殖家は丁度パイオニヤー玉蜀黍繁殖家がパイオニヤー種子作物の植付け,雄花穂の除去を監督するように決定的な(最終の)交雑を監督する。
 農業家組合達は孵卵の季節中は1週2度,主要場所まで卵を配達する。これらの卵は型,卵殻の組織について検査され大きさにより類別される。その種卵は,地域的に孵化するか或いは,孵化用として,多数の関連を有するハイライン配布者に輸送される。

五.ハイライン鶏の特色

 現代の商業的ハイラインは主として高い産卵のために育成されてきたが,然も肉の良質と言うことも又,考慮された。2,3年もすれば,養鶏家が欲する殆んど如何なる目的に対しても恐らく変化がおこるだろう。充分に成長した若雌の平均体重は今日では5ポンドである。その若雌は広い胸と長い龍骨(胸骨)を持っている。その卵は1ダースにつき平均25〜26オンスである。産卵鶏舎単位(注)*を基として表わされた州立産卵検定ハイライン検定,及び取引先の報告は現代のハイラインに関して次の特色を示している。
 ハイラインは家禽標準品種鶏の平均よりも1羽につき2〜6ダース多く卵を産むのが普通である。ハイラインの若雌は5ヶ月半〜6ヶ月半で50%の産卵に達する傾向を有する。……然もその後速やかに増加して2,3週間以内に最大に達する。ハイラインは産卵を開始して間もなく第1級の卵を高率に生産する。その成鶏の生存能力は優良なる標準品種と同じ位である。それらは12ヶ月から14ヶ月間一貫してよく産卵する。それらは天候の変化,飼料の変化,並びに寒冷に基因するスランプによく抵抗する。それらの産卵の利益は条件がもっともひどい時に最大である。卵殻は現在の全変種についてはクリーム様白色である。
 ハイラインの検定に依れば,その普通の農場鶏の若雄は12週に於て約3ポンドの重量である。それらは黄色の皮膚黄色の脚色を有し,然も暗色のPin Featherを有しない。*(注)産卵鶏舎単位は,産卵総個数を産卵の始めは鶏舎に収容された産卵鶏の羽数で除する事により得られる。

(第4表)
イリノイス公認産卵検定に於ける5ヶ年平均
 ハイライン対標準品種

イリノイ,産卵能力検定(1944〜45〜1948〜49)(産卵鶏舎平均)

参  加  鶏 検 定 羽 数 平均生存能力(%) 1年間平均産卵数
白色プリマスロック 390 83.1 149.6
ニューハンプシャー 507 88.2 150.07
横斑プリマスロック 286 81.1 155.9
○ロードアイランドレッド 117 81.5 162.3
白色レグホーン 1,027 77.1 169
○全標準品種 2,483 81.9 158.8
ハイライン 299 87.7 222.3
ハイラインによる利益   5.80%   63.5卵

○唯4ヶ年間の平均のみ,ロードアイランドレットは1944−45の検定には参加しなかった。
○上にリストされていない種々な品種を含む参加全国標準品種の平均。
年度による産卵能力記録。
ハイライン対標準品種 *

*イリノイス産卵能力検定(産卵鶏舎平均)
 1948−49,普通の産卵年全参加羽数に対する死亡率は,14.07%であった,産卵は過去5年間の平均に近かった。

参  加  鶏 検定参加数 平均生存率(%) 平均産卵数(1羽につき)
白色プリマスロック 65 80 149.8
ニューハンプシャー 117 93.1 151
ロードアイランドレッド 26 80.8 158.9
横斑プリマスロック 52 86.6 166.5
白色レグホーン 117 76.1 167.9
○全標準品種 390 83.6 156.9
ハイライン 65 86.2 227.8
ハイラインによる利益   2.60%   70.9卵

 1947−48,検定年の最初の1ヶ月間はニューカッスル病が発生した。死亡鶏は多くなったが,産卵は不振であった。1年間の死亡率は全検定羽数に対して15.55%であった。

参  加  鶏 検定参加羽数 平均生存率(%) 平均産卵数(1羽につき)
白色プリマスロック 52 75 128.1
横斑プリマスロック 26 69.3 128.7
ニューハンプシャー 143 86.8 145.5
ロードアイランドレッド 26 88.5 154.6
白色レグホーン 208 82.8 178
○全標準品種 468 82.9 157
ハイライン 78 92.3 215.3
ハイラインによる利益   9.40%   58.3卵

 1946−47,経過は普通であった。7月末に非常なる暑さに遭遇した。多数の産卵鶏をトラップネスト中の過度の熱さのため失った。1年間の死亡率は全参加検定鶏に対して16.08%であった。

参  加  鶏 検定参加羽数 平均生存率(%) 平均産卵数(1羽につき)
ニューハンプシャー 91 87.9 160
ロードアイランドレッド 26 69.3 161
白色プリマスロック 104 91.4 165.4
横斑プリマスロック 26 84.7 166.2
白色レグホーン 247 81 185.6
○全標準品種 507 83.8 172.9
ハイライン 65 4.7 227.7
ハイラインによる利益   0.90%   54.8卵

 1945〜46,経過は良好であった。イリノイスに於ける死亡率は,USに於けるどの産卵検定よりも低率であって,全参加鶏に対して,その1年間は9.66%に過ぎなかった。

参  加  鶏 検定参加羽数 平均生存率(%) 平均産卵数(1羽につき)
白色プリマスロック 52 92.3 154.8
ニューハンプシャー 78 94.9 165.7
ロードアイランドレッド 39 87.3 175.6
横斑プリマスロック 65 93.9 178.1
白色レグホーン 208 88.5 188.5
○全標準品種 507 90.5 173.4
ハイライン 52 90.4 234.2
ハイラインによる利益   -0.1   60.8卵

 1944−45,経過はひどかった。気管支炎が検定年の初めの2,3ヶ月間発生した。1年の平均死亡率は全検定参加鶏に対して30.15%であった。

参  加  鶏 検定参加羽数 平均生存率(%) 平均産卵数(1羽につき)
白色レグホーン 247 57.2 123.1
ニューハンプシャー 78 78.2 131.2
横斑プリマスロック 117 70.9 140
白色プリマスロック 117 76.8 149.7
○全標準品種 611 68.9 134
ハイライン 39 84.7 206.3
ハイラインによる利益   15.80%   72.3卵

六.ハイラインの4蕃殖農場

 1920年以前パイオニヤー会社の創立者達は試験的に玉蜀黍及び鶏の蕃殖飼養を実施していた。
 彼等は20世紀当初に良質の雑種種子玉蜀黍を育成した。1926年に於てPioneer Hi-bred Corn Companyがこの事業を運営するために創立された。雛を近親交配した祖父母から育成して行くことは一層困難ななかなか進行し得ぬ仕事であった。20世紀後期までには実際に商業的な価値を有する良い雛を育成し得ると言う事を確信するに至った。1936年に於て鶏の蕃殖飼養部を創立した。1942年に「ハイライン」と言う名称が商標としてその鶏の親種のために採用された。その年の鶏の販売は,71,000羽に達した,今日に於いては,ハイラインに対する要求は幾100万にまで販売羽数が上昇している。
 現在に於ては,ハイラインの蕃殖家は4つの鶏の蕃殖飼養農場−即ち,アイオワ州のジョンストン,ダラスセンター,ウオーキー及びニューヨーク州のサウス,サレムーで研究活動を行っている,彼等は各々の蕃殖鶏に対して19の経済的特質に関して記録をとっている,現在ハイラインは唯開始されたばかりである,従ってあたかも雑種玉蜀黍が年々改良されている如くにハイライン鶏は益々改良されて行くだろう。

 Hy-Cross Hatcheryのカタログより
(A. Department of pioneer-Hi-Bred Corn Company, Des Mes Moines. Lowa)