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昭和28年 回顧と抱負

和牛

 国といわず,県といわず,目新しい画期的な事業もなく,なお,従来の仕事すら縮小に縮小を重ねるような現今の経済状態であり,社会状態である。
 本県和牛界にとっても,毎年ほぼ同様の道を牛の如く歩みつづけているとはいえ,抱負だけは大きくもち,又この大きな抱負を実現すべく努力することが,我々技術陣営にとって唯一の生甲斐であり希望である。

 一.全国和牛共進会開催について

 本年和牛の抱負を語るにあたっては,先ず第一に来る10月広島市に於て開催される第1回全国和牛共進会から申述べねばなるまい。
「顧れば大正7年の春,山陰の一角から放たれたる征矢は確に和牛界の固陋なる門扉を射抜いたもので,全く画期的なものとして吾人の脳裡に深く刻まれた出来事である。この点に於て鳥取県から当時の農商務者に提出された和牛の標準体型制定に関する申請書は,和牛改良史上永久に燦として輝く文献といっても宜しかろう。」
 以上は,羽部先生が著書「和牛の改良と登録」のかん頭に述べられた言葉であるが,此の征矢が山陰の一角から放たれてから実に30有7年,ここに始めて全国的な和牛共進会が催されることは,全く意義深いことである。
 本県においても,遠く千屋牛,高山牛,美甘新庄牛,奥津牛の昔より備作種を経て,今日の岡山牛に改良発展するまで,絶大な努力を払われた先輩各位の本共進会に対する期待と感慨は又無量なものがあると思う。
 終戦後,松江市並に鳥取県倉吉町に於て開催された再度の中国連合畜産共進会に於て,本県和牛が輝しい成績を収めたことは未だ脳裡に新たな所であるが,この感果を本年更に広島において一段と発揚し得るか否かが,和牛のみならず本県畜産にとって本年最大の課題である。
 特に主催が登録協会であり,審査実施にあたって従来の共進会と相当異っている点もあるので,早々に具体的対策を樹て,厳密な選抜検査と細心な育成上の研究指導を期する考えである。
 しかしながら出品牛については,体型上の面より,むしろ育成技術如何にかかっている点が多いのであるから,育成家諸賢の一層の御努力を願って止まない。なお今後具体的な方法については登録協会支部,各種畜場並郡畜連,育成家と協調万全を期したい。

 二.生産検査

 本県和牛の改良増殖と消費流通の面から確固たる施策を遂行してゆく上に県営生産検査を実施するということは,昨年春の畜産審議会においても大方の同意を得たところであるが,各郡畜産団体或は生産者等微妙な点があるので早急な実現は困難と思うのが,特に各界一段の御協力を願いたい。

 三.改良施策について

 画期的な登録改正より既に2年,此の間登録並に高等登録頭数は全国第1位であり,賢実な記録と厳密な審査が行われ特に不良遺伝因子の除去については一貫した指導と当業者の真けんな協力により着々とその成果があがりつつあることは誠に喜ばしいことである。
 体型的な改良は勿論,こうした不良因子の排除にあたっても,種雄牛のもつ使命は極めて大きい。
 現在,県有として配置されている種雄牛は全供用数の約6割であるが,この選択にあたっては系統的に厳密に調査すると共に,蕃殖に供用後は不良因子の現出に留意し,遺伝質の改良上細心の注意を払っている。

 四.利用販売方策

 家畜市場は関係法令が廃され,夫々自主的な開設に委ねられていたが,昨年10月家畜市場運営協議会が結成され,顧客誘致並びに販売面に常に連絡協調が保たれることは,先ずもって一進歩である。
 一方せり市場においても,昨年新しく実施された有畜農家創設事業に基く和牛導出の関係,各市場の整備,開設日割の改正を願ったため,各県の購買も概ねスムースに運んだが,なお,せりの方法,名簿の作製,非売牛の入場等,畜連及び当業者各位の一層の改善を望みたい。又他県購買者に対して市場のあん分を考慮し,価格の不当な変動を防ぎ,購買の便宜を期する計画である。
 次に利用の部門,殊に肉の面については,今後の需要の増加と,和牛消費の上から肥育事業の推進を計りたい。
 肉牛の目標は近く制定される肉牛審査標準に副うのは勿論であるが,生産地としての特殊性にかんがみ,一般的には飼育経済の上から高級,大貫物をねらうより,むしろ大量的消耗部門を対象とした方向に置きたい。殊にこの点よりヌキの肥育について一般のかん心を深めたい。
 しかし,本年においては広島市で開催される連合畜産共進会に備え,種牛同様厳密な選抜と肥育指導を行って,前回成績の更新を期している。特に肉牛家各位の御奮意を願う次第である。

 五.蔓牛の造成

 本県の最北端,阿哲郡千屋村並びに新郷村の両村にまたがって和牛改良上最も困難な蔓牛造成の仕事が続けられている。竹の谷蔓牛改良組合がこれである。新郷村竹の谷に全国最初の蔓牛が生れて170余年目にあたる昭和24年にこの組合がここの声をあげてから早くも5年目の春を迎えた。この事業も今尚認定種雄牛の設置を見ず,全く足踏み状態である。しかし反面,蔓牛調査委員によって認定された副雌牛20数頭と基礎牛については,体型並びに遺伝因子の面において着々整備され,しかも前回中国連合畜産共進会に於て優勝した第六清国号による蕃殖が相当成果をあげていることは,何としても喜ばしいが,今後数年に亘って父娘交配による試験を経なければならない。全く長期且つ困難なこの事業の成功を望むことも本県和牛の期待であり,年々変らない抱負である。
 以上簡単に述べたが,特に有畜農家創設事業に基く和牛移出の問題(別記)や例年行政施策として予算化される共進会種雄牛の設置,人工授精の普及,種畜検査実施等は,本年においても相当重点的な配慮を続けてゆくつもりである。