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昭和28年 回顧と抱負

養鶏

(一)昭和27年の回顧と新年度の見透し

 昭和27年を顧みれば飼料高,卵価安,初生雛生産3割減から来る採種期間の短縮等々採卵経営といわず,種鶏経営といわず,孵卵業といわず,総べての関係者が経済不況に明け暮れた受難の年であったが,新年度の業界展望にあたり昨年度の上半期から下半期に亘る客観状勢の2−3を捉えて判断の資としたい。
 第一は昨年の春から秋にかけての育雛羽数は前年度の7割程度に激減し,加えて飼料高,卵安で所謂戦後派養鶏家や家庭養鶏は採卵鶏をも放棄するなど相当の飼養羽数が整理されたということ。
 第二は昨年の上半期は飼料事情が非常に逼迫し,例年飼料価格が底をつくという7−8月頃の底落状況が,短期間は急騰したが,麦類の統制撤廃に伴い副業養鶏家は手持麦の活用により特別の買漁りもなかったためと,本年産穀類の予想以上の出来栄えに加えて海外の麦類,玉黍蜀の収穫高は近年穂に見る豊作で,海外市場も12月迄漸落歩調を辿り,飼料輸入の見透しも楽観視されるようになり,従って内地市況も軟弱な気配を示しているということ。
 第三は初夏以来卵価は暴騰暴落の兆が少く,比較的安定したカーブを画きつつ漸次上昇線を辿っており,又特需用鶏卵も月を経るに従って軌道に乗りつつあるということ。
 甚だ皮相ではあるが,以上の客観状勢から推して本年の養鶏経済は好転するものと期待されるのである。

(二)種鶏家と孵化業者との一体化

 両者は共に養鶏界の指導的立場にあり又その振興上基盤となるべきもので,相互の関係においてはお互いに死活の線上を同一方向に進退するものであることは今更言を俟たないが,兎もすれば両者間において物議を醸す場合がある。
 卑近な例であるが,全国一流の養鶏地帯である某県では,昨年採種期間の短かった故をもって種養家は種雄を全面的に放棄し,孵化業者も一向にこれを顧みなかった為め活況を期待される来春の孵化操業期に入ってテンヤワンヤで種雄探しに奔走しているが如きは,如何に養鶏受難の年とはいえ,双方共に何んとか対策を樹てようもあったものにと思われるのである。ましてこれが全国に流布されては全国一流をもって任ずる某県の初生雛の販路も各移入県より締め出しをくうことは明らかなことで,大いに他山の石としたい。
 幸い本県は昨年の養鶏不況にも拘わらず昨年の県認定種鶏12万羽は15万羽となり,孵化能力を遙かに上廻る戦後最大の種鶏陣容を整え,心ある孵化業者は種雄鶏の共同育成を実施するなど本春の孵化業者に遺憾なきを期している。しかしこれら1,000戸に余る種鶏場と50ヶ所を超える大小孵化場がそれぞれの型態をもって孵化場対種鶏場の関連をもち,その総べてのブロックが理想的な結びつきであり,且つ理想的な運営がなされているとは断じ難い。
 兎角,種鶏家と孵化業者は不離一体のものであり,その最高最大の共同責任は強健多産の初生雛の生産販売であり,それによってのみ始めてお互いの目標である利益分配が斉らされる。
 それが目前の利益擁護が先決問題であったとすれば,大孵化場の夢が一期にして破れたり,種鶏家対孵化場のいざこざ問題に発展する場合が多く,お互いが恒久的な利益擁護のため相互の理想的結びつきの型態及び如何にすれば需要家の満足する雛の生産が出来るか,お互の組織の上に立っての長期計画をじっくりと考究し実現すべきである。
 県も又鶏種の改良事業は孵化場と種鶏場の共同責任であるという基礎的な考え方から既往の組織的改良機構なり,種雛の配付方針,種雄鶏共同育成事業,産卵能力検定等に再検討を加え,孵化場を中心とした種鶏改良ブロックのそれぞれが資質,経済両面に亘り愈々発展するよう努めたい。

(三)協同事業の推進

 昭和27年における本県養鶏界のヒットは,何をおいても養鶏農協連の誕生で,戦後7年待望久しくして漸く経済団体としての第一歩を印したのである。
 会組織の内容は未だ完璧のものとは窺えないが,斯業の協同化について関心の深い会員のみの結集であり,爾後の事業運営の適切により逐次末端組織の強化育成も可能であろうし,新会員の加入も増加し,名実共に本県の一元的養鶏連合体として養鶏家の利益擁護に活躍して頂けるものと期待されている。
 事業運営の重点は差当り飼料の共同購入に指標をおいているようであるが,これは過去1ヶ年に2,000トンの取扱い実績をもち,もはや相当の経験と信用とを獲得している。
 しかし生産物の主要を占める鶏卵の取扱いについては一応事業計画に盛られてあるというものの,その前途には幾多の難関も横たわり,容易ならぬものが予想されるが,これは既に末端の有力町村農協において相当の取扱い実績を有する組合も少くなく,その運営に宜しきを得たならば比較的容易に軌道に乗るものと思われる。しかし飽迄も末端組織の強化と平行して,当初は確実な少範囲のものから出発し,逐次拡大して行く忍耐と遺漏のない準備が必要である。
 元来養鶏連の主要目的は生産物の処理販売がその重要使命として認識されて来ている以上は,鶏卵の共同出荷が軌道に乗らないうちは養鶏連としての性格は明確にならないし,100万羽を擁する本県養鶏産業の組織的発展は期せられない。況んや本県産鶏卵が消費市場において面目なくも二流品として取扱われている現在最も緊急の要務であり,速みやかに養鶏連の本事業に対する方策を消費市場は勿論のこと,関係方面の衆智を結集してその具体策を講じ,関係機関にその趣旨と方法を明らかにすることが望まれるのである。