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昭和28年 回顧と抱負

家畜衛生

 ここ数年間は家畜の伝染病が流行して畜産界も相当打撃を受けている。特に流行性感冒,流行性脳炎,豚コレラ,ニューカッスル病と数え上げて来るとその被害は殆んど全県下に及び,予防衛生の必要を痛感させられたのであるが,幸い27年は家畜保健衛生所の完成と,予防注射の徹底と,適宜の防疫措置により一部に豚コレラが発生した程度で,大した伝染病の発生もなく終ったことは幸いであった。然し半面人工授精の普及に伴い繁殖障害の発見も多くなり,特に新興酪農地帯にこの傾向が強いことは注目すべき点ではないかと思われる。
 28年はこれ等27年度の成績及び近県の伝染病発生状況等をも考慮して重点的予防対策を樹立し,損害の防除に努力する予定である。

一.予防衛生

(1)豚コレラ

 昨年吉備郡に18頭の発生を見たが,隣県鳥取,島根には相当数発生し,特に島根県では年末近く迄発生して多大な損害を与えているが,交通関係その他から見て本県にも侵入の恐れが多分にあるので,本年は特に豚コレラの予防に重点を置く考えである。

(2)ニューカッスル病

 一昨年後月郡に発生し,本県養鶏界に大恐慌を与えた本病は,防疫陣の活動により最少限度に喰い止めることが出来,昨年も引続き予防注射を実施して来たが本病の発生が本県養鶏界に及ぼす影響を考え,本年度も引続き予防注射を実施して,発生防止に努める。

(3)流行性感冒

 過去3ヶ年に亘り大流行を来し惨害を与えたが,幸い昨年は予防注射を実施したので,1頭の発生も無く経過したが,本病も過去の発生歴史より見て本年は大体大丈夫と思われるので,今年は一部必要な方面にのみ予防注射を実施し,他は警戒にのみ止める予定である。

(4)気腫疽

 本病は北部放牧地帯に常在し,毎年発生していたが,近年は殆んど発生は無くなったが,まだ散発するので,放牧牛に対し予防注射を実施する予定である。

(5)流行性脳炎

 本病は人間の日本脳炎とも関連性があるが,昨年は人間の方の脳炎が相当発生して居り,又本県に発生は無くとも,中国地区を移動する競走馬には発生の危険があるので,競走馬を対象として予防注射を実施する予定である。

(6)馬の伝染性貧血の検診防遏

 競走馬に発するので,検診を厳重に実施し,慢延を防止する。特に競馬場の新設に伴い,新厩舎の建設も考えられるので,この際伝貧馬は一歩も入れない様対策を講ずる予定である。

(7)寄生虫の駆除

 近年各種寄生虫による被害が相当大きくとり上げられ,特に良質駆虫薬の製造と共に寄生虫に対する一般の認識も深まっているので,本年は各衛生所を総動員して一斉に寄生虫の検査を実施し,駆除に努力する予定である。

(8)結核病

 毎年定期的に実施しているが,最近牛の移動が激しくなり,他県より未検査牛の移入も発見されるので,新興酪農地帯の擁護をも考え,本年は特に未検査牛を生じない様,検査の徹底を図る予定である。

(9)白痢検査調

 県の養鶏羽数は戦前を凌駕する迄に発展し,孵卵事業も盛んになり,年々県外へ70万羽の移出を行っているので,白痢の検査は厳重実施し,本県産雛の信用を確保するように努力する。

(10)腰麻痺の予防

 有畜農家創設事業に伴い,本県の畜産奨励の面に於ても中家畜に重点を置いている為め,最近緬,山羊が著しく増加して来たが,依然として腰麻痺が多発し,相当の被害を与えているので,本年は特に本病の予防に力を入れる予定である。

(11)その他

「ブルセラ病」「トリコモナス病」「鶏の伝染性下痢症」についても,随時検査を行い撲滅を期する予定である。

二.生産増殖

(1)人工授精関係

 家畜改良増殖法により人工授精師の養成を行う反面その質の向上を図り,種畜場,衛生所及び民営の人工授精所を有機的に統合し,相互の連絡を密にし,受胎率の向上を図る。

(2)蕃殖障害の除去

 衛生所を活用し,極力発見に努め,早期に治療を実施して障害を除去し,受胎率の向上を図る。

三.家畜保健衛生所関係

 衛生所の整備を行い人員を強化すると共に,機動力を備えて活動範囲を広くし人工授精の円滑化を図り,蕃殖障害の除去と併せて,生産率の向上に努力する他一般衛生方面の指導,伝染病の予防措置,寄生虫の駆除等全面的に活動を行い,衛生所の存在価値を認識して貰う様に努力する予定である。