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昭和28年 回顧と抱負

競馬及び馬産

競馬

公営競馬の在り方

 競馬の本質と在り方について,現行の国営(又は公営)がよいとか民営にすべきだとか種々とりざたされているが,農林省競馬制度審議委員会(各界から委員40名を銓衡)が5日間に亘り論議された結果は,一応次のように取纒めが出来たようである。
『今日の国営競馬は出来るだけ速やかに民営に移すこととし,その施行主体は全国一本公共性の強い特種法人とする。』
『地方競馬の問題は現在のままとし,民営移管について研究立案する。』
ということである。
 何れこの問題については農林省案が出されるものと考えられるが,公営競馬の各主催者として,ただ傍観するわけがなく,断乎民営反対の線でおしきるものと思う。
 競馬の本質は飽くまで娯楽スポーツでその収益金は畜産振興,地方財政に寄与しなければならない。
 今日の公正明朗競馬の開催は公営競馬が確立した大きな功績でもある。その収益金は何等かざりなく公共事業に使われ畜理振興戦災復興に寄与してきたことは万人の否定することが出来ない厳然たる事実でもある。
 この実績よりして昭和28年こそ,絶対公営競馬態勢確立の年でもある。

 岡山競馬移転新営の問題

 御承知の通り岡山(原尾島)競馬場は見る影もなく不朽し,これが維持開催は困難な実情である。大々的改築か他に近代的諸設備を整備した競馬場として移転すべきかの問題が本格的に起きたのが26年で,これが候補地として第一に旧練兵場跡,第二候補地として岡南福島地区を挙げられたが,第一は総合グランドの計画があり,岡南地区も又,工場誘致の対象とされているため(商工会議所等の難点があり)何れも放棄の止むなき事情となった。第三は福島藤田産業所有地が一応考えられたが,会社側の示された土地は幹線道路から離れており,又調査の結果地盤脆弱で技術面より見て不適当の烙印をおされ,従って競馬場候補地も行きつまりのかたちとなり『競馬場よ何処に行く』といった状態だった。
 ところが本年7月中配三蟠発電所所有地石炭滓捨場を漸く物色し,爾後基礎的調査を行ってきた。同地は面積4万余坪東南に面し風光明眉リクリエーションの地として最高地といい得られる。ここに理想的の競馬場の施設が出来あがれば,三蟠地区も大きくクローズアップする日が来ることである。
 されば28年こそ,近代感覚の競馬場を設置し,従来の凡ゆる不備な点を一新し,楽しめる競馬場を実現したい。
 又,躍進岡山競馬の売上5千万円の夢をも同時に実現したい。

昭和27年県営競馬成績

回    数 開  催  月 入 場 人 員 売  上  高
1 3   月 9,084 32,688,400
2 5   月 6,341 30,659,100
3 9   月 7,882 26,884,700
4 10   月 5,589 32,120,600
28,896 122,352,800

馬産

 外人記者ヘッスル・テイルトマン氏は多くの日本人が民主主義と無秩序とを混同していることを指摘している。同氏は又,『日本人の時計の針を逆にまわしている』とも直言している。戦後事更に反動が激しかった事にもよるが,逆行した行き方のものも相当ある。
 畜産界の馬の如きもその例の一つであり,時計の針を逆に廻したともいってよい。種馬所種馬牧場等のつくものは徹底的に処分され,馬関係省まで特別にホースマンなどという言葉であしらわれた。
 しかし,完全な独立国家として日本も再出発した今日,どうやら馬も陽光を浴びて27年から国でも種馬の外国購買の実施,又各県への種雄馬の貸付も充分とはいかないが実施するようになり,正常な針の動きを示してきた。これからは馬も又高らかに嘶くことができよう。
 さて,岡山県の馬であるが,現在蕃殖可能牝馬1,200頭に配するに種馬11頭を繁養しているが,27年において3才種雄馬の国有貸付を受けたことは戦後初めてで,特筆に価する。
 更に県有種雄馬1頭を北海道から購買(11月末)したので2頭の新鋭馬が28年から蕃殖に参加することになり,これ等の産駒に期待するところが大きい。
 次に競走馬の資源の問題であるが,今日競争馬最大の難点は馬資源の不足である。この原因は蕃殖牝馬の激減と地方競馬回数の過多によることで,資源を考えないで舞台のみを廻している競馬主催者は,この問題を真剣に考えねばならぬし国としても等閑しておくべきではなかろう。
 そこで本県としても幾分なりとも資源緩和のため,又一方競馬発展のために軽種々雄馬を繁養し,競争馬の生産育成実施の計画をもっている。
 やがてこの計画が実現すれば,若々しい県内産馬レースの施行により,岡山競馬に新しい息吹きをもたらすこととなろう。
 次に馬の有畜農家創設事業であるが,本年は購買時期割当が第3,4半期となったため,購買申込者の中には,中金資金にたよらず自己資金をもって夏に購買した向も可成りあり,又県内産購買に転換申出等があり、終いに北海道よりの導入は不可能となった事は甚だ遺憾であった。
 将来の岡山産馬を考えるとき,基礎雌馬となるべきものを北海道から導入することが望しいので,28年度には購買時期を7月とし,出来得れば当業者の協力によって基礎雌馬の導入を計りたい念願でいる。
 最後に28年最大の畜産行事である中国連合畜産共進会出品馬については,何れ新春ともなるとぼつぼつ銓衡の準備にかかる事となろうが,一朝一昔に優秀馬が出来るものでないことを心して,今からこの冬の育成飼養管理に万全を期さなければならない。連合共進会等三連勝が果して得られるか,この実現こそ28年にかける最大のものである。