ホーム岡山畜産便り > 復刻版 岡山畜産便り昭和28年1月号 > 有畜農家創設事業の歩み

有畜農家創設事業の歩み

 本年度から実施された有畜農家創設事業が,如何なる実施内容をもって我が国農業の有畜化に臨んでいるか,それは構想において極めて秀れているが,此の事業の具体的実施手段及びかかる事業を盛り立てるに必要且つ充分な社会的経済的な面の施策については,各人様々の意見希望が続出していることは周知の通りである。
 ともあれ,事業開始後既に上半期を終り,更に先般,農林省において下半期における家畜導入資金融資額の補正が行われて今日に及んでいる。
 では本県の家畜導入及び導出の概要はどうであろうか。
 稿の順序として,当初本県に割当された各家畜の融資借受額をふりかえってみれば,第1表,第2表の通りである。
 此の様な農林省指示枠に基づいた各家畜導入状況はどうであったかと言えば,総括して極めて不振であったという一言につきる実状で,第3表にみられる如くである。
 ただ緬羊にあっては,県外からの導入であり,且つ市場の開催期がいわば固定的である関係上,シャニムニ購買を行い頭数において86%を導入している。

(第1表)年間各家畜融資借受額(単位 千円)

乳    牛 和    牛 め  ん  羊 合 計
金 額
頭 数 金 額 頭 数 金 額 頭 数 金 額 頭 数 金 額
200 9,933 1,000 25,025 50 1,251 800 5,298 41,507

(第2表)上半期(4月〜9月)各家畜融資借受額(単位 千円)

乳    牛 和    牛 め  ん  羊 合 計
金 額
頭 数 金 額 頭 数 金 額 頭 数 金 額 頭 数 金 額
90 4,470 400 10% 0 0 700 4,636 19,116

(第3表)上半期における家畜導入状況

家畜別 乳     牛 和     牛 緬     羊
融資額
農林省指示枠 頭数 90千円 (100%) 400千円 (100%) 700円 (100%)
融資額 4,470 (100%) 10,010 (100%) 4,636 (100%)
実績 頭数 30千円 ( 33%) 150千円 ( 37%) 603千円 ( 86%)
融資額 1,484 ( 33%) 3,490 ( 34%) 3,303 ( 71%)

(第4表)上半期における家畜導入資金の資金源(単位 千円)

家畜別 乳     牛 和     牛 緬     羊
資金源
総資金額 1,484 (100%) 3,490 (100%) 3,303 (100%)
中金資金 1,484 (100%) 1,950 ( 56%) 1,512 ( 46%)
農協資金 1,540 ( 44%) 1,791 ( 44%)

註 ( )は第3表に同じ

(第5表)有畜農家創設事業に伴う和牛移出状況(11月10日現在)

移 出 県 移出頭数 家畜代金
千円
福井県 180 7,380
愛媛県 60 2,280
香川県 100 3,946
岩手県 120 5,160
佐賀県 34 1,515
静岡県 40 1,600
千葉県 60 2,580
福岡県 60 2,559
宮城県 190 8,360
山形県 100 4,500
栃木県 150 6,600
1,094 46,480

 乳牛については,一部農協の融資手続の不備のため33%の頭数を導入しているにすぎない。
 和牛については,全頭数が県内でまかなうことになっており,このため各農協が呑気に構えていた為であろうか37%の頭数導入である。
 なお,山羊,豚については,融資額の過少と金利補給のないため,導入農協は1件もない状態である。
 以上が上半期即ち9月迄における導入事業の概要であるが,既に記した通り,その進捗は低調であり,此の原因を探るならば,十指に余るものが横たわっている。
 しかしながら最も主要な因は,農協の消極的な態度があげられるのではなかろうか。勿論このことは,農民のために満足されそうにもない施策であること,及び何かと面倒な手続を必要としていること等の障害がその源をなしているものであると言い得る。
 あえて,その責を農協に荷するものではないことを記して,和牛の県外移出の面にうつってみよう。
 有畜農家創設事業に基く本県和牛の移出については我々として最も力を入れざるを得ない問題であるが,移出県は大約19県,頭数にして約2,700−2,800頭である。11月10日現在の移出状況を表示すると第5表の通りである。
 なお現在,続々と県外からの購買者が来県し,北部の家畜市場において,購買がなされている。
 以上が上半期における家畜導入並びに和牛の移出の概要である。
 下半期における導入状況については,未だ10月,11月と2ヶ月を経過しているだけであるので,結論までゆかないが此の2ヶ月間の状況にふれてみよう。
 先般の全国畜産課長会議(10月3,4日)において,下半期における家畜導入の補正割当並びに管外導出入計画の調整が行われたが,これは上半期における夫々の家畜についての消化の能力,成績等に応じて,4月2日に割当された年間の枠が配分されたわけである。
 これに基づく本県の枠は第6表の通りである。
 処で,10月,11月の2ヶ月間における家畜別導入頭数並びに融資額の消化状況は第7表の通りである。
 以上の如く,その歩みは遅々たるものであるが,それにしても,無畜農家が有畜化されつつあることは喜ばしいことである。
 此処で,これらの家畜が農家の如何なる階層に導入されているかということに触れてみるのも無意味ではあるまい。
 即ちその概要は第8表の通りで(勿論緬羊については500頭,和牛400頭,乳牛100頭,馬10頭,程度の過少な導入頭数から算出したわけで,その概要を知るに,不完全の謗をまぬがれない)何れの家畜を問わず五反乃至一町五反の農用地を持つ階層が圧倒的な導入を試みている。
 この導入状況を第9表,第10表に表示した有畜化及び家畜飼養農家の割合に照してみると色々な問題が取り上げられると思うが,此の点については別途稿をあらたにして述べたいと思う。

(第6表)下半期(10月〜3月)各家畜融資借受額 (千円)

区  分 購入地 乳   牛 和   牛 め ん 羊 合  計
頭数 金 額 頭数 金 額 頭数 金 額 頭数 金 額
第3・四半期補正割当 管内 135 6,711 845 21,185 10 250 97 642 28,788
管外 60 2,980 2,980
195 9,691 845 21,185 10 250 97 642 31,768
第4・四半期補正割当 管内 75 3,726 300 7,508 11,234
管外 20 993 993
95 4,719 300 7,508 12,227
合  計 290 14,410 1,145 28,693 10 250 97 642 43,995

(第7表)10月,11月の家畜導入状況(千円)

家畜別 乳    牛 和    牛 緬    羊
融資額
3,四半期割当 頭数 195 (100%) 845 (100%) 10 (100%) 97 (100%)
融資額 9,691 (100%) 21,185 (100%) 250 (100%) 642 (100%)
10,11月の
枠消化実績
頭数 70 ( 36%) 317 ( 38%) 10 (100%) 27 ( 28%)
融資額 3,400 ( 35%) 7,487 ( 35%) 220 ( 88%) 171 ( 27%)

 註 ( )内は割当枠に対する頭数及び融資額消化率

(第8表)農家階層別家畜導入状況

家 畜 乳    牛 和    牛 緬    羊
農用地面積
5反以下 4.8% 12.6% −% 15.8%
5反〜1町 40.4 68.6 43.2
1町〜1町5反 47.1 15.2 90 30.5
1町5反〜2町 6.7 1.3 10 8.8
2町以上 1 2.3 1.7

(第9表)農家階層別有畜化率
昭和25年2月1日農業センサス

5 反 未 満 5反以上〜1町 1町以上〜2町 2 町 以 上
有畜化率 13.4% 71.1% 93.9% 95.2% 54.9%

(第10表)農家階層と家畜飼養農家の割合
昭和25年2月1日

3反未満 3反〜5反 5反〜1町 1町〜2町 2町以上 例外規定
農家戸数 20.3% 17.9% 34.7% 22.3% 4.7% 0.1%
和牛 4.2 25.6 66 86.7 92.7 0
乳牛 0.2 0.8 1.5 1.6 0.6 8
0.5 1.2 2.2 5.4 6.6 0
緬羊 0.1 0.3 0.4 0.7 0.9 0.5