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巻頭言

思い出すままに

惣津律士

 長い冬が漸くすぎ去って日1日と春めいて来た。春は人にも家畜にも何よりたのしいものである。
 農林省畜産局の来年度予算を見ると酪農の振興と牧野の改良が大きく取り上げられている。
 酪農振興対策の新しい事業としては国は集約酪農地区2ヶ所を設定して,ここに乳牛(ジャージー種)600頭を海外から輸入して集団的に貸付せんとするものであって,上に関しては各方面から多大の関心が寄せられている事は事実である。更に27年度から実施中の有畜農家創設事業に於ても乳牛頭数の枠の増加を企図しているのが見られる。
 次に牧野改良の面では従来の管理牧野,保護牧野の外に新に酪農を対象とした高度集約牧野なるものを設定して,助成の対象としている事であって,あれこれ思うとき,今後の畜産振興のあり方については我々としては大局的見地に立って,この際真剣に検討するの要ある事を感ずるのである。
 山林,草地が畜産に依って高度に集約的に経営せられねば,日本産業の進展は期し得られない現状に於て,これと我々畜産人が取つくんだ場合に於て,あまり政治力に於て畜産が貧困である事を痛憤するものは私のみではあるまい。
 畜産が飛躍する事はとりも直さず国民生活が豊かになり,国がさかえる事である。この厳正なる事実が一般に認識せられてはいるものの,国会に於て,正しい畜産の振興のために献身している純粋の畜産人があまりに少数である事は甚だ遺憾である。我が畜産人の政治力の結集こそ,何物にもまさる力であって,畜産振興をはばむ隘路は上に依って容易に解決し得るものである。
 我々畜産人はこの際上の点をもっともっと考えて努力すべきではなかろうか。