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鶏の受精力について

 愈々孵化シーズンとなり指定種鶏場の業務は一層多忙となって来た。折角,生産された種卵が受精率や孵化率の低下で採算面にも大きな影響を蒙る場合がある。特に種鶏家としては受精力に対する正しい認識は重要であるので米国のオレゴン州農事試験場発行の種卵の生産」という会報に受精力に関する詳しい説明があるので,これを登載して参考に資したい。
 ………授精は排卵して間もなく喇叭管の前部で産卵前約24時間の時に行われる。
 孵化場の人は誰でも知っているように受精卵は全部孵化するわけでなく授精後短時間で胚が死亡するものや孵卵中の各時期に死ぬものもある。実際には受精は入卵してから透視して調べ,透明なものを無精卵とするがこの透明卵の中にも早期に胚の死亡したものがある。
 卵の授精には多数の因子が影響することが判ったし遺伝因子の関係があることも周知の事実であるがここではその他の一般的事項について説明する。

(一)配雄比

 種鶏に配した雄の相対的羽数の影響については,オレゴン農試の3ヶ年以上に亘る研究により興味ある結果が出されている。
 ニューハンプシャー種では雌100羽当り6−7羽の雄で終始高い受精力を確実に保ち得る。多くの場合3−5羽の少数の雄でも受精率が高かったし雌100羽当り只1羽の雄を交配した2群に於ては受精率は73%と83%であった。このことは非常に価値のある雄の場合には非常に多数の雌に交配して,その雄の子孫を大いに増殖することができることになる。
 白色レグホーンについては雌100羽当り雄5羽を配すれば受精力の高い種卵が生産されるといっている。それ以上多数の雄を配すると受精力を減退させ易い,これは互いに妨害したり闘争したりする為で特に舎飼の場合に著しい。雑種蕃殖の鶏群(暗色コーニッシュ♂×ニューハンプシャー♀)の場合には雌100羽当り5−6羽の雄を配した時も11−12羽程の多数の雄を配した場合と同様の高率な授精率を示した。自分の処の種鶏と異った系統又は内種の雄を交配したい時には種鶏家は種卵又は初生雛でその雄を購入しなくてはならぬ。
 交配に使用する雄1羽につき2−3羽の雄雛を餌付すべきである。養鶏場へ成鶏雄を移入するときは病気の導入に注意しなくてはならぬ。

(ニ)受精力の開始と持続時間

 相当に高い受精率は普通配雄後1週間であるが最高度の受精は2週間後でなくては得られないであろう。オレゴン農試のニューハンプシャー種についての試験結果によると雌100羽当り9羽の雄を配した場合には最大の受精率になるまでに9日,4羽の雄の場合には16日を要した。多くの場合雌は交尾,又は人工授精後30日間も受精卵を産むが,受精力は通常交尾後3−4日で低下し始め7日以下急速に低下する場合が多い。満足する程度の受精は雄を除去した後,1週間以上は持続しないであろう。異常な場合を除き雄は産卵を採取する限りは鶏群につけて置けばよい。

(三)冠や肉髯の除去

 種雄の冠や肉髯の除去により受精力の増加を図ることは既に周知の通りである。

(四)雄の年令

 種鶏としては少く共,孵化後6ヶ月経ってから種鶏に配しなくてはならない。レグホーンやニューハンプシャーの早熟性の系統では,それ以下の若いものでも受精力のよいものがあるが又これらの品種や他の品種の晩熟のものは7−8月経たないと最大の受精率には達しない。発育中の若雌では冠が最も大きなものが他のものより早く性が成熟する。

(五)季節

 晩夏や秋は2才鶏(満1才)の受精力は屡々低下する。この受精の低下は長期間産卵を続けてきた雌は受精が困難になるという事実に特に基因しているということが明白になっている。又2才雄(満1才)の精虫の生成も秋には減少する。老雄では受精力は春まで恢復しないであろう。このことが老雄の代りに若雄を使う理由の1つとなる。………雄の精虫の生成は雌の産卵と同じく日照時間に関係すると言われている。
 大体以上が受精力に関する一般的な注意であるが折角受精された種卵もその貯蔵場所の状態(特に温度)により胚が凍死したり入卵しても発育中止を起す場合があるから注意を要する。なお最近では抗生物質やヴィタミンB12の給与により孵化率が相当向上する由,日本の試験機関でも報告しているし特殊飼料として芽出し麦の利用は体重,産卵,孵化率の増進に効果があることは実際家の既に認めるところである。