ホーム岡山畜産便り > 復刻版 岡山畜産便り昭和28年3月号 > 家畜共済の一元化

家畜共済の一元化

 家畜共済の制度は,死亡廃用,疾病傷害,生産共済の3つに区分されていることは御承知の通りであるが今度の計画は死亡廃用と疾病傷害共済を1本にすると言うことである。
 これについていろいろ考えて見ると,死亡廃用共済の対象となるものは,県下で約11万頭をかぞえ(中家畜を除く)これの1.5%が年年へい死又は使役に耐えなくなっている。即ち1,650頭平均価格を4万円としても6,600万円でこれの8割補償として約5,300万円となるのである。疾病傷害共済の分野から考えると,家畜の疾病率は,大体15%でありその頭数は,16,500頭となり1頭の治療費の平均は,1,200円程度であるから農家の負担は1,900万円と考えられる。
 そこで政府は,前述した様に死亡廃用共済と疾病傷害共済を一元化してこうした農家の負担に対して補償制度をしようと考えたのであるがなおこれに重大なる原因は,大体の家畜がへい死する前には疾病に罹り治療を受けると言うことでこの疾病を充分治療して早期に全快させることは,疾病の率を下げ,合わせてへい死率の低下をもたらしてこれ等の共済掛金を引下げることにより農家負担を減少し共済制度を充実する目的である。
 然しながらこれを即座に実施するには色々と障害がある。例えれば共済の制度が未だ充分徹底していないこと,診療施設のない処等があり差し当り昭和28年度より試験的に好条件の地区を指定して実施することになった。

指定基準

一.昭和27年12月末現在で県下の牛馬の疾病傷害共済加入頭数が死亡廃用共済加入頭数の80%以上である県の共済組合
二.一の期に疾病傷害共済の共済金額を乙種に定めている共済組合
三.一の期において牛馬の有資頭数が100頭以上でその70%以上が死亡廃用共済に加入しかつ疾病傷害の加入が死亡廃用共済加入頭数の70%以上の共済組合及び50%以上加入の組合の一部
四.その他の組合においては希望があれば1支部1組合程度
 さてそこで実施組合の指定は,上の基準でされるが実施された結果は,次の様な3種の方法で計画されるがこれは,実施組合の選択による訳である。

共済の種類

A.診療費の内薬価,消耗品を共済の対象とするもの。
 これは,治療費の内薬品及び消耗品費(約40%)を補償の対象とするもので残の60%は,これは人件費で農家負担になり,この分を特別賦課金として初めに徴収して診療所を共同で設置すれば診療費は無料となる訳である。この方法で全国的には,数県実施しているが診療費の節約の点からも好成績を上げている。
B1.これは,従来の疾病傷害共済制度と大体同様であるが従来は,9割補償であったがこれが60%となりこれに伴って掛金の下ることは,勿論である。然しこれも死亡廃用共済と疾病傷害共済との掛金は,一本化され人件費の部分も合わせて徴収する。
B2.これはB1の補償率が80%となっただけでその仕組はB1の場合と同じことになる。
 以上の様になるが政府としては,これ等の場合に治療費の内薬品及び消耗品費(約40%)に相当する部分に対する掛金の2分の1は,政府負担とすることになる。
 結論として実際農家にとってどうなるかと言うことになるとB1及びB2の場合は,死亡廃用共済と疾病傷害共済が1本になり掛金は,その一部を政府が負担する。
 Aの場合は,診療費の人件費部分(60%)の掛金は徴収しないから実際は,和牛では,死亡廃用共済の掛金に疾病傷害の掛金50−60円の2分の1(2分の1は国庫負担)を負担すれば共済の診療所のある処は,治療費が無料となる。
そこで問題となるのは,診療所の獣医師の人件費である。それを特別負担金で徴収するから数ヵ組合共同でやるか又は,補助金でもあれば農家負担は,著しく軽減されて来る。
 いずれにしても昭和28年及び9年の間に試験的に実施されるので円満な方法が研究されなければならない。
 なお,詳細な点は,3月末日までに研究して政府と協議し,4月から実施されることとなる予定である。