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種鶏の選択

一.系統の選択

 鶏の多産性は食卵の生産の場合と同様種卵の経済的な生産にも重要な要素であるから,この特性は強調しなくてはならない。系統により産卵性に変異のあることは周知のことであって他の望しい能力を考えずに若し孵化場がその種鶏の産卵の低いのを償うだけの充分な割増金を出してくれない限りは種鶏家は普通の産卵鶏の系統には満足するものではない。採卵鶏の更新用の雛を売る孵化場は単に産卵能力が高い許りではなく卵の大さ形卵殻質,内部の品質が望しい卵を産む系統の雛を販売しなくてはならないことは十分に承知している。種鶏としては良好な生存能力を有することが最も重要な要素である。
 孵化能力にも変異がありこれは遺伝するものであって多くの種鶏家はその品種の標準以上に孵化する系統を育成している。種鶏に孵化能力の高い系統を有つことは孵化場にとっても有利なことである。受精卵の孵化能力は遺伝するが受精能力は遺伝しないという意見が長年の間あったが多数の孵化場が認めている様に卵の受精にも系統間に明瞭な差異がある。最近の研究により受精力も産卵性や孵化能力と同様,遺伝することが判った。

二.近親蕃殖と雑種蕃殖

 強度の近親蕃殖は一般的には孵化能力の低下を来たすものであり又この説を支持する多くの研究もあるが多くの種鶏家は毎年,異系統の雄を欲しがる程,近親蕃殖について理由のない心配をしている。しかし種鶏を100〜150羽以上持っていれば通常大群間の近親蕃殖の度合は思った程のことではないから,近親蕃殖について特に考慮する必要はない。雑種蕃殖は屡々孵化能力を増すことが出来るが孵化能力の高い系統の場合は交雑によっても少しも孵化能力は増進しないであろう。

三.個体の選択

 種鶏群の確立には特に個体の選択に厳重な注意を払わねばならぬ。種鶏は雌雄共品種の標準に合致し嘴及び胸部の屈曲外向脚,瞳孔不整の灰色の眼などの様な重大な欠点を有してはならぬ。
 2才雌(満1才)を種鶏として残す場合にはそれまでの産卵の多い個体のみを選択しなくてはならぬ。病徴を呈するもの,体重不足の個体等は種鶏から除かねばならぬ。雄は活力のあるものを選べ,活力のない雄は負かされ易く且,種鶏群の受精率を殆んど向上させない。

四.若雌と成雌との比較

 若雌に較べ老雌のもっている利点はさておき生産種卵の大部分は若雌のものである。若雌は産卵がよい許りでなく卵殻もよい。老雌と若雌との孵化能力の比較についての研究結果は全部は一致していないが若雌の方が老雌のものよりも孵化がよいことを示している。

五.白痢検査

 種卵を生産する種鶏は白痢病であってはならぬ。種鶏を白痢の鶏群から求めてはならない。
 又白痢検査をしなくてはならぬ。
 孵化場は自分の種鶏家の種鶏の白痢検査を管理するが種鶏家が自分の鶏の白痢検査をしてもよい。

(……オレゴン農試,種卵の生産より)