ホーム>岡山畜産便り > 復刻版 岡山畜産便り昭和28年4月号 > 畜産技術講座 畜舎厩肥舎サイロの作り方(2) |
飼料サイロは有畜農家の必ず具備しなければならない施設といっても過言ではない。サイロは粗飼料─荳科植物,甘藷蔓等─の貯蔵に至極便利でエンシレージにして家畜に与えれば粗飼料の飼料価値を高め濃厚飼料の節約が出来る。
サイロには木材,石材,煉瓦造等があるが,コンクリート造はこれらに比して堅牢なばかりでなく,飼料価値を一層高める効果がある。型は角型のものと,円筒型のもの又地上式,地下式,半半地下式があるが,内地の農家用として最も恰好のものはコンクリート造の直径5尺位深さ7〜10尺位の円筒型半地下式の小型サイロである。
一.大さ 大さは家畜の種類,飼養頭数,1日の給与量,給与する期間等に依って決めることになるが,普通農家で牛を1〜2頭或は緬羊,豚など4〜5頭を飼っている場合は直径4〜5尺深さ7〜8尺位のものを造れば間に合う。サイロの直径と深さの関係はエンシレージ材料の詰込,加圧取出し等の便利上大体深さは直径の1.5倍〜2倍位とすることが適当である。
二.窖掘り 型と大さが決ったならば位置を選定して窖を掘る。窖の直径は型枠を据付ける場合に枠の外側を人が通行出来るように外枠の周囲よりも3,4尺大きく掘るか,外径よりも約1尺位大きくして同時に2ヶ所位人の屈み得る程度の掘出しを作る。
尚地下式又は半地下式とする場合に,外枠を用いないで内枠丈とし枠の大きさをサイロの外径と等しく掘ることがあるが,コンクリートが不経済なばかりでなく,堅牢なサイロが出来難い。
三.基礎工事 窖掘りが終ったなら底を平に均し底には玉石礫等を入れて搗き固めて,其上に4〜5寸位(15p位)の厚さにコンクリートを打込む。尚底面の1ヶ所に凹みを作ればサイロを水洗した場合に汚水の汲出しに便利である。
四.型枠 型枠の内枠と外枠を四方乃至6方として相互に連結して2つの円筒にする。内枠丈は各方の接する部分の内1ヶ所だけ2〜3寸角の角材を1本挿入して置いて型枠を取外す時に之を内側に引抜いて型枠の取外しを容易にする。据付の時に底部と塔部の密着をよくするために底に附着している土砂をよく洗い去って枠型を正しく据付ける。
枠がコンクリートに接する面にクレオソートか石鹸液を塗って置けば型枠の取外しに楽である。又外枠と内枠が接近しない様に上部に定規を入れて内部にコンクリートが落込むのを防ぐ為に蓋をするか内枠を外枠よりも2〜3寸高く作っておく。
尚型枠は1基毎に仮枠を組立てずに何回も使える組立式の型枠を農業協同組合等で作って農家が之を共同で利用すれば費用を軽減することが出来る。
五.コンクリート打 型枠の据付けが終れば資材所要量表を参照してコンクリートを作り型枠に搗き固め乍ら充填して行く。
六.その他 コンクリート打込後5日〜1週間を経て型枠を取外す。型枠は次回使用のため附着したコンクリートを掻落し,水洗して日蔭乾して置く。型枠を取外したらモルタルの上塗をする。底部と塔部の接目は角張らずに傾斜を付けて塗る。上塗りが充分固ったなら水を入れ数日間放置して「アク」を抜きそれから1ヶ月も経てば材料を詰込んで使用出来る。
(表)大さとコンクリート所要量 壁厚4寸の円筒形,単位立法米(立方尺)
深さ | 1.8m (6尺) |
2.1m (7尺) |
2.4m (8尺) |
2.7m (9尺) |
3.0m (10尺) |
3.3m (11尺) |
3.6m (12尺) |
内径 | |||||||
1.2m(4尺) | 1.07 (38.52) |
1.22 (43.92) |
1.37 (49.32) |
||||
1.5m(5尺) | 1.53 (55.08) |
1.72 (61.92) |
1.9 (68.40) |
2.08 (74.88) |
2.27 (81.72) |
2.45 (88.20) |
|
1.8m(6尺) | 2.29 (82.44) |
2.51 (90.36) |
2.73 (98.28) |
2.95 (106.20) |
|||
2.1m(7尺) | 3.21 (115.56) |
3.47 (124.92) |
|||||
2.4m(8尺) | 4 (144.00) |
上記1例
内径5尺,深8尺の資材量概算コンクリート 厚4寸
資 材 名 | セメント | 砂 | 砂 利 | 総 量 |
配合比 | 1 | 3 | 6 | |
資材量概算 | 8.29袋 | 0.81立方米 (29.10立方尺) |
1.60立方米 (57.59立方尺) |
約1.72立方米 (61.92立方尺) |
石油空箱ではかれば約 | 6.42杯 | 18.8杯 | 37.2杯 |
モルタル内部塗厚 3分
資 材 名 | セ メ ン ト | 砂 | 総 量 |
配合比 | 1 | 2 | |
資材量概算 | 1.77袋 | 0.11立方米 (4.10立方尺) |
約0.12立方米 (4.32立方尺) |
石油空箱ではかれば約 | 1.37杯 | 2.65杯 |
此の他型枠用として,大体木材0.5石,釘,針金等鉄物5貫内外,上記は計算上の数量であるから実際には上記の2%位増に準備をするとよい。
エンシレージとは多汁質の生草類,根菜類等の乾燥困難なものを詰込み,主として乳酸醗酵を起させて保存性を附与させることをいう。又製品(サイレージ)の名称にも用いられる。
エンシレージの重さ1立方尺5貫目として
(表)
深さ | 6尺 | 7尺 | 8尺 | 9尺 | 10尺 | 11尺 | 12尺 |
内径 | |||||||
4尺 | 370貫 | 440貫 | 500貫 | ||||
5尺 | 590貫 | 690貫 | 790貫 | 890貫 | 990貫 | 1,090貫 | |
6尺 | 1,000貫 | 1,150貫 | 1,300貫 | 1,450貫 | 1,600貫 | 1,750貫 | |
7尺 | 1,530貫 | 1,720貫 | 1,910貫 | 2,100貫 | 2,270貫 | ||
8尺 | 2,250貫 | 2,500貫 | 2,750貫 | 3,000貫 |
詰込んだ草の重し石は大体内容の3割を標準とする様である。尚木製の押蓋の上に図の様な取手をつけたコンクリート・ブロック版を造って乗せれば便利である。
家畜の種類,年令,エンシレージの材料によって違うが,大体次の様である。
乳牛4〜5貫,役牛2〜3貫,役馬1〜2貫,豚500匁〜1貫,緬羊1〜2貫,兔100匁内外,鶏約10匁主として葉菜類エンシレージ
配合比と1立方米(又は1立方尺)当り資材量
種 別 | セ メ ン ト | 砂 | 砂 利 | |
コンクリート | 配合比 | 9 | 2 | 4 |
資材量概算 | 6.88袋 (0.19袋) |
0.45立方米 (0.45立方尺) |
0.89立方米 (0.89立方尺) |
|
配合比 | 1 | 3 | 6 | |
資材量概算 | 4.82袋 (0.13袋) |
0.47立方米 (0.47立方尺) |
0.93立方米 (0.93立方尺) |
|
モルタル | 配合比 | 1 | 2 | |
資材量概算 | 14.6袋 (0.41袋) |
0.95立方米 (0.95立方尺) |
||
配合比 | 1 | 3 | ||
資材量概算 | 10.8袋 (0.30袋) |
1.06立方米 (1.06立方尺) |
換算表
セメント1袋(50s入り) | 0.0333立方米 | 1斗8升5合 |
セメント 1立方米 | 1,500s | 400貫 |
砂 1立方米 | 1,700s | 450貫 |
砂利 1立方米 | 1,770s | 470貫 |
水 1立方米 | 1,000s | 266貫 |
1立方坪 | 6立方米 | 216立方尺 |
1立方尺 | 0.0278立方米 | 1斗5升4合 |
1メートル | 3.3尺 | |
1キログラム | 0.266貫 | |
1リットル | 0.5544升 | |
木材1石 | 0.278立方米 | 10立方尺 |
石油空箱 | 0.043立方米 | 2斗3升8合 |