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畜産ニュース

家畜衛生主任官会議の開催

 昭和28年度の家畜衛生重要施設の運営について協議するため,3月18,19日の両日午前9時より人事院ビルディング5階講堂において開催された。へき頭長谷川畜産局長の挨拶があり,続いて齊藤衛生課長より指示事項,協議事項に就て,逐次説明があった。

1.戦後の家畜衛生施設は一応整備された。今後はその内容の充実に努力してゆきたい。最近海外との交渉が多くなって来た関係から諸外国との間に輸出入が多くなって来た。家畜伝染病の方面では殊に牛疫口蹄疫は世界の各地に蔓延しているので非常に危険にさらされているのであるが,これに対しては万全の策が樹てられている。
2.国内防疫に就ては最近豚コレラの発生が多くなって来たが,ここ2,3年の状況が違って来たようで,従来からの発生地には少く,あまりなかった地方から発生するようになって来た。殊に駐留軍,保安隊及び特殊地域に多い。本年2月愛知県下におけるワクチン禍は甚だ遺憾である。伝貧防遏は5ヶ年計画が漸く軌道にのって来た感があり,28年度からは九州地区を強化地域とする。
3.寄生虫駆除に関しては実施して効果があり,かつ経済的にもひ益するものを選んでやっているので年々効果がはっきりして来た。その中,特に肝蛭の駆除に重点をおいている。その他の疾病についても新旧の病気が入れ換って旧いものがなくなり,新しいものが出て来た感がある。
4.保健衛生所は27年度では大体整備が出来たが,保健衛生所が当業者に良い相談所と言うことがわかり,現在の能力で出来るだけやってゆき度い。
5.生産衛生は最も当業者に喜ばれる性質のものであって,高度の技術を要するものであるが,更らに倍加してゆきたい。

 尚,現在は国際協定の関係が強化され日本は極東において自他共に許す優秀なる技術を有し,諸外国をリードする立場にあるから各自に於かれても極東の情勢に注意して頂度い。
星薬事課長の指示事項

1.2月中旬豚コレラの予防液の注射禍が愛知県において発生したことは県当局並に当業者に対して洵に申訳がない。目下その事故発生原因の究明についてあらゆる角度から調査中である。
2.脳炎の予防液の力価検定に付ては目下審議中であるが,本予防液の応用時期も迫っている関係から各メーカーの自発的協力によりこの基準の公示前にこれと同様の力価検定を実施することにより効力ある製品の出回りを図っている。
3.抗生物質飼料添加剤が昨年来国内製品輸入品等相当多数にのぼり,鶏及豚については発育促進に相当の効果があるが,説明書通り含有されているか否か,今後は国家検査を実施したい。

 次に連絡事項として小林家畜衛生試験場長入江動物検疫所長より各々所管事項に付て報告があった。
 終って小林家畜衛生試験場長座長席につき議事進行にうつり,指示事項に対する各県からの質疑及び要望があり,担当係官から夫々説明があった。

  休憩

 午後1時30分再会講演に移る。(写真映写供覧)
「欧州に於ける家畜人工授精の近況」

農業技術研究所 西川 技官

 欧州に於ける人工授精は戦後にデンマーク,英国,スウェーデン,フランス,イタリー及びドイツに於いて実施されたもので,人工授精師の学校もあり其待遇も非常に良くデンマークでは邦貨に換算して100万円,スウェーデン126万円の給与を受けている。受胎成績は分娩率91%に達するものがあり,料金は800−1,600円である。技術的に日本と異るのは粘液の注入法である。今後この点について検討してみたい。
 終って都道府県提出議題及び要望事項につき一括第2日の委員会に附託協議することとなり散会。

 第2日目

 午前9時より第一委員会(家畜伝染病予防関係)第二委員会(家畜保健衛生所関係,繁殖衛生関係,講習会関係及びその他)及第三委員会(薬事関係)を各々席を改めて開会慎重論議された。
 午後1時人工授精の宣伝映画及石川県県政の紹介映画の映写があった後,第一委員会齊藤(青森)第二委員会折原(東京)第三委員会岡村(大阪)の各委員長より委員会の決議及び追加事項に付夫々報告があった。
 終って田中,高村,中井各技官より追加説明あり,4時齊藤課長の閉会の辞を以て2日間に亘る会議を終った。