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岡山県酪農振興計画成る

乳牛を1万頭に増殖

岡山県に於ける酪農発展の経過

 本県に於ける乳牛は,明治10年米国産短角種牝牡2頭が北海道から移入されたのを最初として洋種牛が次々に輸移入された。ホルスタイン種が初めて導入されたのは明治29年石川県及び北海道から種牡牛を購入したことに始まり以後各地から「ホルスタイン種」「エアーシャー種」等が輸移入されてその飼養頭数も著しく増加して来たので、明治37年、県は御津郡伊島村(現位置岡山市上伊福)に種畜場を設置し「ホルスタイン種」及び「エアーシャー種」を繁養して蕃殖育成を行い、種畜の貸付,払下及び種付を開始し,乳牛の増殖に努めたので乳牛飼育熱は県下各地に勃興し,明治40年頃には1万頭以上に達したのであるがこれは洋牛熱の疫病的流行に過ぎず,その後伝染病の発生があり反面変態調的発達により牛乳の利用者が少い為めに牛の価格が低下したので頭数が急激に減少し大正5年頃には2,000余頭となった。そして尚当時の乳牛飼養は単なる仔牛の育成が主であって,むしろ京阪神地方に於ける搾乳専業者の預牝育成を目的として居ったものであって酪農経営とは言えないものであった。斯の如き状態では将来本県の乳牛の改良も進展も期待することは出来ない為め識者及び有志に依って製乳事業が企画され,大正11年邑久郡豊村に岡山煉乳株式会社,同12年には小田郡今井村に山陽煉乳株式会社の設立を見るに至り,斯くして本県の酪農の基礎も漸く確立し両工場を中心として県南部地方(邑久,児島,浅口,小田の4郡)に堅実なる酪農が発達するに至った。
 其の後工場の経営は財界の消長により紆余曲折を経て岡山煉乳はネッスルに,山陽煉乳は明治乳業に移り今次大戦の当初に於ては飼養頭数4,000余頭,産乳量1日50石に及んだが,戦況の苛烈になるに従い労力の不足,飼料事情の窮迫は頭数に於て2,000頭余に減じ乳量に於ては10余石にまで激減するに至った。然るに戦後の食糧事情,肥料事情等により農業経営上酪農業の必要性が強く叫ばれる様になり,本県に於ても一時凋落せんとした酪農業も更に急速に進展を来し,児島郡山田村に国分商店製乳工場の設立を見,津山市には県農業会酪農工場が建設され,これが後北部酪農業協同組合に引継がれたが,これ等の4工場を中心に飛躍的発達を示し酪農地帯を現出するに至った。

乳用種牛年次別飼養頭数

年   別 飼養総頭数
明治35年 1,975
〃 40 10,489
大正元 5,545
〃 5 2,593
〃 10 2,177
昭和元 3,911
〃 5 2,997
〃 10 3,522
〃 15 3,631
〃 20 1,767
〃 21 1,975
〃 22 2,154
〃 23 2,854
〃 24 3,236
〃 25 2,942
〃 26 2,994
〃 27 3,443

岡山県に於ける酪農の現況

乳牛の分布

 終戦後酪農事業の重要性が朝野を挙げて宣伝せられ,県も乳幼児,病弱者の食糧関係から保護奨励を加えたので本県の酪農は急速な進展をなし,其の飼養頭数も3,000余頭に及び殆んど戦前の頭数に復帰し,産乳量も1日約120石を越えるまでになった。
 本県の乳牛は殆んど全部ホルスタイン種系に属し,その能力資源は著しく向上して酪農県に相応しい進展を示し将来の発展は猶今見るべきものがある。特に北部美作一帯に発展した北部酪農業協同組合は,北部の地勢的条件より来る農業経営の不利を酪農の発展により補足するため和牛を乳牛に乗り換える者が増加し,ここ数年にして約1,000頭に達したことは将来の本県酪農の一方向を指すものとして注目される処である。
 本県の酪農経営形態は地区により各々特徴があり,全国の酪農経営形態の縮図とも見る事が出来る。即ち邑久郡地方は大体畑作と水田地帯を背景とした所謂水田酪農地帯とも言い得る地帯であって基盤は畑作酪農であり,飼料事情なり乳価の好転の場合は水田地帯に延び,飼養条件が悪くなれば畑作地帯に入りここに系統が温存されるのである。従って水田酪農に関する研究も進み,県下で最も進歩した水田酪農の経営を行っているが全郡的には換金作物も投機的気運も強く乳価に左右される処が多いので最高に行っても600頭位であり,減少しても200頭位の線を維持している様である。この最低線の場合は勿論畑作地帯であり,長年月の間に改良繁殖した系統が本県乳牛の基礎をなしていることは本郡の最も強味である。
 次に小田,浅口地区は主として畑作,果樹園芸と結合したところの酪農経営であって養鶏と共に肥料源としての利用面が多く,今後果樹園と飼料作物との関係性に於て発展の余地が残されていると考えられる。
 次に児島地区は,東児島と西児島とではその経営形態は著しく異り,東児島は耕地面積少くはげ山が多く粗飼料の入手も困難であるが他に有利な副業もなく乳牛に依存する点が多いが,その経営方法は殆んど専業搾乳業者的経営が多く,高能力の乳牛を繁養し,これに濃厚飼料を多給して多量の搾乳を行っているので応々にして栄養的欠陥が発要されるがこの点は本地方の最も欠陥とする処であって将来改良を要する点でもある。西児島は山地と水田を活用した地帯であり,特に将来は干拓地帯に対する乳牛の導入も考えられ,将来の水田酪農の1つのモデルケースともなり得ることが考えられる。
 次に北部作州一円の地帯は終戦急速に発達した地帯であって,特別な副業のないこの地帯にあっては山と畜産による他なく,特に現金収入の少いこの地方にあっては酪農は重要なる収入源として農民の関心を高め,農協組織による工場経営と相俟って将来性が期待される処である。特にこの地帯は山地の利用多く,草資源に恵まれ生産費が安いので他の地区に比し発展性のある地帯であり,目下南部地帯が稍低調なるに比し驚異的発展をとげている。特に従来の和牛の飼育地帯として知られて来た地方であるが,交通の便よく集乳の便利な地区では漸次乳牛に切換える者が多くなりつつある。注目すべき点は日本原を中心にした開拓地の酪農であって都市近郊の開拓地の1つの行き方を示すものとしてその将来が期待されている。
 更に考慮を要する点は真庭郡北部の蒜山原一帯を区域とする地帯で,まだ乳牛の導入は少いが将来の開発上酪農に依る農村振興が強く要請せられているので交通の発達と草地の改良と相俟って之が施策が講じられなければならないものと思料せられるので別途計画を樹立した。
 以上の如き経営形態の下に乳牛は分布しているが今その分布状況を郡市別に表示すれば次の様である。

都市別頭数表
(27年2月1日センサスに依る。)

郡 市 別 頭   数 郡 市 別 頭   数 郡 市 別 頭   数
岡山 57 都窪 57 川上 12
倉敷 81 浅口 524 阿哲 11
津山 151 小田 322 真庭 163
玉野 2 御津 92 苫田 141
児島 28 赤磐 64 勝田 277
玉島 153 和気 49 英田 25
邑久 476 後月 55 久米 186
上道 128 吉備 82    
児島 291 上房 15 合  計 3,443

 上表の内大部分はホルスタイン系種であるが,血統登録牛は約1,200頭,高等登録牛は285頭であって,系種牛についても岡山県酪農協会が保留牛制度を設けて高能力のものを保留しているので全県的に牛の能力は向上しつつある。

(表)牛乳の需要状況

用途別 工場名 1 日 処 理 能 力 昭 和 27 年 度 に お け る 実 績 乳用牛頭 数 搾乳牛頭 数 飼育地帯
煉粉乳 バター 市乳その他加工用 合計 1日最高集 乳 量 1日平均集 乳 量 1ヶ年間集乳量 乳製品製造又は用途別数量
ポンド
原料牛乳用 明治 65 50 115 45 32 県内 7,348
県外 4,405
計 11,753
煉乳  110,000,000
バター   38,000
市乳用
(県内向)   986
730 390 小田,浅口,後月,笠岡,玉島
ネッスル 200 50 250 50 38 県内 6,041
県外 7,811
計 13,852
煉乳    463,000
粉〃    370,000
バター    6,000
市乳用
県外向    300
(県内向)   680
660 315 邑久,上道,赤磐,都窪,和気
国分 30 20 15 65 25 16 県内 2,880
県外 3,003
計  5,883
煉乳   1,270,000
バター   20,000
市乳用
(県内向)  1,775
250 135 東児島一帯
岡北 40 20 5 65 26 21 県内 7,673
計  7,673
煉乳    476,000
バター   32,000
市乳用
県内向    648
県外〃   1,281
950 440 作州地区一帯
東洋     5 5 4 2.5 県内  925
計   925
コーヒー牛乳用 925 80 50 久米津山の一部
小計 335 140 25 500 150 109.5 県内24,867
県外15,219
計 40,086
煉乳  112,209,000
粉〃    370,000
バター   96,000
市乳用
県内向   4,089
県外〃   1,581
コーヒー牛乳用 925
2,670 1,330  
市乳用 処理場
85
    市乳用
100
100 80 56 専業者及近郊酪農家より受入量16,216
原料乳工場より受入量4,089
市乳用   20,305 750 700 都市及び周辺
小計     100 100 80 56 20,305
其他  750
20,305 750 700   
合計 335 140 125 600 230 県内41,833
県外15,219
平均  156
煉乳  112,209,000
粉〃    370,000
バター   96,000
市乳用
県内向  20,305
県外〃   1,581
コーヒー牛乳用 925
3,420 2,030  
(備考)
 1.原料乳は四大工場に集乳し乳製品原料として使用されるが一部は市乳として直接消費されている。ことに夏期においては受入れたものを地方の処理所へ生乳のまま流用している。
 2.県外より原料乳として移入されるものは広島県,香川県及び兵庫県である。
 3.県外へ市乳用として生乳のまま移出する先は大阪府及び京都府である。
 4.バター生産より生ずる脱脂乳は酪農家へ犢哺乳用として還元されている。
 5.1日最高集乳量及び同平均集乳量は県外よりの移入量も含めたものである。
 6.乳用牛頭数及び搾乳牛頭数は県内のもののみである。

酪農関係団体

酪 農 組 合 名 創立年月日 事務所所在地 組  合  の  地  域
岡山県酪農協会 24・4・2 岡山市上伊福
岡山県庁内
県一円
両備酪農業協同組合 13・3・18 岡山市上石井 御津,都窪,吉備
美作酪農業協同組合 13・4・1 津山市横山 津山市,苫田,久米
苫田酪農業協同組合 23・4・5 苫田郡鏡野町 苫田郡の内(鏡野町,郷,田邑,泉,久田,奥津,上斎原,羽出,一宮の9ヶ町村)
山陽酪農業協同組合 23・6・2 笠岡市絵師 小田,浅口,後月,吉備,都窪
児島郡酪農業協同組合 13・7・7 児島郡山田村 児島郡
邑久郡酪農畜産販売
農業協同組合連合会
23・9・4 邑久郡豊村 邑久郡一円
岡山県北部酪農業協同組合 24・1・25 津山市川崎 津山市,苫田,真庭,勝田,英田,阿哲,久米,御津の一部上建部,建部,赤磐の竹枝村
平和酪農業協同組合 24・3・2 吉備郡日近村平和教会 吉備郡(日近,大井,福谷,岩田,足守)御津郡(津賀,馬屋下)
備南酪農業協同組合 24・3・26 倉敷市浜用町 都窪,児島,児島市,倉敷市,吉備,浅口
都倉酪農業協同組合 24・6・28 都窪郡常盤村 倉敷市,都窪郡
中備酪農業協同組合 27・5・15 吉備郡総社町 吉備郡,都窪郡

従来に於ける岡山県酪農の弱点

 本県酪農の振興計画を樹立するに当り比較的古い乳牛の歴史を有しながら一進一退の状態を繰り返し遅々として発展をみなかった原因を探求し従来の弱点を指摘することは重要なることである。
(一)従来の酪農地は立地的にみて必ずしも全てが適地でなかったこと。
(二)従来の酪農地は農業経営上からみて全般的に立地条件がよく他に副業も多く利に走りすぎるため乳価に左右されて一進一退であったこと。
(三)所謂酪農としての立場のみを固執し完全に農業経営に溶けこんで居らず大部分が専業搾乳業の経営様式をそのまま取り入れ,自給飼料の計画生産がなく濃厚飼料に依存しすぎたため経営が飼料価値に大きく左右されたこと。
(四)乳牛の指導技術者の養成が行われず又部落活動における中心指導者も等閑視されたため技術指導が充分でなかったので農家は所謂自己流の技術に依存し過ぎたため技術的発達がなかったこと。
(五)優良種畜の保留が行われなかったため多数の優良牛が県外に流れ,県固有の系統が作れなかったこと。
(六)消費宣伝が行政面に行われなかったため,時には生産過剰となり乳価に支配されたこと。
(七)乳牛の導入其他施設に対する資金対策が考えられなかったこと。

根本方針

 主として酪農に依って名実共に明るい農村が現出し得る地帯を選定して酪農振興上必要なる各般の施策を重点的に施行し,本県産業の振興に資すると共に県民の福祉の増進に寄与するを根本方針とする。
 而してその要領としては
(一)乳牛増殖目標を5年後に1万頭産乳量を年14万7,500石に増産する。
(二)酪農はあくまで農業経営の中にとけこんだ形に於て発達せしめるを根幹とし,立地条件が真に酪農の将来性を有し而も酪農に依って農村振興が期待し得られる地帯を選定し,当該地帯の乳牛の密度を高める。
(三)資質の改良を図るため優良種牡牛の導入と優良系統牛の保持に努める。
(四)酪農技術の向上に関する施設を講ずる。
(五)牛乳及生産物の利用を増進せしめるための方途を講ずる。
(六)酪農経営の合理化を図るため県内生産飼料の増産に努める。
(七)乳牛の保健衛生の向上に関する施設の充実を図る。
(八)乳牛の導入其他酪農関係施設に対する金融措置を講ずる。

酪農振興地帯の設定

 酪農経営形態はその土地の立地条件により自ら犢の育成地帯,市乳供給地帯,乳製品原料乳供給地帯の如く決定されるものである。
 今,各種条件を参酌し県下の酪農経営可能の町村を次の地区に分類する。
(一)旭東地区 邑久郡を中心として上道郡,赤磐郡の一部,和気郡の一部を含めた旭東四郡であって主として畑作地帯,水田地帯に飼養され,現在約700頭の乳牛を保有し産乳量1日約30石で,乳製品原料乳供給を主体とすべき地帯である。
(二)岡山地区 岡山市を中心として御津郡の一部,吉備郡の一部,児島郡の一部を含めた地区であって現在約350頭が飼育せられ,産乳量1日約30石で市乳として供給すべき地帯である。
(三)児島地区 東児島を中心として,これに西児島を含めた地帯であって,現在約300頭が飼育せられ,産乳量20石で一部乳製品原料供給を主体とし一部市乳を供給すべき地帯である。
(四)浅口郡小田地区 浅口,小田両郡を中心として後月郡の一部,都窪郡の一部を区域とし,主として畑作地帯,特に果樹園地帯と結びついて飼養され,現在約1,000頭の乳牛を保有し産乳量1日約45石であって乳製品原料乳の供給を主体とし,一部市乳を供給する地帯である。
(五)作州地区 作州1市5郡を区域とし主として畑作地帯及び山地を利用した地帯に発展し,現在約950頭を飼養しているが一部育成も行っているので産乳量は1日約30石であって乳製品原料乳の供給地帯である。この地区は他に適当なる副業もなく山林及び畜産の占める経済的地位は非常に高く,特に現金収入を目的とする酪農の経営は今後非常に有利に発展することが期待される。
(六)蒜山原地区(蒜山酪農振興計画を参照のこと)
(七)育成地区 吉備郡の一部,御津郡の一部,久米郡の一部,赤磐郡の一部,和気郡の一部,邑久郡の一部,美作一帯が之に当り,主として生産乳の処理が比較的困難であり,然も附近に酪農地帯を控え季節的に有利に牛の処分が出来る地帯を育成地区とする。

増殖目標

 乳用児の必要食糧の確保並びに県民食生活の改善上牛乳及び乳製品の増産利用を図ると共に農業経営の合理化を期するため飛躍的増殖を図る必要があるが,過去の飼養実績と各製酪工場の能力,市乳の消費能力等を考慮し,有畜農家創設事業とにらみ合せて5ヶ年後に1万頭に達成せしめると共に,産乳量年4万7,000石を増産する。

乳牛増殖計画(蒜山原計画を除く)

年  次  別 27 28 29 30 31 32
増殖頭数 3,800 4,450 5,185 5,925 6,985 8,085
生産頭数 1,800 1,950 2,270 2,640 3,060 3,570
斃死廃用頭数 1,200 1,400 1,635 2,000 2,100 2,570
移入頭数 300 300 300 300 300 300
移出頭数 200 200 200 200 200 200
搾乳牛頭数 2,280 2,670 3,100 3,600 4,200 5,000
1頭当年間泌乳量 21石 21石 22石 23石 24石 25石
集乳量 県内生産 47,880 56,070 68,200 82,800 100,800 125,000
県外移入 14,560 17,600 20,000 23,000 27,000 30,000
62,440 73,670 88,200 105,800 127,800 155,000
同上
日量
県内生産 131 153 187 227 276 342
県外移入 40 49 55 63 75 82
171 202 242 290 351 424

市乳の消費現況並に計画

地 名 人   口
(27・7・1調)
消費量(日量)
(7月調査)
消費計画(日量) 供給地区 主 な る 消 費 者
 
岡 山 200.1 25 33 現在処理所及近郊地帯,国分商店 公署,病院,その他一般学校鉄道工場
倉 敷 68.6 3.5 5 現在の処理所及周辺酪農家 工場,病院官公署学校,鉄道その他一般
津 山 51.5 3 4
児 島 35.8 1.5 2.2 国分商店
水島酪農
玉 野 45.6 2 3.2 国分商店
笠 岡 29.5 1.8 2 現地処理所 工場,官公署
玉 島 30.3 2 3 警察予備隊
水 島 39.4 3.2 5 工場,官公署
西大寺 14.2 1 1.5
総 社 14.3 1 2.5
高 梁 12.5 0.5 0.6
琴 浦 22.6 1.5 2 国分商店
其の他 1,102.40 10 11  
1,660.80 56 75  

改良増殖対策

(一)種牡牛の導入
 県有種牡牛の充実を図るため特に優良なる牛を先進国又は他府県から移輸入して種畜場に繁養し,その精液を広範囲に配布して改良増殖を図る。
(二)人工授精の普及
 生産率向上を図るため種畜場を中心として酪農地帯の家畜保健衛生所を高度に活用して人工授精の徹底的普及を図り,現在の受胎率50%を80%以上に向上せしめる。
 尚家畜保健衛生所をして繁殖障害の除去に重点を指向せしめて之が検診治療を実施せしめると共に,飼養失宜に基く繁殖障害の面をも是正せしめるの外人工授精に関する知識の普及をも行わしめる。
(三)優良系統牛の保留
 優良基礎牛を県費を以って購入貸付し系統の固定を図ると共に蔓牛の造成を行い,系統優良で産乳能力の高いものを普及せしめる。
(四)有畜農家創設事業に依る導入頭数の増加乳牛飼育農家の増加を期するため,有畜農家創設事業に基く他府県よりの優良牝牛の導入の増加を図る。
(五)登録事業の普及
 乳牛登録事業(雑種登録を含む)の普及徹底を図り,優良系統の保持利用に資する。
(六)共進会の開催
 乳牛共進会を開催して酪農をして優劣に対する批判力,個体に対する鑑識眼を向上せしめて選択淘汰に依る優良牛の造成に努めせしめる。
(七)能力検定事業の実施
 雑種を含む優良種牝牛の能力検定を実施し格付を行うと共に,優良牛の保留に努める。

技術指導対策

(一)酪農講習所の設置
 津山畜産場をして酪農講習所に転換せしめて,酪農経営並に乳牛飼育,乳製品加工其他に関する技術指導の施設を充実せしめ,主として部落活動の中心指導者の養成を行うと共に随時講習講話会,研究会等を開催して一般酪農関係者の知識の向上に努める。
(二)農業改良普及員に酪農に関する再教育を実施し,指導の徹底を期する。
(三)部落単位のグループ活動を促進せしめる。

経営の合理化対策

(一)自給飼料の増産
 生産費の低減に資するため飼料作物の栽培,集団的草地改良,牧野の改良,サイロの増設等を行って自給飼料の増産利用を促進する。
(二)厩肥及畜力の活用
 畜舎及堆厩肥舎の改善を行い積極的に厩肥を活用せしめると共に乳牛の役利用を奨励し労力の調整に資する。
(三)中,小家畜との結合に依る農業経営の合理化を図る。

牛乳及生産物の利用増進対策

(一)集乳所の設置
 必要なる地区に集乳所を設置せしめて集乳に便ならしめると共に,必要に応じてクリーム分離施設をなし,脱脂乳を活用しクリームの消費を図る。
(二)牛乳及乳製品の消費の促進
1.菓子工場をして牛乳の利用を増大せしめる。
2.牛乳及乳製品の消費宣伝を積極的に行うと共にミルクプラント,ミルクホール等を設置せしめる。
3.学校給食を援助し,全乳又は脱脂乳を給与すると共に学校を通じて家庭の消費を促進する。
4.牛乳を単に生乳として利用するのみならず,加工して利用せしめたるために婦人会等で簡易加工菓子料理等の講習会を行わしめる。
(三)酪農団体として乳質改善共励会を毎年行わしめる。
(四)老廃牛等の肉を有利に処理するために加工施設を設置する。

種牡牛配置計画と人工授精所設置計画(利用度)

岡  山  種  畜  場  利  用 民  間  利  用
将来計画
種牡牛繁養場所

岡山種畜場 4頭
坂 本   1〃
奥 島   2〃
船 橋   1〃
邑 久   2〃
高 畠   2〃     
保健衛生所 授 精 所 直接払下 授精又は注入 自然交配
鴨 方 150 太伯 50 平津 50 坂本 200 日下 40
灘 崎 80 山田 50 岡山 200 船橋 200 大熊 40
和 気 150     足守 30 奥島 500 難波 20
長 浜 100     赤磐 100 高畠 150    
総 社 200     浅口 100 邑久 350    
中 川 30     都窪 150        
西江原 50     児島 100        
金 川 20     上道 100        
(宇垣)                  
周 匝 60     其の他 300        
1,290   100   1,130   1,400   100
津  山  畜  産  農  場
将来計画
種牡牛繁養場所

津山畜産農場  4頭
(蒜山地区1頭)
保健衛生所 授 精 所 直接払下
倭 文 150 岡北酪 300 100
日本原 200 東 洋 50  
勝 山 50      
落 合 300      
福 渡 20      
豊 国 100      
加 茂 50      
870   350 100

乳牛の保健衛生対策

(一)酪農地帯の家畜保健衛生所を中心として乳牛の健康検査を特に強化し,生産率の向上,伝染病の予防に依る各種の障害防止の徹底を期する。
(二)畜舎及厩肥舎の改造を行い保健衛生の向上に努める。
(三)増殖計画の遂行に伴い,毎年無畜農家の有畜化の増大が期待せられるため,これらの経験の浅い酪農家に対して特に家畜衛生に関する積極的な指導を行う。

金融対策

 濃厚飼料の確保
(一)乳牛の購入資金については有畜農家創設事業に於ける融資をあてると共に,酪農施設,サイロ,厩肥舎に対しては低利なる融資の獲得に努める。
(二)家畜共済への加入を促進し,事故の際の損失を最少限度に止め,後牛の購入に支障のないように指導する。

飼料対策

 乳牛の増殖に伴い生産飼料の主体を占める濃厚飼料の需要量は相当増加するがこれが確保については各家畜の増殖計画に依る濃厚飼料の需給計画より検討して,不足量は下記の措置に依って遺憾なきを期する。
(一)県内に相当規模の製粉工場を誘致する。
(二)飼料需給安定法による輸入飼料の増加を図る。
(三)自家生産飼料の増加利用を積極的に行わしめる。
(四)糟糠類の増産を図り,県内生産のものを極力県内に於て活用するように計画する。
(五)化学的,物理学的及微生物学的処理に依る新飼料資源を活用利用する。
(六)優良なる粗飼料の増産を図って濃厚飼料の節減に努める。

自給飼料の増産対策

 生産費の軽減を図るため特に粗飼料の増産並びに品質の向上を図るを目的とし就中飼料作物の作付面積の増加,畦畔,堤塘,道路その他草地の草生改良,荒廃せる牧野の改良,サイロの増設に依るエンシレージの増産を行う。
(一)飼料作物の作付面積の増加
 二毛作田の裏作1割及畑作の5分を飼料圃として活用する事により10年後に水田6,000町歩,畑1,000町歩をこれに充当し得て14万トンの飼料作物の増産が期し得られる。
 飼料作物は紫雲英,青刈麦類,青刈玉蜀黍,青刈大豆,レープ,カブ,ベッチ及各種牧草類とする。(以下省略)