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岡山県酪農振興計画成る

蒜山地区酪農振興計画

まえがき

 本県の酪農の振興については既に別途,岡山県酪農振興計画が樹立されており,本地区の酪農計画もこの振興計画の一環として考えられることが当然であるが,本地区は特殊地帯であり,特に
  積雪寒冷単作地帯の指定,
  大山出雲特定地域総合開発計画,
  岡山県綜合開発計画
をも加味して,計画上の連絡を保ち,綜合的に,又特殊に計画を必要とするので特に蒜山地区として別途に酪農振興計画を樹立した。

地域の概況

(1)自然的概況
 本地区は真庭郡の最北部川上村,八束村,中和村,二川村に湯原町を含む全面積2万3,081町歩に亘る広大な地域であって,中国山脈の山麓に連る一大盆地を中心とした特殊な地勢を形造り地質は北部は輝石安山岩,火山岩層,沖積層であり,中南部は花崗岩,石英斑岩であり土壌は北部は火山灰土,中南部は砂質土であるため地味は特に悪く,気候又寒冷で平均気温摂氏12度,降雨量1,800−2,000oである。
(2)産業の発達状況
 農業の生産性は低く,僅かに煙草の栽培と林業,畜産業等が本地区の産業の基盤であって,就中煙草は古くから山中葉として本地区の重要産業であるが,作業労力の過重のため漸次作付面積が減少しつつある現況である。畜産はこの地区の重要産業の1つであるが従来積極的な奨励は行われず,過去に於て軍馬の育成所が設置されていたが牧草の生育が極めて悪く,為めに廃止となった例もあり,一般に草質悪く,草生改良は殆んど行われて居らず,従って優良な家畜の生産は望まれず,畜産の主体をなす和牛も優良なるものが少く,その他,馬の生産も一部に行われているが所謂農馬であって馬格も小さく利用範囲が狭いようである。近年緬山羊の飼育が増加して来たがこれも一般に普及する迄には到っていない。
 林業はこの地方の最も大きな産業であるが年々の伐採で生産量は減少しつつある。
 鉱業では硅荒土の生産があり,毎年相当多量が移出されている。
 その他は特に取り上げるべき産業も無く従って地区内農家の収入は県下平均より低位にある状況である。
(3)酪農の歴史
 広大なる牧野を有し乍ら過去には殆んど乳牛が導入された歴史は無く,僅かに終戦後開拓地に3−4頭の乳牛が導入されたのみであり,地元民の乳牛に対する認識は極めて薄い,従って草生改良も出来て居らず飼料作物に対する知識にも乏しく,乳牛に関しては全くの処女地とも称せられる所である。
(4)酪農に対する地区民の意欲
 大山出雲特定地区綜合開発計画が発表されて以来地区内の綜合開発に対する民意は非常に強く,県も亦この地の開発に対しては多大の関心を示し,農業,開拓を主体とした調査が行われ更に委員会が設置せられて専門的立場から検討されたのであるが,その結果,酪農を主体とした農業経営を取り入れることが最も適当であると言う結論が出されたのである。その為青年層に深い感銘を与え,青年層の支持を得て計画は進められていたのであるが,更に先般の有畜農家創設事業に刺激されて導入希望者も多数出たが結論的に生産乳の受入態勢が確立されなければ行詰を来たすので,指導者の間にて,この問題に対して研究が続行されていたのである。従って受入施設を考慮することにより急速に発展するものと期待されている。

従来乳牛が導入出来なかった理由

(1)乳牛飼育に対する研究心もなく,牛乳を薬用視する慣習より,消費の必要を認めず,従って産業として考慮する余地がなかった。
(2)交通の便悪く生産乳の処理に困ることも大きな理由であった。従って勝倉線の促進の1つの大きな理由としても取り上げられていた,又積雪の関係上冬期の輸送に困難が考えられた。勿論この場合は工場の誘致は困難として他地区への輸送を考えての結論であった。
(3)少数の乳牛の導入では生産乳の処理に困るし,工場を誘致するには相当数の乳牛の導入が必要であり,これら相互の関連性に対する研究心が不足であった。
(4)交通関係から濃厚飼料の移入が困難であり更に草生改良にも相当の資金,労力を必要とするので等閑視されていた。
(5)県としても積極的に指導をしなかった。

将来の見通し

(1)気候的条件は北海道と酷似し,6,000町歩に及ぶ広大なる採草地と放牧地を有し草生改良を行うことにより,乳牛の維持飼料として必要な粗飼料を充分に確保出来るのみでなく畑作経営の改善によい生産飼料をも確保出来るので低廉なる生産費を持って産乳が可能である。
(2)随時現金収入を図り得る特定な産業なく,特定作物の導入も考えられない,今日では畜産の持つ重要性は大きく,従って従来からも和牛,馬等が飼育されて来たが,これらの畜産はいずれも在来の飼育法に立脚した原始産業の域を出でず畜産業の発展より新たなる家畜の導入の必要性が唱えられているので,現在飼育の和牛約2,600頭の内半数位は乳牛に転換が可能である。
(3)終戦後の農村に生じた2−3男の労力対策として青年層の間に真剣に検討されており,この遊休労力を活用することにより将来の発展が期待される。
(4)一番問題の焦点となる生産乳の受入施設の問題を解決することが必要であって工場の設置を行えば急速に発展出来る見込みである。

将来への対策と計画

 前述の観点より,本地区に乳牛を導入し,一大酪農地帯を建設するとすれば下の諸点を考慮の上着手しなければならない。
(1)早急に受入工場を設置して集乳を行うこと。
(2)採草地の中1,000町歩の土壌改良,草生改良を実施し,良質の牧草と草量の増加を図ること。
(3)放牧地の整備を行い,輪換放牧による飼料費の軽減を考慮すること。
(4)サイロの設置,畜舎の改造に融資の導入を図ること(飼育戸数1,000戸サイロ2,000基を目標)
(5)酪農技術の指導を行うと共に中心指導者を酪農講習所に派遣,教育する。
(6)畑作の改善と共に飼料作物の輪作栽培を行わしめる(200町歩を目標)この為めに農業試験場高冷地試験地を活用すること。
(7)初年度に於て300頭以上の集団導入を行うこと,これに必要な資金については有畜農家創設事業その他より融資を行うこと。
(8)家畜保健衛生所を高度に活用し,酪農技術者を1−2名増置すること。
(9)上衛生所に乳用牛の種牡牛を設置すると共に人工授精を強化すること。
(10)集団導入のため政府の集約酪農地の指定を受け貸付牛の導入を計ること。
(11)昭和28年度を初年度とする5ヶ年計画とする。

乳牛及び牛乳増産計画

区   分 28年 29年 30年 31年 32年
増殖頭数 300 600 1,000 1,500 2,000
生産頭数(牝) 90 220 400 590
廃用斃死頭数 30 45 65 90
移入頭数 300 240 225 165
搾乳牛頭数 200 470 850 1,250
1頭当り年間泌乳量 15石 16石 17石 18石
日量牛乳生産量 8.2石 20.3石 40.5石 61.6石
年間牛乳生産量 3,000石 7,520石 14,790石 22,500石

飼料増産計画

粗飼料需要量

年次 飼   養   頭   数 飼  料  需  要 (自給) 量
搾 乳 牛 未搾乳牛 荳科牧草 野  草 青刈飼料
28 300 300 748,500 125,000 873,500
29 200 400 600 750,000 1,063,900 250,000 2,063,900
30 470 530 900 2,025,00 900,000 550,000 3,475,000
31 850 650 1,500 3,775,000 400,000 1,600,000 5,775,000
32 1,250 750 2,000 5,035,000 3,800,000 8,835,000

牧野改良計画

年     次 28 29 30 31 32
改良計画 250 300 350 100 1,000
改良実施済面積 250 550 900 1,000 1,000
生産草量 荳科 750,000 2,025,000 3,775,000 5,035,000 11,585,000
野草 2,000,000 1,500,000 900,000 400,000 0 4,800,000

青刈飼料作物作付計画

年  次 28 29 30 31 32 年  次 28 29 30 31 32
   
計画圃場 15 30 50 100 200 200 町当収量 11,000 11,000 11,000 16,000 19,000  
                
生産量 125,000 250,000 550,000 1,600,000 3,800,000 6,325,000               

資金計画

  区分 家 畜 導 入 牧 野 改 良 畜舎改造(新設12×9尺3坪) 堆 肥 舎(6 坪) サ イ ロ(5×10尺) 合  計
年次 頭数 単価 金額 面積 単価 金額 箇所数 単価 金額 設置数 単価 金額 設置数 単価 金額
第1年度 300 70,000 21,000,000 250 50,000 12,500,000 300 10,000 3,000,000 300 30,000 9,000,000 300 10,000 3,000,000 48,500,000
第2年度 240 16,800,000 300 15,000,000 240
(60)

(30,000)
2,400,000
(1,800,000)
240 7,200,000 300 3,000,000 46,200,000
第3年度 225 15,750,000 350 17,500,000 225
(175)

( 〃 )
2,250,000
(5,250,000)
225 6,750,000 400 4,000,000 51,500,000
第4年度 165 11,550,000 100 5,000,000 165
(335)

( 〃 )
1,650,000
(10,050,000)
165 4,950,000 500 5,000,000 38,200,000
第5年度            
(500)

( 〃 )

(15,000,000)
70 2,100,000 500 5,000,000 22,100,000
930 65,100,000 1,000 50,000,000 930
(1,070)
9,300,000
(32,100,000)
1,000 30,000,000 2,000 20,000,000 206,500,000

現況

(1)土地利用状況

区 分 合 計(A) 耕    地 森    林 宅    地 そ  の  他 放  牧  地 牧  草  地
地 区 面 積(B) B/A 面 積(C) C/A 面 積(E) E/A 面 積(F) F/A 面 積(G) G/C 面 積(H) H/C
蒜山原地区 23,081.7町 2,386.7町 10.3 18,461.0町 80 141.0町 0.6 2,093.0町 9.1 765.7町 4.15 5,284.6町 20.3

(註)1.家畜計欄は家畜単位とす。
   2.家畜頭数のうち緬羊は昭和26年2月1日家畜センサスに依る。他は昭和25年2月1日農業センサスに依る。
   3.耕地欄は昭和25年2月1日農業センサスに依る。

(2)農業資源状況

区分 耕                         地 現    有    家    畜
田      地 (A) 畑           地 (B) 計(C) 乳牛 役肉牛 緬羊 山羊 家畜計
地 区 一毛作田 二毛作田 A/C 普通畑 桑 園 菜 園 果樹園 その他 B/C
蒜山原地区 1,611.2町 76.2町 1,687.4町 71 647.5町 18.7町 1.9町 2.3町 28.9町 699.3町 29 2,386.7町 12 2,753 419 42 52 173 1,458 3,678 3,278

(3)牧野の植生型現況

区 分 ススキ期 雑 灌 期 チガヤ期 サ サ 期 ハ ガ 期 ワラビ期 シ バ 期 荒 蕪 期 裸   地
地 区
蒜山原地区 2,113.0町
(3,000貫)
605.0町
(2,500貫)
2,006.3町
(1,500貫)
115.0町
(2,000貫)
302.0町
(1,500貫)
643.0町
(1,000貫)
229.0町
(400貫)
22.0町
(200貫)
15.0町