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めん羊の薬浴

 めん羊の薬浴は外部寄生虫の駆除や皮膚病の予防や治療上有効なばかりでなく,皮膚の健康を増し,羊毛の成長を助ける効果がありますから,少なくとも年1回は行うのがよろしい。
 めん羊の薬浴は普通の場合は毛刈の後3週間から1ヵ月位経過した晴天の日を選んで,薬浴後夕方までにめん羊の体が完全に乾くように朝早く行います。農家で少数のめん羊の薬浴を行う場合は,めん羊1頭をその中で十分に浸し得る程度の大桶で行うとよろしい。この場合薬液の消費を少くするため,薬浴桶に薬液が流れ込むように「流し」を設けます。そして大桶に薬液の適量を入れ,前肢と後肢とを夫々1人で支えてめん羊の体を薬液に十分浸した後,流しの上にめん羊を横たえて羊毛に含まれている薬液を十分搾り取ります。この場合,気管に薬液が入らないよう特に注意して体全面を薬浴するよう心掛けねばなりません。
 薬浴剤として一般に用いられているものはクーパー氏薬浴剤に類似して作成された野沢組薬浴剤で,普通1包2ポンド入りを6斗2升5合の水に溶かして用いますが,これを溶すには最初少量の水でかたまりのなくなるまで十分練って泥状とし,のちに所要の水を加えます。この分量で35頭から50頭位を1回に薬浴させることができます。またこのほかにクレオリンの50倍液を用いて行ってもよろしい。
 次に薬浴を行う際注意しなければならないことはまず第一に寒暑のはげしい日または雨天の日を避けて晴天の日を選ぶことです。第二に薬浴するめん羊には過熱やはげしい運動やかわきを覚えさせてはなりません。つまり薬浴の前後にめん羊を追い回すようなことは最もさけなければなりません。第三に薬浴は性急に行わず,薬浴が十分に皮膚に浸み込むようにすることが肝要です。第四に薬浴剤は処法に従って正確に調合して,水に十分溶解させて下さい。第五に薬浴液後めん羊の体が十分乾かないうちに餌のある場所に放したり,飼付をしないようにしましょう。
 以上の点に注意して,部落単位ぐらいで共同してめん羊の薬浴を行って下さい。そして外部寄生虫を駆除することによってより一層健康なめん羊を育てましょう。