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巻頭言

蒜山地区の酪農振興について

惣津律士

 蒜山地区の開発については従来各方面から多大の関心を以って種々検討せられ,さきに岡山大学農学部に於てもその基礎的調査を完了し,その結果を発表しているが,さて実施の段階になると困難な条件が多いために,その緒につけない状況である事は今更申し上げるまでもない。
 併しながら,さりとてこの現状をそのままに放置する事は本県産業の振興上極めて遺憾であるので,先ず酪農に依る開発が今般企図せられるに到ったのである。
 酪農をこの地に取り入れる為めには前号に於て示した如く受入工場の誘致,自給飼料資源の培養確保,金融措置等が主なる前提条件となるが,何人と言っても酪農が本地区に取って全然処女地であるため,地元関係者の強固なる意志と団結と協力が絶対に必要である。徒らに地元が補助金其他の援助のみに依頼して自ら立ち上る力を発揮する意欲に乏しい場合は,蒜山地区は永遠に閉ざされた暗黒の地帯となる懸念が濃厚である。
 とまれ,大局的見地から考えるとき,畜産の振興に依らなければ蒜山地区は救われざる運命を持っている事は事実であり,だれでも指摘し得る所である。私は関係者が一丸となって新しい而も正しい歩みをこの際勇気を持って進む事を切望して止まない次第である。