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多産鶏の固定

 鶏に卵をよくうませるには日頃の管理をよくすることは勿論大事なことであるが,すぐれた能力をもつ系統のものをまず選びだすことが重要な問題である。そしてさらにそうした多産系種のすぐれた特質を幾世代にも長く固定しなければならない。それには長年の育種試験が必要である。この試験が農林省農業技術研究所家畜部(千葉市矢作町)の大西靖彦技官らによって最近どうやら一応の目鼻がつけられるようになり,その研究結果は次のとおりである。

純系種の作出

 遺伝の法則によると,鶏の遺伝因子を長く固定させるには,その品種をまじり気のない純粋なものにすればよい。そこで多産鶏をつくり出そうとするなら,そのすぐれた遺伝因子をもつ品種間で互いに近親交配して異品種のまじらない純系種をつくり出せばよい。ところが従来の鶏はどの品種もすべて種々の系統のものと交雑していて純系種が全くない。そこでそうした純粋種をつくるため,まず白色レグホーン種について昭和16年から何代もつづけて兄弟(姉妹)同士の交配を行ってきた。完全に純化させるには約17世代もかかるといわれているが,一応16年来の交配で,今までにその純系度が約50%程度にまでなった白レグを7系統ほど育成している。
 こうした純系種は長く世代をくり返せばくり返すほど純粋にはなるが,近親交配だからどうしても体力が弱く,すぐれた因子をもっていてもそれが子の代に現われ難くなる。それでは実用には向かない。

実用には一代雑種

 そこで応用するのが雑種強勢の原則である。つまり,ちがった系統をかけ合わしてできた一代雑種(F1)は親よりも優性で,親の遺伝因子を強く現わすという性質を利用する。ただしこの場合,全く別の品種同士をかけ合わしては従来の雑種と変らなくなるから白レグなら白レグの純系種だけをかけ合わす。例えば白レグの純系種のうちでA群に属するものとB群に属するものとをかけ合わせる。実際にはやたらにかけ合わしても一種の“相性”があってよくかからぬから,A・B・C・D……と各群を互にいろいろとかけ合わせてみてそのうちから“相性”のあったものを選び出すようにする。

純系の交配種の特徴

 こうしてつくったF1は大西技官の試験によると,まずヒナから卵を産み始めるまでの期間が短くなり,初産期が早くなる。例えばA群同士をかけ合わしてできたものはその初産期が平均204.3日,同じくB群同士のものは219.5日,これに対してA群のオスとB群のメスとをかけ合わしたものは108.6日,またA群のメスとB群のオスとの交配種では163.3日となっている。
 次に年間産卵数を示せば次のとおりである。

@A×Aの場合
 172個,176個,148個,112個,205個,188個………
AC×Cの場合
 179個,203個,154個,151個,133個,118個………
BAの雄×Cの雌(F1)
 263個,261個,305個,233個,170個
CCの雄×Aの雌(F1)
 300個,243個,363個,291個,194個

 以上の成績からみるとF1が総じて好成績をあげている。しかもF1は従来一代限りで次の代(二代雑種,F2)には分離して使えなくなるといわれていたが,たとえば初産期がA×Aの235.3日に対してA×Bの二代目が170.8日で,まだF2になっても使えることがわかった。
 以上の結果からみて,まず多産鶏の遺伝質を固定させるために毎年近親交配をつづけて純系種をつくり出す一方,実用に供するためには別にその純系種同士をかけ合わして一代雑種をつくればよいことになる。
 アメリカなどでもまだ近親度が50%程度のものでしかできていないが,一部ではすでにそれを実用に向けているといわれる。
 以上多産鶏の固定の大要について記したが,すべてはまず純粋種をつくり出してからのことで,未だ年数のかかる仕事であるが,今できている50%程度の純粋種でも使えぬことはない。今後さらに各種の遺伝質を研究してゆかねばならぬが,結局純粋間の交配種を利用するようにすればよいわけである。