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巻頭言

有畜農家創設事業について

惣津律士

 昨年各方面から多大の期待を以ってスタートした無畜農家を解消する所謂有畜農家創設事業は,ここに第2年目を迎え,既に第1,4半期の分は実施を終り第2,4半期に突入している。
 昨年度は施行当初のこととて,事務手続が極めて煩雑をきわめ,中には折角の計画を中止する農協さえ出て来た状況である。
 この点については試練を経た農協は慣れて来ては居るものの,政府も農林中金も事務の簡素化について一段と研賛協力をして戴き度いものである。
 本県では27年度に於て乳牛370頭,和牛1,256頭,馬10頭,緬羊670頭が管外及び管内から導入されたが,本年度,国に於て定められた本県の枠は乳牛400頭,和牛1,200頭,緬羊600頭となっている。酪農の振興を特に企図している本県としては乳牛400頭では要望の半ばにも足らない現状であり,今後枠の増加に懸命の努力を必要とする事は申すまでもない。
 和牛の本施設に伴う県外への導出については昨年度は3,000頭以上に昇り,本年もそれ以上の頭数が他府県から要望されている事は畜産振興上誠にうれしい事である。関係者としては優良なる和牛の導出に充分のサービスを行って,御期待に添い得るように努力し,好評を博して戴き度い。
 融資単価は昨年度に比して乳牛,和牛に於ては多少高くなって居り,乳牛52,500円,和牛26,600円であるが,緬羊は一寸下がって5,250円となっている。
 もともと本事業は法律化せられるべくして未だ実現を見ていないものである。随って実施面に相当の困難を伴う訳ではあるが,併し乍ら資金難にあえぐ農家に取っては福音であり,1日も早く政治力の強化に依って法律化せられん事を切望して止まない。
 更に我々関係者として努力したい事は家畜導入後の維持の面である。幸に昨年導入されたものには差したる故障は現在までの処,見受けられないが,今後も引続き,この面の指導に懸命の努力を傾倒しなければならない事は当然である。