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尿素を濃厚飼料に混合して反芻家畜に給与した成績は,すでに発表されている処である。
当種畜場に於て尿素を混合して埋草を造った場合サイロ中の尿素が埋草の成分に如何に影響をあたえるか又かかる埋草を家畜に給与することにより,その育成上及び健康上に及ぼす影響,更に家畜の嗜好の点につきしらべる為に,この試験をした。尚尿素に糖蜜を混合したのは糖を入れることにより尿素の効果が如何に高まるかを見る為めである。
尿素埋草中の成分に及ぼす影響については目下京都大学農学部畜産教室に於いて分析研究中にして,ここに発表するのは埋草給与が和牛の育成及び健康に及ぼす影響についての中間報告にすぎない。
一.無添加区 材料として 山野草 520×水5貫 7月27日詰込
二.尿素区 〃 〃 529×尿素1貫 水15貫 7月26日詰込
三.糖蜜尿素区 〃 〃 500×尿素1貫 糖蜜10貫 水10貫 7月25日詰込
無添加区は普通の詰込を行い尿素区にありては0.1%尿素液を作りて1尺詰込む度に適宜撒布し,糖蜜尿素区にありては,糖蜜1%液と尿素0.1%液を混じ之れも1尺詰込む度に撒布した,無添加区に水5貫を加えたのは材料の山野草が若干乾燥をしていた為めである。
詰込に際しては最後にむしろ,藁を敷き其の上に土を1尺程積みて空気の流通を防止し完全に醗酵する様注意した。
(一)無添加区 色臭共に良好で試食も良結果であった。
(二)尿素区 色が稍褐色を呈し上層部に若干の黴臭ありしもサイロの地下2尺以下の部分より黴臭が無くなった。
(三)糖蜜尿素区 色は暗褐色を呈したが臭が良好であった。
サイロの周囲の接着部は若干の黴を生じていた。又,埋草に水分が稍多くあった事は3区共通点であった。之れは詰込みに際して水を加えた原因によるものと思われる。
一.試験期間 昭和28年1月10日−同年4月末日迄
二.供試牛 和牛牡犢6頭で生後8ヶ月乃至10ヶ月のもので美方郡産4頭,府内産2頭,体型,資質,大きさ等とか類似したもので3区として1区各2頭宛とした。
三.調査事項 調査事項として 一.飼料給与料 二.飼料摂取量 三.体尺体重測定 四.健康状態等を観察し,体尺測定にありては体高,十字部高,体長,胸幅,胸深,腰角巾,●巾,座骨巾,尻長,胸囲,管囲の11項目を1ヶ月目に測定し体重にありては10日目に計り調査を行う。健康状態の調査としては喰込み状態,排便状態等で調査をした。
四.試験区及び給与飼料
試験区は3区とした。
第1区(対照区) 1号牛 熊波号 2号牛 福栄号
第2区(尿素区) 3号牛 誠 号 4号牛 好菊号
第3区(糖蜜尿素区) 5号牛 照福号 6号牛 富美号
給与飼料は麩,米糠(脱脂)大麦,大豆粕(豊年)としそれぞれの給与割合は第1表の如くである。
(第1表)飼料給与割合
区 別 | 麩 | 脱脂米糠 | 大 麦 | 大豆粕 | DCP | TDN | 備 考 | |
% | % | |||||||
1区 | 35 | 25 | 25 | 15 | 1,581 | 70,132 | 栄養率3.43% | |
2区 | 40 | 25 | 25 | 10 | 13,837 | 68,227 | 〃3.99% | |
3区 | 45 | 25 | 20 | 10 | 13,967 | 67,470 | 〃3.88% |
第1表は重量比であるが2区,3区を低蛋白にしたのは尿素の結果を見る為めである。
(第2表)各区の埋草給与量
区 別 | 切 藁 | 無添加普通埋草 | 尿 素 埋 草 | 糖密尿素埋草 |
1区 | 1貫 | 1貫 | ||
2区 | 2貫 | |||
3区 | 3貫 |
(第3表)飼料給与量
品目 | 麩 | 米 糠 (脱脂) |
大 麦 | 豆 粕 | 食 塩 | コロイド ボ カ イ |
塩 化 コバルト |
|
区別 | ||||||||
一 区 | 1号 | 878g 1.3升 |
627g 1.0升 |
627g 0.3升 |
376g 0.6升 |
50g | 20g | 1mr |
2号 | 714g 1.1升 |
510g 0.8升 |
510g 0.3升 |
306g 0.5升 |
50〃 | 20〃 | 1 | |
二 区 | 3号 | 988g 1.5升 |
618g 1.0升 |
618g 0.4升 |
247g 0.4升 |
50〃 | 20〃 | 1 |
4号 | 931g 1.5 |
580g 0.9 |
580g 0.4 |
232g 0.4 |
50〃 | 20〃 | 1 | |
三 区 | 5号 | 1,508g 1.5 |
588g 1 |
470g 0.3 |
235g 0.4 |
50〃 | 20〃 | 1 |
6号 | 918g 1.4 |
510g 0.9 |
408g 0.3 |
204g 0.3 |
50〃 | 20〃 | 1 |
第2表,第3表の割合により1月10日から試験を開始した。
五.給与方法
配合飼料の給与は1ヶ月目毎に供試牛の平均体重を求め其れに給与率を乗じて,2月よりは別表の給与量に更に飼料を増量し,3月,4月と更に増量する,給与回数は1日2回となし朝は6時−7時,夕飼いは4時−5時とし,かたねり状態で与える。残食量は食後1時間後に調査した。
六.管理
飼養管理は常法通り行い午前8時から10時迄に手入を行い10時過に給水(微温湯)を行う。給水量は供試牛の欲する量を与える,但し1日1回のみである。運動としては木柵に繋いで置く程度である。其の他の管理としては,1月19日に全頭の削蹄を行い蹄を揃えた程度である。1月26日に1号,3号,5号牛に鼻環を入れ2月14日は2号,4号,6号に鼻環を入れた。2月25日に全頭の削蹄を行い肢勢,蹄型を整えた。其の他厩肥出しは適時行い敷藁は夕飼後1貫を入れた,今後の管理予定は運動場へ自由運動をなし矯角,削蹄を適時行う予定である。
1月10日から2月20日迄の成績である為めに不明確であるが中間報告の材料を集めて見ると体重の変化が先ず著明に現われた。
(1月9日10日11日3日間の平均体重を供試牛の基本体重とす)
(第4表)
測定月日 | 1/9 | 1/10 | 1/11 | 1/19 | 1/20 | 1/21 | 2/1 | 2/10 | 2/20 | 3/1 | 3/10 | 増体量 | 増体率 | |
区分 | ||||||||||||||
3日間平均体重 s |
||||||||||||||
一 区 | 1号熊波 | 216 | 216 | 218 | 220 | 225 | 226 | 232 | 238 | 245 | 242 | 254 | 37.4 | 17.2 |
(216.5s) | ||||||||||||||
2号福栄 | 184 | 189 | 190 | 190 | 192 | 193 | 200 | 205 | 211 | 215 | 220 | 32.4 | 17.2 | |
(187.6s) | ||||||||||||||
二 区 | 3 号 誠 | 211 | 217 | 217 | 215 | 212 | 217 | 219 | 231 | 240 | 240 | 248 | 33 | 15.3 |
(215.0s) | ||||||||||||||
4号好菊 | 200 | 196 | 200 | 205 | 210 | 208 | 220 | 227 | 235 | 241 | 245 | 46.4 | 23.3 | |
(198.6s) | ||||||||||||||
三 区 | 5号照福 | 211 | 203 | 215 | 219 | 223 | 222 | 230 | 235 | 240 | 240 | 248 | 38.4 | 18.3 |
(209.6s) | ||||||||||||||
6号富美 | 184 | 188 | 185 | 183 | 187 | 190 | 198 | 206 | 215 | 213 | 228 | 43.4 | 23.4 | |
(184.6s) |
第4表によると増体を示しているが途中で減量したものは喰込み悪く残量多い場合とか軟便であった等の理由が上げられる。但し,供試牛の健康状態は普通であったが栄養状態に於いても可なり良効である。
各区毎に試験開始時の平均体重を求め更に同様に測定日の平均を求めて其の変化を調査した。
(第5表)( )の数字は3日間平均体重
月日 | 1/9 | 1/10 | 1/11 | 1/19 | 1/20 | 1/21 | 2/1 | 2/10 | 2/20 | 3/1 | 3/10 | 増体量 | 増体率 |
区分 | |||||||||||||
1 区 | (202.3s) | ||||||||||||
200 | 202.5 | 204 | 205 | 208.5 | 209.5 | 216 | 221.5 | 228 | 228.5 | 237 | 34.8 | 17.2 | |
2 区 | (206.8s) | ||||||||||||
205.5 | 206.5 | 208.5 | 210 | 211 | 212.5 | 219.5 | 229 | 237.5 | 240.5 | 246.5 | 39.7 | 19.1 | |
3 区 | (199.3s) | ||||||||||||
197.5 | 195.5 | 200 | 203.5 | 205 | 206 | 214 | 220.5 | 227.5 | 226.5 | 238 | 38.7 | 19.3 |
第5表の結果を見ると第1区対照区の34.8s増加に比らべて2区尿素区が4.8s多く,3区糖蜜尿素が1区にくらべて3.9s多い結果となった。確実な数字は4月末にならなければ解らず,増体率,指数も2月現在では若干出るが確実とは言い難い。増体量を比較した結果を言えば糖蜜尿素を混じた埋草は非常に良結果と言える。之れは粗蛋白及び炭水化物を粗飼料中に多量に含んでいる為めの様に思われる。
第6表として現わして見たが月1回の測定の為め結果としては不明解であるが後日発表の予定である。
(第6表)
区 分 | 月 日 | 体高 | 十字高 | 体長 | 胸巾 | 胸深 | 腰角巾 | 肋巾 | 坐巾 | 尻長 | 胸囲 | 管囲 | |
一 区 | 1号 | 1月10日 | 112 | 116.3 | 118.7 | 33.5 | 50 | 29.7 | 35.5 | 19.5 | 40.5 | 134.5 | 13.5 |
2月1日 | 114.8 | 117 | 123.5 | 34.5 | 51.5 | 31.2 | 36.4 | 19.5 | 40.8 | 136.2 | 13.8 | ||
2号 | 1月10日 | 107.3 | 108.2 | 116 | 30.7 | 50.5 | 31.5 | 34 | 18 | 39.3 | 130 | 13.4 | |
2月1日 | 109.6 | 108.5 | 118 | 30.8 | 50.8 | 32.4 | 34.5 | 18.5 | 39.3 | 131 | 13.8 | ||
二 区 | 3号 | 1月10日 | 112 | 112.7 | 120.8 | 32.8 | 51.5 | 31 | 35.5 | 18.5 | 40.4 | 136 | 13.6 |
2月1日 | 112.5 | 113.4 | 123.5 | 34 | 52.5 | 31.8 | 35.5 | 18.8 | 41.7 | 137 | 13.7 | ||
4号 | 1月10日 | 105.6 | 107.5 | 110.6 | 29.5 | 48.5 | 29.5 | 34.2 | 19 | 37.5 | 126 | 13.3 | |
2月1日 | 107.8 | 109.5 | 112 | 32.5 | 51 | 30.8 | 34.7 | 19.4 | 39.4 | 133 | 13.5 | ||
三 区 | 5号 | 1月10日 | 110.2 | 110.5 | 116.8 | 32.5 | 51.8 | 32.5 | 34.9 | 19.7 | 39.5 | 133 | 13.7 |
2月1日 | 111.2 | 111.5 | 117.4 | 32.8 | 52.5 | 33.5 | 35.4 | 19.7 | 40.1 | 133.5 | 14 | ||
6号 | 1月10日 | 108.7 | 111.5 | 120.2 | 29.2 | 49 | 31.5 | 34.9 | 19 | 40.8 | 130.5 | 14 | |
2月1日 | 110.2 | 112 | 121.4 | 30 | 50 | 32.7 | 35.2 | 19.4 | 41.3 | 130.8 | 14 |
以上中間発表として1月10日−3月10日迄の研究結果を極めて簡単にまとめて見たが確実な成績は4月末日にならんと解らないが恐らく良成績を上げるものと思われ来年度も更に研究を続け牧野改良によって得られた山野草で埋草を作り其の成績を次の機会に尿素試験結果と共に報告したい心算りでいる。
(3月18日開催の京都府畜産技術者研究発表会において発表された資料である。)