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鶏病便覧

ニューカッスル病(法定伝染病)

原因 ニューカッスル病ビールスによって起る。糞,口腔粘液(飲水器)の接触,空気感染,病鶏の輸入冷凍肉による感染。
 種卵,初生ひな,鼠,野鳥の媒介。
症状 呼吸困難が殆んどの場合に現れる,奇声を発する。
 呼吸困難が去ると神経症状(頭を前後左右に振り,捻り,脚翼の麻痺痙攣)を呈する。高熱,緑色下痢を1週間位続ける。
 産卵は低下し30−60日で多くは恢復する。
 斃死率は成鶏で5−10%,ひな50−100%である。
 伝染性下痢症,伝染性喉頭気管炎と区別することが必要である。
予防
@鶏,ひな,種卵,飼料袋,人等で感染のおそれあるものは,一切近付けないこと。野鳥,鼠の駆除を行う。
A鶏舎の消毒を厳重に行い鶏舎入口には踏込消毒箱(履物)を設ける。
B鶏には10,000倍過マンガン酸カリ溶液を飲水代用とす,連用1週間以内
C予防接種
 日本生物科学研究所ニューカッスル病予防液
 1羽当
 (60日以上成鶏 1.0t)
 (60日未満   0.5t)筋肉注射
 (20日未満   0.2t)
免疫性は注射後3−10日で発し,6ヶ月間有効である。

ひな白痢(法定伝染病)

原因 ひな白痢菌によって起る。
伝染 保菌親鶏から卵を通じて雛に伝染し,又排糞,交尾によって成鶏間に伝染する。
ひなの症状 孵化後4−5日頃までに発病し,白色の粘性下痢便が肛門附近に膠着し努責して苦痛を訴え食欲なく1ヶ所に集り,佇立,嗜眠する。死亡率は高く50−80%である。
成鶏の症状 外観ではわからない場合が多い,解剖すると雌は卵黄が不正形黒血様であり,雄は睾丸が腫大し断面は灰白色の壊死斑点があることが多い。
淘汰 雛及び成鶏とも本病に罹ったものは現在のところ治療法がないから淘汰する。
 診断は急速凝集反応による。
消毒 鶏舎,管理器具(給餌器,飲水器)育雛器,孵卵器を消毒する。
予防 ひなを買う場合には種鶏検査に合格した種鶏の種卵より出たものを買うこと。

鶏痘(伝染病)

原因 鶏痘ビールスによって起り,夏を越したことのない若鶏及び雛に多発する。
伝染 病鶏の接触と蚊によって伝染する。
症状 冠,肉髯,耳朶その他裸出皮膚に,大きさ種々の白色疣状丘疹を生じ,日を経るに従い黒色痂皮となる。
 高熱を発して,食欲減退し衰弱甚だしくヂフテリヤ等の余病を併発し易い。
予防 発症してから治療は仲々困難であるから予防に重点をおかねばならない。
@防蚊処置をすること
A鶏痘予防液使用法
 5月下旬から6月上旬頃の蚊の出盛り前に,鶏の腿部外側の羽毛密生部の羽毛を12−15本抜去し,歯ブラシ等で血の出ない程度に予防液を擦入する。
 使用量は1羽当0.1t−0.2t。接種部位に痂皮が出来たら3週間位で免疫性を生じ,約3ヶ月間持続する。
 予防液は暑い季節には早く失効するから到着後は直ちに使用すること。健康鶏にだけ接種する。感染の疑いあるものには危険である。
処置 病気が発生したときは
@病鶏の隔離及鶏舎の消毒を行う。
A衰弱防止のため蛔虫駆除を行い,粒餌の給与量を増加する。
B発痘局所には痂皮を除いてクレオリン軟膏(2%),ペニシリン軟膏,モナフラシン軟膏,沃度チンキ過クロール鉄液等を塗布する。

伝染性喉頭気管炎(流感)

原因 伝染性喉頭気管炎ビールス
症状 呼吸音を発し,呼吸困難,食欲減退し,経過は比較的短い。家禽ヂフテリヤと誤診し易い。
剖見 鼻孔,気管に濃厚繊維血様塊(又は点状出血)を有す。
予防 予防法なし
治療 有効な治療法はない。
@気道にある滲出物の除去
A鶏舎の室温を温める
B屍体の消却と鶏舎の消毒

複合家禽白血病(伝染病)

原因 白血病ビールスによって起る。
症状 脚及び翼の麻痺,灰白眼,瞳孔不正,冠貧血し虚脱死す。
剖見 肝,脾,腎臓は褪色腫脹して,粟粒−大豆大の白斑を生じ断面は豚脂状を呈す。
処置 病鶏の淘汰と鶏舎の消毒を行うより他に方法はない。

伝染性下痢症(原因不明の下痢症)

原因 伝染性下痢症ビールスによって起るとされている。
症状 突然冠が暗紫色となり,元気沈衰,食欲減退し,多くは食滞を伴う。
 水様の下痢便を排し,高熱のため飲水旺んとなる。
剖見 卵巣卵黄は不正形,血様卵黄となり,腸カータル,腎臓溷濁腫脹を伴う体内各部の脂肪に点状出血がある。
予防 予防措置はニューカッスル病と同様であるが,予防液はまだ出来ていない。
治療 治療法は完全なものなく,対症的で次のことが行われている。
@食滞せるものは内容を取り出すこと(食滞の項参照)
A飲水を充分に給与し,鶏舎内の換気に注意する。
B糖蜜を2%飲水又は飼料に添加する。
C飲水中に(塩化カリ0.5%,サルファ剤0.2−0.5%)を投与する。
D抗生物質飼料の給与は奏功することもある。
 1羽当オーレオマイシン製剤30g,1日2回に投与。
E健胃整腸剤の投与(蕃椒,ゲンチヤナ根末,げんのしょうこ,重曹等)

家禽ヂフテリヤ(伝染病)

原因 最初は家禽ヂフテリヤ菌によって起るが,症状の進むにつれて各菌の細菌が混合感染する場合が多い。
 感染方法は病鶏の接触,管理器具,鶏舎内の敷藁等による。
 本病は侵される部位によってループ,メズレ,ノドケ,ハナケ等の俗称がある。
症状 初期 眼,鼻孔,口腔に粘性滲出物を有する,鼻を侵されたものは水性鼻汁を出し時々クシャミをする。眼を侵されたものは,泡を含む涙を出す。喉頭気管に感染したものは呼吸困難及び呼吸音を有する。後期 鼻孔,眼窩,口腔,咽喉頭,気管,食道,肛門等に淡黄色の粘性膿又は偽膜を生じ悪臭甚だしく肩及び肢窩を鼻汁で汚す。稀にはソ嚢肺及び腸に偽膜を生ず。
予防
@鶏舎内の清潔,乾燥,換気を図る。
A他所から鶏を入れる場合若干若しくは前年発生した場所では,家禽ヂフテリヤ予防液の注射を行う。
B家禽ヂフテリヤ予防液使用法
 ひな 0.5−1.0t)皮下注射
 成鶏 2−3t)
  発病を見ない場合にのみ予防的に用う,発病鶏群に対しては危険である
  免疫期間 1回注射2−4ヶ月
       2回注射5−6ヶ月
C家禽ヂフテリヤ血清使用法
 ひな 2−3t)皮下注射
 成鶏 5−8t)
  発病を見た鶏群中の健康鶏の予防用として使用する。
  免疫期間1ヶ月
治療 発病鶏は隔離する。
@家禽ヂフテリヤ血清使用法
 ひな 4−6t)皮下注射
 成鶏 10−15t)
  1週間おきに2回注射すると一層有効
A薬物療法
(イ)サルファチアゾールを飼料中0.5%加える。
(ロ)ペニシリン注射 成鶏1日1回1万単位(又はストレプトマイシン注射 初期のものに有効)
(ハ)過マンガン酸加里1万倍水溶液飲用,連用1週間以内
(ニ)アクリフラビン0.5%を加えた70% グリセリン液
 眼に対して洗滌用とす(偽膜ある場合は除去して使用す)
(ホ)ペニシリン軟膏,モナフラシン軟膏塗布
注意 全身療法には必らず局所療法を併用すること。

コクシヂウム症(原虫伝染病)

原因 アイメリヤ原虫(コクシヂウム原虫)によって起る。
 原虫が糞,飼料,飲水,土壌の中にあって伝染する。原虫を運搬するものは履物,飼料袋,蝿その他の昆虫類である。
症状 血色蒼白となり食欲減退し,羽毛逆立翼を垂下し,集合佇立す。急性のものは血便をし,慢性のものは肉様便をする。
 伝染力強く数日で群中に波及する。
剖見 腸が侵され,腸壁肥厚し出血を認める内容は血液や粘液が多く盲腸を侵されたものは腫大し内容は血液又は白色豆腐粕状を呈する。
予防
@鶏舎,育雛器の消毒,運動場表土,敷藁の交換。
A糞の清掃金網床の使用,給餌,給水器に糞の入らないように工夫する。
B薬物予防
 動物用モナフラシン 飼料に対し1/50−1/60 3日投薬2日休止 3日投薬を繰返す。若干食欲不振の副作用がある。
 ナイトロフエナイド 飼料に対し0.025%(2.5/10,000)連用
治療 薬物治療サルファメラジン 飼料に対し0.2%(2/1,000)3日間投薬,飼料中に混与する。
動物用ロメヂンソーダ(サルファメラヂン製剤)飲水に対し2%3日間常飲せしめる。
ナイトロフェナイド 飼料に対し0.03−0.05%(3−5/10,000)飼料中に混与,連用1週間以内
コクシノック 慢性のものに効あり。