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7月の飼養管理メモ

鶏のわくもを駆除しましょう。

 鶏のわくもは習性として昼間は鶏舎の柱や破目板,トマリ木の隙間などにかくれておりますが,夜になりますと鶏の体に寄生して血液を吸います。このわくもの被害は大きく,産卵率も下がって来ますから十分駆除して下さい。わくもは元来白色の粉糠の様な外寄生虫ですが血を吸いますと赤色になります。この虫も駆除するために柱や破目板,トマリ木,糞受台などに軽油クレオソート混合物かDDTやBHCや油剤を撒布したりニコチンを塗ったりして駆除しましょう。

鶏の常備薬を備えましょう

 毎日暑い日が続きますが暑さのため疲労して来る鶏も出ることと思いますが夏の病気を未然に防ぐために常備薬を備えて万全の準備を致しましょう。
 常備薬は大体健胃整腸剤と強壮剤の2通りに分けることができますが,その種類や施与などは次のようなものがあります。

健胃整腸剤
 ゲンチヤナ根末     1羽 0.5g
 当薬末(センブリ)    〃  0.5g
 ゲンノショウコ(煎汁) 100羽  20匁
 タンニン酸       1羽 0.5g
 苦味チンキ          3%液
強壮剤
 とうがらし
 蕃椒チンキ          2%液
 にんにく         10羽 5匁

鶏痘の予防はおわりましたか

 鶏痘(鶏のホウソウ)の予防接種は終りましたか,
 鶏痘は産卵に影響する所が大きいですから是非予防接種も励行しましょう。
 予防液は1羽当0.1tから0.2tでたります。効力は大体3ヵ月ですが最も適確な予防方法です。

鶏の蛔虫を駆除しましょう。

 蛔虫の寄生によって中雛の飼育が失敗することがあります。長年使用した床面や運動場は汚染している場合が多いですから,まず鶏舎や運動場の消毒を行い又は運動場の土を徹底的に取り換えてやりましょう。中雛時代は40日,90日,初産前後と3回位駆虫するのが理想的です。なお鶏糞は十分堆積醗酵させたり又は腐熟させてから使用するようにつとめましょう。

役牛馬の飼養管理

 田植も終って農家の皆様はさぞかし御疲れのことと思います。田植時期は家畜の管理には特別細心の注意を持って当りますが,7月に入りますと開放された気持ちと気温の上昇で心にゆるみが来ますので,梅雨明けには割合家畜の事故が多くなりますから飼養管理には特に気をつけて頂きたいと思います。使役後の家畜の健康を1日でも早く回復するように飼料の与え方を工夫しましょう。

洪水後の草

 大雨のため河川は増水し田畑は水びたしになった所も多いと思いますが,どろ水につかったこれらの場所の草は家畜に与えないようにしましょう。もし与えますと黴菌のために家畜が腹痛を起したり,下痢をしたり,時には伝染病にかかったりしますから特に注意して頂きたいと思います。

蚊を防ぎましょう。

 蚊の発生が多くなりました。蚊を防ぐことは伝染病や動物の夏の弱りを防ぐことになります。特に乳牛は蚊を防ぎますと乳の出る量もうんと多くなります。金網を張ったり,D・D・Tを撒いた代金より乳代の方が多く動物も丈夫で結局利益になった例は沢山あります。大切な家畜を蚊の害から守りましょう。

二等乳を無くしましょう。

 これから気温が上がりますと牛乳が腐り易くなります。牛乳を入れる器具や濾過する布等はよく消毒しておきましょう。
 搾った乳は必ず濾過して,早く,冷やして下さい。保存する場合は摂氏15度以下がよろしい。搾りたての温かい乳と冷めたい乳を一緒にすることはよくありませんから混ぜる場合は必ず冷やしてからに致しましょう。

牛の交換や売買に気をつけましょう

 田植上りにはよく牛の交換や,売買が行われますが,牛の時価や後牛のことをよく考えたり研究して損をしないように御注意願います。よく他人まかせにする人がありますが,大切な自分の財産の処分でありますから,自分で研究して自分で足を運んで有利になる様にいたしましょう。

日射病に気をつけましょう

 気温が上って来ますと,家畜も疲労して来ますが,炎天下に長いあいだ出して置いたり,使役したりしますと日射病にかかります。特に馬や,豚等はこの病気にかかり易いものでありますから気をつけましょう。日蔭をしたり,水浴場を作ったり涼しくしてやり,使役の場合も連続でなしで度々休ませてやり,水を充分に与え,涼しくして休ませるように致しましょう。

乾草を作りましょう

 梅雨が上りましたら今年は早目に乾草を作りましょう。冬季間を藁と米糠ばかりで飼う様な考えはこれからの畜産家には是非止めて頂きたいと思います。草の軟かい内に,太陽の光線の強い間に,冬季間に必要な乾草を作りましょう。荳科植物は葉が落ち易くなります,葉が落ちますと栄養価値が半減以下になりますので注意して下さい。

熱射病を防ぎましょう

 畜舎の中に厩肥を沢山溜めて置きますと醗酵熱で蒸し暑くなります,特に狭い畜舎で通風の悪い所ではよく熱射病が発生しますから御注意下さい。若し発生しましたら涼しい場所に移し,頭部や胸部に冷水をかけてやってから獣医師を呼んで早く手当を致しましょう。

乳牛舎を涼しくしましょう

 乳牛は夏に一番弱ります。寒さに対しては相当強いものでありますが,暑さに対してはすぐ弱ります。従って食欲も落ちますし,乳の量も減って来ます。これを防ぐ為めに日蔭を作り,痛風をよくして牛舎を少しでも涼しくしてやって下さい。