ホーム岡山畜産便り > 復刻版 岡山畜産便り昭和28年8月号 > めん羊の腰麻痺

めん羊の腰麻痺

 毎年夏になりますと,めん羊や,やぎの飼育者の方は腰麻痺症の心配をしなければなりません。しかしこの心配も予防処置をこうずることによってなくすることができます。
 腰麻痺症による被害を最少限にとどめるには,まずこの病気の原因や症状を知っておいて予防につとめることです。
 腰麻痺は牛の腹腔内に寄生するセタリヤの一種セタリヤジキタータの仔虫が中間宿主のハマダラカやオオクロヤブカなどの蚊の媒介によってうつされ,その仔虫がめん羊ややぎの脳や脊髄に入って起る神経症状であります。
 この病気は多くは盛夏から初秋の頃に突発的に歩様がチドリ足となり,又は後肢の運動ができなくなって,横臥して苦しんだり,四肢をふるわせます。そして最初は高熱を示しますが,後には平熱に復するのが普通です。眼は鋭くなって不安の状を示し,食欲は重症の場合の外,著しい変化はありません。急性に来た場合は脳や脊髄に異状をおこし急にたおれますが,慢性のものは長い間わずらって死んだりします。治ったものでも多少の運動異状をおこしたり,頭を傾けたりするものもあります。
 以上のような症状を起しますから,不幸にして,この病気にかかった場合は速かに最寄りの家畜保健衛生所や農業改良普及所へ相談して指示を受け早めに獣医師の治療をうけて下さい。個人療法はむつかしいですから特に気をつけて頂きたいと思います。
 次にこの病気の予防法でありますが,まず第一に病原を媒介する蚊を防ぐことであります。畜舎や運動場等は採光や風通し,排水などをとくによくし,厩肥は夏中度々取りかえて乾燥させることに注意しましょう。又狭い厩舎に沢山の動物を入れないようにして,保健に留意して下さい。DDTの油剤などの防蚊剤を天井や壁に噴霧することなども大変有効であります。
 なお腰麻痺の発生を未然に防ぐためアンチモン剤などの予防注射が行われていますが,特に副作用を起させないように注意して飼養管理につとめて頂きたいと思います。最近予防治療薬として或る種のクエン酸塩を主成分とした薬品(スパトニン)がこれまでのアンチモン剤やヒソ剤より使い方がかんたんで相当の効果があると言われていますが値段は高値であります。この薬品は飲ませるだけでよく,しかもいくらやっても中毒しないと報告されています。W