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豚飼いの秘訣?

覆面子

 覆面子はよく問題を起すので書くとなるとよほど考えなくてはならないという気持がおきてとても遠慮する。先日も新見町でKさんが「何んでもよいから是非書けよ」といわれ,それではと書く気になったのであるが余り肩のこらぬ処で豚飼いの秘訣?という途方もない題を撰んだものです。
 御承知の通り豚位値段の上り下りの烈しいものはない。昨年の今頃は豚飼い位馬鹿なものはないといわれ出した。それもその筈で一昨年頃仔豚1頭3,000円もしたものが1,000円以下になるというのですからやめてしまうものがあるのも無理はない。今年は又値上りで3,000円位している。私はいつもいっているが価格が高いからといって豚を購うその時ははや値下りを始めているので売る時はうんと下って飼料代にもならぬのです,こんなことではほんとの豚飼い合理的な有畜農業ではありません。
 しかし豚の相場所謂経済に対する動向ということは一通り注意しなくてはなりません。合理的な経営をやり乍ら豚の相場の高低等を注意している時は思わぬ利益もありますし損はしないものです。
 扨豚は例外はありますが8−9−10月が高く暮には最低におちこむものです。何故夏から秋に高く初春の終りに安いかといいますとこれは春仔と秋仔との関係です。豚は種付と生れた後の育てやすい関係から仔豚は春と秋に生れるものが多いものです。生れた仔は8−9カ月で売り頃になるのでその時が春仔ですと暮になり,秋仔ですと農繁期になります。暮は何といっても一様に金に困るし,農繁期には飼料もなくなりその上大変忙がしくなるのでどんどん売ってしまうので安くなる。この反対に8月−9月頃は輸送も困難であるし消費地も品薄となるので高くなるものです。一面卵の値段や魚の出廻り等も大変影響します。
 以上のことから考えて豚を育てる場合には夏から秋口までの間の値の高い時又は農繁期前に出荷出来るようにやれば大体大した損はないということになります。
 どうも大した豚飼いの秘訣になりましたが御参考のために書きながした次第です。