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思い出は懐かし

県民室 黒住 清

 私はいま,県民室の机の上に印刷の香も新しい7月号の「畜産便り」を置いて,懐しい思い出にひたっている。それはかつての職場のふるさとである畜産課のことどもである。昨日も八束村の人が導入家畜のことで尋ねて見えた。今日は又千屋村から尋ねて来られた。何れもかつての勤務場所であった畜産課と特に関係の深い処の人々である。未知の人ではあるが何と言うことなしに,10年の知己に会うたように,ただ無性に懐しい思いがするのである。そして家畜保健衛生所の種牡牛のたくましさや,千屋種畜場の場景などが次々とまぶたの奥に浮んで来る。そして私は思う「畜産の人々は好き人々かな」と,
 各地にある家畜保健衛生所や津山の畜産農場,また岡山の種畜場,そして畜産課のことども懐しき思い出の糸はほぐれて尽きぬ。人格あふれる惣津課長さんのもと,和やかな内にきりりと引締った協力一致の鉄ぺきの陣,自他ともに許した全国に誇る和牛王国の構えは正に微塵のすきもない。和牛然り,そして又乳牛も,今やその導入と改良増殖は漸く軌道にのり,酪農振興は県政の重要施策として推進されつつある。作北の地が乳の流れる酪農地帯としてクローズアップされる日の早からんことを願うや切である。
 畜産課を離れて1カ年,たとえ半かじりにもせよ,岡山県畜産の横顔は未だ忘れていないつもりの私である。
 家畜保健衛生所の建設時代の思い出,牧野改良事業や,有畜農家創設事業の計画の思い出,など次から次えと,千屋から来た人が帰った後を,自分は暫しうっとりとして懐しい思い出にひたりつつ,岡山県畜産人の健康を祈って筆をおく。