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めん羊の種付

適期は9月下旬−11月下旬

 めん羊の種付時期は地方によって多少の相違はありますが,大体9月下旬から11月下旬までが種付の適期であります。
 めん羊の在胎日数は平均150日でありますのでこの時期に種付をしますと翌年の2月から4月頃に分娩することになりますので仔めん羊は青草が芽を出す時期に生まれますのでその育成上から言っても又母めん羊の栄養回復のためにも好都合でありますので必ずこの時期に種付をするように心掛けて下さい。

種雄めん羊の管理

 種雄めん羊は種付期間中は相当の精力を消耗しますからそのためには年中適当な栄養を保たせることが必要で,平素無頓着にしておいて秋の種付時期になってあわてても間に合いませんので種雄めん羊は出来るだけ広い運動場が必要で,飼料も種雌めん羊よりも割増をしてやり,特に夏の終り頃から濃厚飼料を与えて,9月頃までには充分体力を蓄積するように飼育管理をしなければなりません。

種雌めん羊の管理と種付

 種雌めん羊が種付時期に栄養不良であれば発情も来ないし,たとえ妊娠した場合でも流産したり,仔めん羊が生時虚弱で分娩後間もなく或は1ヵ月以内に死亡しやすく,又難産や産前麻痺を起したりしますから特に飼料価値の高い濃厚飼料を幾分増量して栄養を保たせて発情を促すようにしなければなりません。
 めん羊の発情は他の家畜に比べてわかり難い上に,種雌めん羊の局部は平常被毛に覆われて局部が露出していないため平常どんな色や状態であるか注意が行届かないので判定に苦しみます。そこで種付に入る前には必ず局部の周囲の被毛を掃除刈りして局部がよく見えるようにして,その色や状態をよく観察すれば普通の状態と発情の状態が区別がつくようになりますからよく観察して区別のつくようにして下さい。
 発情の徴候としては食欲が稍々減り陰部が充血して少し腫れ粘液を分泌し又不安の状態になったり種雄めん羊を慕うような特有の鳴声をしたりします。
 確実に発情の有無を調べるには種雌めん羊の中に種雄めん羊の試情羊を入れて種雄めん羊に発情雌めん羊を求めさせるのが最も確実であります。
 発情の周期はめん羊の個体によって多少の差異はありますが普通16日から18日の間で又発情の持続時間は大体32時間位でありますから朝発情を発見したらその日の夕方を適期として夕方発見したら翌朝に種付をすればよいのであります。

種付は共同種付所で

 種付成績を良好にするためには必ず共同種付所を利用することが最も望しい方法であります。
 種付めん羊を1ヵ所に集めて共同飼育して朝夕2時間位1回ずつ雌めん羊中に雄めん羊を放して発情している雌めん羊を見出してから種付を行い種付のすんだ雌めん羊には印をつけ種付台帳に記入します。
 一度種付をして受胎した場合はもはや発情は起らないものでありますが中には俗に「中ぶけ」といって稀に発情するものもあります。
 もし第1回で受胎しなかった場合は種付後16日から18日位で再発情するのが普通ですから再発情したときは更に種付を行い完全に発情が止るまで根気よく注意して全部種付けるようにつとめなければなりません。
 種付時期に雌めん羊飼育者へ種雄めん羊を10日位ずつ巡回して種付を実施しているむきもありますがこれは大いに誤った方法でありますから中止して下さい。
 又種雄めん羊と種雌めん羊を同一羊舎で飼育している場合がありますがこれも何時種付が行われたかが判明しないため従って何時分娩するか判りかねますから必ず共同種付所を利用するように願います。
 次に種雄めん羊1頭に対して交配すべき種雌めん羊の頭数はその体質,年令等により差異はありますが1種付期間中30−40頭程度にとどめた方がよく過度の交配は雄めん羊の健康を阻害するから注意して下さい。
 なお1日の交配回数も限度を設けることが種雄めん羊の利用期間を長くすることが出来普通2−3頭にとどめておくべきであります。
 特に明け2才種雄めん羊は過度に陥らないように注意して使用して下さい。

当才種付は止めよう

 種緬羊は普通明2才の秋から8−9才までが経済的繁殖年令とされていますが,近年早春に生れた仔羊で発育の良いものは雌雄共その年の秋から種付を致しますが,これはその羊の将来性を考えたり,生産される仔羊や,親の発育状態などから考えて推奨すべきことではありませんので少々発育は良くてもその年には種付に供用しないようにしましょう。